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予防医療、最新テクノロジーの活用「次世代ヘルスケア産業協議会」が描く未来とは

政府の日本再興戦略に基づき次世代ヘルスケア産業協議会という組織が立ち上がっている。
日本人の健康に大きな影響を与えるかもしれないこの組織は、健康寿命を延ばし、国民の生活をより豊かにしようと動いている。

超高齢化社会を迎える日本。次世代のヘルスケア産業に必要なものは何か考えていきたい。


次世代ヘルスケア産業協議会とは

次世代ヘルスケア産業協議会は、健康寿命の延伸分野の市場創出および産業育成を目的に設立されている。経済産業省の管轄でありながら、厚生労働省など複数の省庁とタイアップを組んで運営されており、国の成長戦略の中心に位置付けられている。
次世代ヘルスケア産業協議会には主に2つのワーキンググループ(以下、WG)がある。健康投資WGと新事業創出WGだ。

健康投資WGは、需要面からヘルスケア産業の成長をサポートする。
企業や健保などが健康サービスを活用するように促進する方法が考えられており、具体的には、企業等に対して健康経営のノウハウを提供、健康投資対効果の見える化を図る、積極的に健康経営に取り組む上場企業を「健康経営銘柄」に認定して株式市場で高く評価する仕組みを作るなどして、健康に対するニーズの拡大を目指すという。

一方、新事業創出WGは、ヘルスケア産業が製品・サービスを提供しやすいように、資金・人材の確保を充実させたり、規制に付随するグレーゾーンを解消したりするなど、ビジネス環境の整備を行うことを目的としている。

健康投資WGが機能することでニーズが生まれ、新事業創出WGが機能することでそれに応える新たなサービスが誕生する。次世代ヘルスケア産業協議会はこのような展望を描いている。
そして、その先にあるのは「生涯現役社会」の実現だ。人生80年時代から100年時代になるのではないかと言われている昨今、いかにして健康寿命を伸ばすかは社会的にも大きな課題だ。
健康寿命が伸びることで、国も健康保険や介護保険の負担も軽減できる。そのためには、早期に優良なヘルスケアサービスを活用することで、国民の健康が向上することが望ましい。


次世代ヘルスケア産業協議会がかかげる戦略とは

それでは、この好循環を生み出すために、次世代ヘルスケア産業協議会はどのような問題意識を持ち、取り組んでいるのだろうか。
資料を読み解いていくと、クリアすべき課題として「4つの壁」を定義している。それが、「身体の壁」、「価値観の壁」、「選択肢の壁」、「情報の壁」だ。

「身体の壁」は、職場や地域で受けている生活習慣病予防対策などの医療サービスを指す。
ヘルスケアと言うと、このような予防医療対策や健康診断などを思い浮かべる人が多いだろう。そういう意味では、残りの3つを国民の意識に浸透させることができるかどうかが戦略実現に向けてのキーポイントとなる。

「価値観の壁」は、健康への気づきやそれを維持・向上させるための行動を継続させるサービスの創出である。
健康のために運動やダイエットを始めたとしても、長く続かない人が多いのではないだろうか。そういう人たちが、活動の継続が可能となるサービスを提供できるかどうかが価値観の壁となる。

「選択肢の壁」は、新たなヘルスケア事業創出により、サービス受容者の選択肢を増やすことだ。
一人ひとりで健康状態に大きな違いがあり、本人の状態にマッチしたサービスを提供できる市場環境を整えることが求められる。

最後の「情報の壁」は、保険外サービスの見える化と品質評価の基準を設定を指す。
これまでにないヘルスケアサービスが誕生することで、保険外サービスが今後増えていくことが予想される。サービス受容者が、質の低いサービスを選択しないよう、国としてルールを求めていくことが重要だ。


AI、IoT、ロボット、鍵を握る最新テクノロジー

新たなサービスを提供する上で、今後ITの活用が前提となる。特に、注目を集めているAIIoTロボットなどの最新テクノロジーは、重要課題となるだろう。

経済産業省では、「ヘルスケア分野におけるIoT・ビッグデータの利活用事業モデルの考え方」という資料を作成し、公開している。
IoT・ビッグデータの利活用を進め、新たなヘルスケアサービスの創出に向けて、自治体として持つべき考え方と民間企業の動きについて取りまとめている。民間では、ウェアラブルデバイスやロボットなどの提供が着々と進んでいる。

今後はここで提示されているような官民一体の構想が実現できるよう、次世代ヘルスケア協議会でも議論が進められることだろう。


20年後の我々は、“価値観の壁”を越えられているのか

2025年、団塊世代が全て75歳以上になる日本。超高齢化社会において、日本の次世代を支えるヘルスケア産業の創出が期待されている。
しかし、創出するだけでなく、国民の意識を変え、有用なサービスを受けたいと望む人を増やすことが一番の重要課題かもしれない。次世代ヘルスケア産業協議会が提唱する「価値観の壁」を超えられるかどうかがキーポイントとなるだろう。

どんなに有用なサービスが生まれても、それを活用しようという動きがなければ始まらない。
健康への意識を高めることがこれからの国としての大きな役割となるが、国民もまた自発的に健康に対する意識を高めておく必要があるだろう。
国民自身がそれぞれに健康意識を高めていく世界となれば、20年後の超高齢化社会・日本は、より活気に溢れていることだろう。


<参考・参照元>
次世代ヘルスケア産業協議会(METI/経済産業省)
次世代ヘルスケア産業協議会の検討の進捗状況と「アクションプラン2017」について 平成29年4⽉28⽇ 次世代ヘルスケア産業協議会 事務局(経済産業省)
ヘルスケア分野におけるIoT・ビッグデータ利活用事業モデルの考え方 2016年3月 経済産業省 関東経済産業局 次世代産業課(調査委託先:株式会社 日本総合研究所)
産業競争力の強化に関する実行計画(2018年版)

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