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出版社はマンガファンの変化に気がついているか[コラム]

漫画村のような海賊サイトが絶滅したとしても、マンガの売り上げ自体にさほど影響は与えない。
一方で、マンガのシュリンク包装をやめることで売り上げが上昇したというニュースがあった。

これらの事実が物語るのは、マンガ自体の受け取られ方がシュリンク包装が始まった30年前とは変わってきたという事。それでは今、マンガを買ってもらうために必要なことは何なのだろう。

小学館が、マンガの立ち読みが出来るようにシュリンク包装を取りやめるように書店に呼びかけたら、実施した書店で少女・女性向けマンガの売り上げが20%増えたというニュースを見た。
この企画が上手かったのは、小学館のコミックスのみで実施された事、1巻と最新刊に絞った事、そしてシュリンク包装が始まって、もう30年も経っている事などが挙げられる。

立ち読みできないより出来たほうが、マンガコーナーに人を呼べるし、マンガは試し読みすると買いたくなる商品だから、良いに決まっているのだが、しかし、本屋のスペースは限られているし、座り込んで読みふける立ち読み客は、マンガを買いに来る客へも迷惑なのだ。

筆者は少年時代、立ち読みが自由な上に、売り場が二階の隅にあって、しかもマンガの品揃えが良いという書店に入り浸って、マンガや文庫本を立ち読みし続けていたから知っているが、アレは一般のお客さんにとって、異様に見えるし、とても不快なものなのだ。
ただでさえ忙しい書店員の仕事を増やしてでも、読めないようにシュリンク包装をするようになったのも、それはそれで良く分かる。

一方で、kindleなどで頻繁に行われている、コミックスの1巻のみ無料にまんまと引っ掛かって、続刊を買ってしまう人が沢山いるという事実もある。
今や大人気マンガとなって、テレビ朝日「アメトーーク」でも取り上げられ、ロッテのビックリマンチョコが「キングダムマンチョコ」というコラボ製品を出すほどになった原泰久のマンガ「キングダム」も、かつて、10巻まで無料というキャンペーンを行ってファンを増やした。

雑誌が売れない現状で、既に10巻を越えるようなマンガの新規読者の開拓には、このくらい思いきった無料公開も有効だということなのだ。
期間限定公開なら、キャンペーン終了後、試し読みした人が、読み返したくて10巻までを買う可能性も高い。マンガというのは、そういうものであり、それは漫画村問題の時に明らかになったはずだ。

無料なら読むというだけの読者は、いずれにしてもお金を払う事はないし、マンガが好きな人は、それを面白いと思えば喜んでお金を払う。

音楽でサブスクライブによる聴き放題の配信が成功したのも、結局は同じ事なのだ。そして、お金を払う気があるユーザーにとっては、放っておいても払う金額が大幅に減るのだから喜んで加入するし、好きだから、大量に聴くから、結果的にミュージシャン側が受け取る金額も大きくなる。

アメリカなどでCD時代よりも儲かっているミュージシャンがいくらでもいるのは、そういう訳だ。そして、正規で入手できる音楽ライブラリが、現在の音楽配信サービスのように充実していれば、さほど音楽ファンでなくても加入する価値を見出すし、その入り口としての無料サービスも用意されている。

端末にダウンロードして聴く事もできるし、歌詞の表示もできるのだから、CDを買うのとさほど違いはないどころか、直接スマホにダウンロードして、プレイリストを作って、そのままスマホで聴けるのだから、CDよりも手軽なのだ。それが月々CD1枚分以下というか、CDの半額以下の価格で加入できる。
つまりCDを年間5枚以上買うなら、加入した方が安く上がる上に、子供の頃の夢だったレコード屋さんになって、好きな音楽聴き放題が叶えられてしまう。もちろん、コアな音楽ファンは、その上にさらにCDも買うし、現状、CD市場を支えているのは、アイドルのファンと、そのコアな音楽ファンだけだ。

本でも、読み放題サービスがいくつか試みられている。
ただ、音楽と違って本はCDよりも安い事が多いし、本好きには「紙の本」好きも多いし、何より、音楽の聴き放題サービスに比べて、圧倒的にライブラリが充実していないという現状では、まだ紙の本の売り上げと比べるべくもないかも知れない。

しかし、電子出版を行っている作家の一部は、明らかに、Amazonの読み放題サービスである「Kindle Unlimited」参加で、収入が増えたという。
つまり、読まれさえすればコンテンツ作成者へのバックは確実なのだ。そして、これは音楽でも同じだけれど、読み放題だと、例えば、一人の作家の本を読んで面白いと思えば、そのまま、その作家の他の作品も読んでしまうという状況になりやすい。

問題は、その時、他の作品がきちんとライブラリ化されているかどうかで、しかし、現状の過去作品の電子化の遅れを見ると、その状況になるのは、まだまだ先かも知れない。
実際、まだ、現在のライブラリでは、「Kindle Unlimited」よりも、普通にKindleの試し読みをして、好きな作品を実際に購入する方が、価格的に有利だと感じてしまうほど、「ああ、あの作品もないのか」と思わせる。致命的なのは、SpotifyやAppleMusicのように、新作がすぐに配信されないことだろう。
未だ、一般手3基な電子書籍でさえ、紙とデジタルの同時発売がされないケースも多いのだから、この状況をどうにかするのも、まだ先かも知れない。

しかし、マンガはもはや、時間潰しの娯楽ではないし、映画や音楽と同じように、エンターテインメントとして、沢山のコアなファンを持つジャンルに成長しているのだ。

マンガ雑誌が売れないというのも、結局はそういうことだ。ならば、売り方も考えなければいけない。
そのためには、従来の出版という枠が邪魔なのだけれど、そこが変わるのは、まだ時間がかかりそうではある。

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