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パリに巨大インキュベーション施設「Station F」が誕生、ヨーロッパのシリコンバレーとなるか?

パリに世界最大規模のインキュベーション施設Station Fがオープンした。面積1万坪を超える施設には1000社超のスタートアップ企業が参加しており、マイクロソフトFacebookなどの企業もパートナーとして参加している。今、世界規模でスタートアップエコシステムを誕生させる熱い戦いが始まりつつある。実情を紹介する。


著名起業家ザビエル・ニール氏が設立、Station Fとは?

先日、パリに世界最大規模のインキュベーション施設、Station Fがオープンした。記念式典にはエマニュエル・マクロン大統領、パリ市長アンヌ・イダルゴ氏も現れ、注目を集めた。パリ西部の古い鉄道駅を改修して作られたStation Fは34,000平方メートル(約1万300坪)の広さを持つ巨大施設で、すでに1,000社超のスタートアップ企業が入居しているという。

施設は三区分され、第一区には370席のオーディトリアムを備えたテクニカルスキルエリアが、第二区にはスタートアップ企業のワークエリアが、第三区にはレストラン、バー、リテールエリアが、それぞれ設置される。ワークエリアには3000席分のデスクが置かれ、会員企業の関係者が24時間利用出来る。2018年には隣接地に入居者600人規模の高層アパートも建設されるという。

Station F建設プロジェクトは、フランスの著名起業家ザビエル・ニール氏の発案で立上げられた。日本円で約300億円以上もの巨額開発コストもニール氏が負担したという。ニール氏は通信企業イリアド社を起業し、フランスを代表する巨大企業へ成長させ、世界大富豪ランキングにランクインするほどの財を成している。

Station Fへの参加希望企業はStation Fのウェブサイトから申し込み、審査を受ける。月会費制で、参加が認められた企業は利用するデスクの数に応じて会費を支払う。スタンダードなメンバーシップはデスク一つ当り195ユーロ(約23,400円)で、Station Fの全施設が利用出来る他、Station Fの起業家支援プログラムが受けられる。何よりも、世界中から集まってくる他の起業家と直で触れ合えるのが最大の魅力だ。


マイクロソフト、Facebookなどの有力IT企業も参加

Station Fにはスタートアップ企業に加えてベンチャーキャピタルも入居、またマイクロソフトやFacebookなどの有力IT企業もパートナーとして参加している。
マイクロソフトは、マイクロソフトフランスを通じ、AI技術に特化したベンチャー企業とのコラボレーションを行うプログラムを提供している。
Facebookは、データドリブンなスタートアップ企業とのコラボレーションを目指す「スタートアップ・ガレージ」というプログラムを提供している。
マイクロソフト、Facebookのどちらのプログラムも革新性が高く、将来的な成長が見込めそうなスタートアップ企業を早い段階から囲い込むのが目的だ。

なお、Station Fのパートナープログラムには、ヘルプデスクソフトメーカーのZendeskや、ゲームソフト開発大手のUbisoftなども参加している。


技術、知識、資金などをワンセットで提供、壮大なエコシステムの誕生へ

Station Fは、起業家に会社をアクセラレートさせる技術、知識、資金などをワンセットで提供出来るという強みに加え、世界最大規模のスケールで展開されるという最大の強みがある。

Station Fは、「起業家が直面する課題の90%は他の起業家によって解決可能である」としている。1000社以上のスタートアップ企業を一堂に会させることで、巨大なスタートアップのエコシステムの誕生を目指している。様々な能力や技術を持ったスタートアップ企業同士が融合し、様々な課題を解決し、新たな価値を生み出す化学反応のようなものを、設立者のニール氏は思い描いているのだろう。


スタートアップのエコシステム開発競争でパリが優位に立つか?

筆者が知る限り、現在シリコンバレーを筆頭にロンドン、アムステルダム、ベルリン、コペンハーゲン、イスタンブールなどの各都市でスタートアップ企業専門のアクセラレーターが存在し、スタートアップ育成事業を行っている。
いずれも目指すところは、世界中から有望なスタートアップ企業を誘致し、投資して大きなリターンを得る事と、そのサイクルが自律的な成長を始めるという、スタートアップエコシステムを誕生させる事だ。

現時点ではシリコンバレーのアクセラレーターが優位に立っているが、ロンドンも非常な勢いで盛り上がってきている。Station Fは、間違いなくロンドンをライバル視しており、スタートアップ企業の誘致合戦でロンドンと激しくぶつかるはずだ。この二都市の展開には今後も注目すべきだろう。

翻ってわが日本。国内を見渡せど本格的なアクセラレーターは未だ存在せず、ましてやスタートアップエコシステムなど論外だ。優秀な起業家が国境を越えて移動する今日、世界的なスタートアップエコシステム競争に参加できないというデメリットは、想像以上に恐ろしい未来につながるかも知れない。

19世紀後半から20世紀初頭、自由な雰囲気と安い生活費が魅力のパリのモンマルトルへ、ピカソ、モディリアーニ、ゴッホ、ルノアールなどの芸術家がヨーロッパ各地から集まり、やがてパリを芸術の都へと変貌させた。Station Fは、21世紀のフランスを、かつてのモンマルトルの様に、世界中から優秀な起業家を集め、花開かせ、街全体を活性化することが出来るのか。

今、世界中の起業家、投資家、アクセラレーター達が注視している。


<参考・参照元>
As Paris' mega startup campus Station F opens its doors, Silicon Valley has gone all in | VentureBeat | Business | by Chris O'Brien
Inside the construction of Paris' Halle Freyssinet: The landmark campus for 1,000 startups | VentureBeat | Business | by Chris O'Brien
Founders Program – Station F
ついに開業したパリのスタートアップ施設「Station F」──テック界の巨人たちが、そこから見据える欧州の「ディープテック」大競争|WIRED.jp
世界最大のスタートアップ・キャンパス「STATION F」がパリにオープン、マクロン大統領や世界から集まった起業家1,500人が開館を祝う - THE BRIDGE(ザ・ブリッジ)
パリの超巨大インキュベーション施設Station Fに行ってきた――約3000社のスタートアップやVCが入居予定 | TechCrunch Japan
パリに完成した超巨大スタートアップ・キャンパス「STATION F」 - 週刊アスキー
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