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コダックがついに3Dプリンターをリリース 停滞する3Dプリンター市場に必要なものとは

かつてアナログカメラ・フィルムの市場をリードした名門企業コダック。映像のデジタル化の波に乗り遅れ、業績悪化からチャプター11を申請、経営破綻した。そのコダックが3Dプリンターで復活を目指している。
3Dプリンターで復活できるのか、3Dプリンター市場の現状と合わせ、独自の視点から解説する。


コダックが開発した3Dプリンター

2017年11月、コダックが自社3Dプリンターのリリースを発表し、3Dプリンターコミュニティの話題を集めた。

コダックといえば1888年設立のアメリカの名門アナログカメラ・フィルムメーカーだ。フィルムカメラ全盛の時代にはコダックのフィルムは巨大な市場シェアを持ち、日本のフジフィルムとともに世界の市場をほとんど二分していた。

一方で、1980年頃より始まった映像のデジタル化の波に乗り遅れ、1990年代には経営が赤字に転落、慢性的な資金不足に悩まされるようになった。
コダックの経営再建への努力はその後も続いたが、万策尽きて2012年にニューヨーク地裁に連邦破産法第11条を申請、日本でいう民事再生法を申し立てて経営破綻した。
その後は所有特許の売却などを行い、事業を整理し、現在はおもに法人向けインクジェットプリンティングサービスなどの事業を展開している。

3Dプリンター製造事業には数年前から参入し、業界の話題を呼んでいた。
世界の3Dプリンターコミュニティが注目していたコダックの3Dプリンターがいよいよ満を持して登場したのである。


コダック製品のインパクトと特徴は?

さて、そのコダックの3Dプリンターだが、いわゆるFDM(熱溶解積層法)方式の3Dプリンターである。
FDM方式の3Dプリンターとは、プラスチックなどのフィラメントを溶融して造形するタイプの3Dプリンターで、現在、世界でもっとも普及しているタイプである。
アメリカの大手3Dプリンターメーカーのストラタシスが開発し、長らく特許を押さえていたが、2000年代後半に特許が切れたため世界中で爆発的に広まった。
現在店頭などで販売される3Dプリンターの多くがこのタイプである。

FDM方式の3Dプリンターの多くは、造形方法が基本的に同じで、かつ使う素材などにも違いがないので、お互いに差別化がしにくい。
つまり、突出している製品が少なく、圧倒的に他をリードしているという製品も少ない。

コダックの3Dプリンターは、コダック・ブランドで安定した品質をイメージさせる戦略を採っているものと思われるが、価格が2,799ドル(2017年12月14日現在、日本円にして約31万5,000円)とそれなりの価格帯に位置しており、このドメインの消費者が、多くは法人と思われるが、ユーザーから支持されるかは疑問だ。

ところで、デスクトップ3Dプリンター市場の現状だが、一言でいうと「ブームが去った状態」だ。
筆者は2010年からアメリカを中心に3Dプリンター業界の動向を追っているが、現在においては、アメリカにも日本にもかつての活気はない。

調査会社のIDC Japanが2016年度の日本の3Dプリンター市場規模を調査しているが、全体で328億円程度だ。
しかも3Dプリンター本体の売上は118億円しかなく、前年比でマイナス19%となっている。コダックが後発メーカーとして日本市場に参入するに際し、苦戦を強いられる事は間違いない。

一方のアメリカ市場だが、3Dプリンティングコンサルティング企業のウォーラーズ・アソシエーツがまとめた調査によると、アメリカでは2015年に価格5,000ドル以下の3Dプリンターが278,000台販売されたという。
この価格帯ではメーカーボット・インダストリーズのレプリケーターシリーズが強く、コダックの3Dプリンターの強大なライバルとなるだろう。

レプリケーターシリーズは、第五世代製品から独自開発したノズルを搭載し、フィラメントも高機能化させていて、市場リーダーのポジションをさらに強固にしている。
リーダーに対するチャレンジャーとして臨むコダックの3Dプリンターが、どれだけユーザーの支持を集められるのか、予測が難しい。


コダックは3Dプリンターで復活できるか?

上述したように、市場をアメリカに限定した場合、メーカーボット・インダストリーズをリーダーとする市場セグメントにコダックが切り込んでゆく事は簡単ではないだろう。製品を差別化する決定的なものが欠けている上、ユーザーに衝撃を与えるような話題性も乏しいからだ。
一方で、ヨーロッパ市場ではオランダのウルチメーカーやポーランドのゾートラックスが強く、こちらも参入が容易ではない。

今の3Dプリンター市場に必要なのは、従来になかった新たな価値を提供するキラーアプリケーションだ。

私は、現代の3Dプリンターと過去のパソコンの歴史の流れが酷似していると考えているが、現代の3Dプリンターは過去のパソコンに例えると、ワードパーフェクトやロ-タス1-2-3といったキラーアプリケーションが登場する前の状態に近いと思う。
ワードパーフェクトやロ-タス1-2-3といったキラーアプリケーションがパソコンの需要に火を付け、その後のさらなるキラーアプリケーションの開発へとつながっていった。
今の3Dプリンター市場に必要なのは、まさにそのようなキラーアプリケーションなのだ。

3Dプリンターでコダックが復活出来るかについて言うと、今の3Dプリンターだけでは難しいだろう。
人々が驚き、感動するようなキラーアプリケーションのバンドルに成功すれば、話は変わって来るかもしれない。


<参考・参照元>
コダックはなぜ破綻したのか:4つの誤解と正しい教訓 | スコット・アンソニー/HBRブログ|DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー
Kodak launches its first ever 3D printer, the Portrait - 3D Printing Industry
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