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興行収入16億を突破した『カメラを止めるな!』のヒットはネットの希望か[考察]

まだ日本語のホームページが数える程しかなかった時代は、個人ユーザーのサイトと大手メーカーのサイトが横並びで雑誌に紹介されていた。
そこに、ユーザーは大きな可能性を夢見ていたのだけれど、その夢はネットの普及とともに砕かれた。

しかし、映画『カメラを止めるな!』のヒットは、再び、ネットの可能性に思いを馳せるのに十分なネットの使われ方を見せてくれた。
アクセス至上主義、有名人至上主義の現在のインターネットに風穴を空けるチャンスが、もしかしたら来るのかもしれない。

映画『カメラを止めるな!』が大ヒットしている。
50席程度の映画館2館のみの上映から始まって、SNSで話題になった事も手伝って、いまや、興行収入は16億円に届いてしまった。

面白いのは、この映画、基本的に何を語ってもネタバレの危険がある内容であるということだ。それこそ、どういうジャンルの映画なのかさえ話せないため、SNSでも「とにかく面白いから見ろ」とか、「最初の40分は騙されたと思って見てろ」くらいしか言えない中で、それが興味を惹く事になったという、中々幸運な展開での人気となったのが面白い。

もちろん、映画自体が面白かったから、というのは大前提だし、内容が誰にでも勧められる、とても広い範囲のお客さんを意識したエンターテインメントだったというのもある。

共感ポイントやフックが多いため、色んなクラスタの人たちが、どこかに引っ掛かって感動できるし、とにかく一所懸命作られているのが分かる事もあって、つい応援したくなる映画だったというのも、人気拡大のポイントだった。そのあたりが、インフルエンサー・マーケティングとは違うところだが、元々、この方向がSNS本来の目的だったはずだ。
知名度を上げるという方向ではなく、皆が、その作品を応援したくて書き込む事で盛り上がると、SNSという仕組の良さが発揮される。

クラウドファンディングにしても、キックスターター登場当初は、日本語に対応していなかったこともあるけれど、アイディア一発のような、絶対大手メーカーからは出てこないような製品がいくつも登場して、その、個人のアイディアを皆が支援して商品化する、という仕組の面白さや魅力がストレートに伝わるものだった。

実際、爆発的なヒットを狙うというより、本当に、自分が使いたいものを作りたい、といったアイディアに面白いものが多く、その分、成立しない事も多かったけれど、他にはない、そこでしか手に入らないものが並ぶ楽しさと、応援したいという気持ちの集積が、ネットならではの仕組として新鮮に映ったのだ。

だからといって、現在の日本のクラウドファンディングがダメなのかというと、一概にそうは言えない。
クラウドファンディングの運営と、モノ作りの現場や海外製品のバイヤーが連携して、新しくて面白いものを紹介していこうという、きびだんごなどが行っているスタイルは、当初のクラウドファンディングの姿とは違っているとしても、これはこれで、新しいマーケティングの方法だし、一般的な方法では流通させにくい海外製品などを紹介するのにも、とても良い舞台として機能している。

何より、雑誌にしてもWebにしても、一つの商品を紹介するのに、クラウドファンディングのサイトほど多くの文字数を使える場所は他にはほとんどないのだ。

かつては、それをブログが担っていたのだけれど、ブログもアクセス数至上主義の波に逆らえず、結局、有名なもの、検索されやすい製品の紹介記事が中心になってしまった。
今や、商用サイトの方が、マニアックなネタを扱っているくらいだが、それにしても限界がある。人が知らない製品は、検索されないから、当然アクセスも稼げないのだ。

しかし、クラウドファンディングの場合、最初から知らない何かを持ってくる場所なので、その心配が必要ない。さらに、十分な説明がないとユーザーが納得して支援してくれないのだから、説明も丁寧になる。これからの何かをプロモーションするのに、こんなに向いたサービスもないだろう。
もちろん、だからこそ知名度がある人を使い、既に有名な何かに上乗せするためのシステムとしてクラウドファンディングを使うという考えもあるし、むしろ、今のクラウドファンディングは、そちらが主流だろう。

SNS同様、そういう裏表は必ず出てくるし、それが間違っているわけではない。
ただ、『カメラを止めるな!』のヒットを見ていると、こういう現象が、ネットサービスが見ていた夢だったのだろうとは思う。

もちろん、そう簡単に、こういう幸せな結果は生まれないし、このヒットが、メジャー映画会社に、「こういう、有名人を使わないアイディア主体の面白い映画にお金を出そう」と思わせはしないことも分かっている。それこそ、『カメラを止めるな!』を有名人キャストでリメイクしようとさえするかもしれない。
ネットが見ていた夢は、アクセス数至上主義になって以降、ろくな方向には働かないし、それは、大手映画メーカーの考え方と同じというか、現実のビジネスは、ネットをそういう方向で捉える事にしたという事実は、まだ当分変わる事がないだろう。

手っ取り早くマネタイズするには、まだそれ以上のアイディアがないのだから仕方がない(と考えられているのだろう)。インターネットという仕組自体は、本来マネタイズに向いていないという事は、そろそろ皆が身に染みているところだろう。

だからこそ、ネットビジネスの主流はBtoBに向いているのだし、ネットでの販売などの直接商売は、未だにリアルの模倣を出られない。インフルエンサー・マーケティングも、現状のクラウドファンディングの使われ方も、結局は従来の手法のままだ。

しかし、そこから抜けた先に、もしかしたら、面白い世界が待っているかも知れないという希望は、映画のヒットの例を見ても、持っていいのかも知れないという気はしている。

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