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ソニー復活をけん引するデザイン思考とは?「ラストワンインチ」に感動を。

日本の経済成長の象徴であった数多くの日本の大手メーカーがかつての栄光を失っている。
「世界のソニー」といわれたソニーも例外ではないと思われていたが、2017年度の業績は、王者の栄光を取り戻したといえるほどの好業績だ。何がソニー復活に貢献したのだろうか。


王者復活 !? 20年ぶりの好決算の理由を読み解く

ソニーの2017年度の営業利益は7,095億円で、2016年度の4,719億円から+50.3%となり、20年ぶりに過去最高を更新した。
この業績をけん引するのは、PS4を屋台骨とするゲーム&ネットワーク事業だ。さらに映画事業、半導体事業が黒字転換したことも大きい。

2017年5月の経営方針説明会で平井CEOは、中長期の持続的成長に向けて「KANDO@ラストワンインチ」を掲げた。お客様に最も近い「ラストワンインチ」の場所で感動を与えるために、徹底的な機能の差別化だけでなく、デザインや質感にこだわり体験のインターフェースとなる商品を開発するとしている。

もともとソニーは新しい技術と先進的なデザインを融合した商品の開発が強みだったはずだ。「トリニトロンテレビ」「ウォークマン」「ハンディカム」に多くの人が熱狂し、人々の生活をも変えていった。
「KANDO@ラストワンインチ」というスローガンは、あのころのソニーの原点に回帰するというメッセージではないか。
ソニーが届けるべきは技術だけでもデザインだけでもなく、「ほしい」と思わせるほどのユーザー体験を与える商品である。そういった革新的な商品を生み出すことこそが、安定した収益を実現しようとするためのキーファクターだというように読み取れる。

ソニーは新しい商品やサービスを生み出すために「デザイン思考」に注目しているといわれている。
デザイン思考の有識者である佐宗 邦威氏は、ソニー在籍時に新規事業プロジェクト「Sony Seed Acceleration Program(SAP)」の立ち上げに携わった。このプロジェクトでは、ボトムアップで新規事業のアイデアを100以上集め、ユーザー検証して事業化していくという取り組みを行っている。

そもそも最近よく聞く「デザイン思考」とはどんなものだろうか。いろいろな説明の仕方があるが、「人間中心デザイン」という表現がいちばん最適だと思う。人々の真のニーズにピッタリと合致するデザインを選択することで、イノベーションを生み出す手法、それがデザイン思考だ。
ところがニーズに合致するといっても、本当はどのようなニーズがあるのか、何に困っているのか、実は気づいていないことの方が多い。そこで、プロトタイプ(試作品)を作成し検証するプロセスを何回も繰り返すことで、正しいデザインに導いていく方法をとる。
デザインは商品を形作るだけではない。本質をイメージさせるストーリーを作り、人に真のニーズを気づかせる役割があるのだ。


アナログとデジタルの共存「wena wrist(ウェナリスト)」

デザイン思考の取り組みが感じられる商品が、スマートウォッチ「wena wrist(ウェナリスト)」だ。
この商品は前章で紹介したSAPで事業化されたもの。この商品、他のスマートウォッチと何が違うのかというと、ディスプレイ部分は普通の時計の文字盤だということだ。代わりにリストバンドにスマートウォッチの機能がある。
お気に入りの伝統的な時計のヘッドにこのリストバンドをつければ、便利なウエアラブルデバイスに変身する。

wena事業室の統括課長を務める對馬哲平氏はこのリストバンドを「商品ではなく作品だ」という。
市場ニーズに合わせて商品を作るのではなく、「世界はこうあってほしい」という思想を軸に商品化した。これだけ聞くとメーカーが自分の作りたいものを作る「プロダクトアウト」商品ととられてしまうが、もしこの思想がユーザーの気づかない感性を刺激し、共感を得るようになってくれば、この取り組みはデザイン思考の成功例となるだろう。

引用元:wena wrist


移動の体験を変える「コンセプトカーSC-1」

移動時間は無駄な時間。だから車はいつでも速く、短い時間で移動するために開発されてきた。しかしソニーの作るコンセプトカー「SC-1」は、ゆっくりと移動することを追求したものだ。

そもそもSC-1は車ではなく、ゴルフカートだ。ヤマハ発動機のゴルフ用カートの車体に、AIやセンシング技術、MRを搭載して、最大19kmの速度で走る。
ハンドルもブレーキもなく、PlayStationのコントローラーで遠隔操作する仕組みだ。
車内には窓がなく、その代わりに4Kディスプレイが埋め込まれている。自社開発のMRを搭載し、モニターで見る外の風景に映像を重ね合わせ、エンターテイメント空間に仕立てる。
「学校には行きたくないけどあのスクールバスには乗りたい」と思えるような移動体験を作りこむ。

引用元:想像をプロトタイプするDNA ~New Concept Cart SC - 1~


ソニーDNAが再び花開くか

これらの商品が熱狂的に迎え入れられる日がくるのかは未知数だ。
だが、既存の枠組みから外れた商品を世に問う姿勢そのものが「ソニーらしさ」でもある。ウォークマンを開発した1979年、録音できない再生機など売れるわけがないと口をそろえて皆が言った。
誰も心の奥底ではウォークマンを求めていたことに気が付かなかったのだ。

デザイン思考によって世に出された商品が、ソニーの収益となる日が来るか、注目していきたい。


<参考・参照元>
2017年度 連結業績概要
2017年度経営方針説明会
デザイン思考でAIに「ユーザー心理」を吹き込め:日経ビジネスオンライン
デザイン思考は組織変革の救世主になりうるか? 【前編】 | 本の要約サイト flier(フライヤー)
移動をエンターテインメントに変える電動コンセプトカートの可能性:“未来のカタチ”を再定義(リディファイン)せよ|WIRED.jp

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