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「ゴールドラッシュが始まる」宇宙コンサルタント・大貫美鈴氏が語る急拡大する宇宙ビジネスの現状【インタビュー】


今、宇宙ビジネスが熱い。これまで国が主導してきた宇宙開発だが、民間企業が参入できるようになり、ビジネスとして成立するサービスも誕生している。

宇宙ビジネスに対する投資も急激に増加している。ベンチャーキャピタル(以下、VC)から宇宙ビジネスへの投資額は2014年時点で約500億円だったが、2015年に約2,500億円まで急拡大した。以降、2500億円を超える水準であり、今後、さらに増えることが予想される。

なぜ宇宙ビジネスがここまで注目を集めるようになったのだろうか。熱い宇宙ビジネスの今について、今回は宇宙ビジネスコンサルタントで、著書『宇宙ビジネスの衝撃』を刊行した大貫美鈴氏(以下、大貫氏)にインタビューを行い、お話しを伺った。

宇宙利用で『新たな経済価値』が生まれる

現在、宇宙ビジネスへの投資が急増している背景には、どのような要因があるのだろうか。その一つに、宇宙でしかできないこと、宇宙を使うからこそ価値があることに、世の中の投資家が気づき始めたことが大きいと大貫氏は語る。

「1990年代、Forbes の長者番付で宇宙ビジネスに投資する人は誰もいませんでした。しかし、2000年にジェフ・ベゾスが500億円を投資して宇宙企業ブルーオリジンを設立したのを皮切りに、イーロン・マスクやビル・ゲイツなどITガリバーを育てた企業家たちが次々と投資するようになりました。彼らはもともと、ITの将来性を見抜くなど情報感度が高かっただけに、宇宙ビジネスの可能性も気づくことができたのでしょう」

また、ある民間人の存在も、宇宙の可能性を世に広く知らしめた。「実業家のデニス・チトーが、2001年に民間人で初めて宇宙旅行に行ったのも大きかったです。『民間人でも宇宙に行ける!宇宙はみんなに開けている』と分かって、より宇宙への関心が高まりました」

宇宙には、投資する価値がある。世界で名だたる起業家や投資家が見出す価値とは、どのようなものだろうか。大貫氏は、現在展開されているサービス例を挙げて説明する。

「主流になっているのは、衛星を用いて宇宙から地球上のデータを取り、それをビッグデータの1つとして取り入れてAIなどで分析することで未来を予測するというものですね。宇宙を利用するからこそできることであり、新たな経済価値を生んでいます」

急速に進む民間の宇宙利用を主導するITガリバーの存在

増え続ける宇宙ビジネスへの投資。それを先導するのは、宇宙利用を積極的に進めているITガリバーたちだ。

「アルファベット(Google)、Amazon、facebook、、マイクロソフトといった世界企業が宇宙に投資しています。たとえば、マイクロソフトは、ビル・ゲイツがKymeta(カイメタ)という小型アンテナを開発するベンチャーに投資していますね。Kymetaのフェーズドアレイアンテナは平面化されCDほどの大きさまで小型化できているのが特徴で、トヨタの燃料電池車「MIRAI」などに搭載されています。また、グーグルは、宇宙資源利用など長期的な投資を行なっています。アップルも宇宙に参画する動きが報じられています。世界の売上げトップ5が宇宙に投資している影響力は絶大なものがあります」

宇宙への投資を行なっているのは彼らだけではない。先ほども紹介したとおり、近年はVCからの投資も集まっている。大貫氏はその要因について、「小型衛星が宇宙ビジネスを牽引している。実際に小型衛星を開発して、宇宙に打ち上げて、そこから地球のデータを取得できるまでにかかる時間が、2年以下にまで短縮された」ことを挙げる。VCが現実的な期間で投資資金を回収できるようになっているのだ。

世界中から注目を集める日本の宇宙ベンチャー

2015年以降、シリコンバレーのVCの流れで始まった宇宙ビジネスへの投資は、その後世界にも広まることになる。イギリスやイスラエルをはじめ、実は日本でも活発化している。
「昨年日本のVC投資が宇宙ベンチャーに対する投資件数は、世界で2位になりました。日本の宇宙ベンチャーは20社ほどですが、有望な企業が多いです。これからは、日本のVC投資が、日本の宇宙ベンチャーにますます投入されるでしょう」

日本の宇宙ベンチャーの中でも、投資家から熱い視線を集めているのが株式会社ispaceだ。『HAKUTO』を運営し、月の民間探査プロジェクトを進めてきた同社は、世界初の偉業を成し遂げた。「ispaceは宇宙ベンチャーで初めてラウンドAで100億円を調達しました。同社は、月の資源利用を目指した事業を展開していますが、月のエンタメ利用など短期で実現を目指すプロジェクトも期待されています」


また、意外な企業が宇宙ビジネスに参入しているところにも、その広がりを感じることもできる。

「実は、コカ・コーラも宇宙ベンチャーの OneWeb と協業して、アフリカでインターネット網の整備に貢献しています。コカ・コーラは、たとえばアフリカの奥地に至るところにもキオスクと呼ばれる販売店を持っていますので、そこに小型アンテナや太陽電池などで構成される小さなデバイスを置くことでWiFiのホットスポットになるのです。インターネットの恩恵を受けていない40億人のコネクティビティを可能にします。。また、日本でもセメダインがiSpaceの月面開発で宇宙に参入しています。月面の昼夜200度を超える 温度差や硬化後のアウトガスを克服する『宇宙接着』を開発して実用化を目指しています」

進化する衛星やGPSが宇宙でしかできないことを実現

宇宙利用が急激に進む現代において、キーポイントになるのが、小型衛星を大量に打ち上げて一体的に運用するコンステレーションビジネスだ。これにより、地球全体のモニタリングが可能になり、大貫氏は「宇宙から取得できるデータが飛躍的に増加した」と変化を強調する。

このような動きが実現している背景には、小型衛星の生産技術向上がある。先ほど紹介したOneWebは、ソフトバンクからも出資を受けた小型衛星を通信利用するパイオニア的な存在だ。「OneWeb は700衛星以上で小型衛星コンステレーションを構築する。小型衛星はエアバスが製造、1週間で15機を組み立てます。メガコンステレーションで運用される小型衛星を大量に製造することでスケールメリットがうまれ、製造におけるイノベーションがもたらされ、低コスト化が進んでいます。」

GPS衛星の活用も飛躍的に進みます。日本では準天頂衛星「みちびき」の本格運用が始まり、数センチの精度で正確な時空間情報が得られ、カーナビやパーソナルナビはもちろんのこと自動車や農機などの自動運転や航空管制、ドローンによる宅配サービス含む物流、建設、観光、防災から電子商取引に至るまでさまざまな応用が期待されています。

インダストリ4.0ならぬ「スペース4.0」の 鍵を握るのはロケット開発


私たちが想像している以上のスピードで進んでいる宇宙のビジネス利用。OECDでは、「イノベーションとレボリューションが同時に起こっていると認識され、欧州宇宙機関では『スペース4.0』の到来と言っている」ほど注目を集めているという。

その上で、今後の宇宙利用が促進されるために何が必要なのか。大貫氏は宇宙へのアクセスを最大の要因として挙げた。

「宇宙でさまざまなことができることがわかってきたので、あとはロケットの打ち上げコストをどこまで削減できるかにかかってくるでしょう。ペットボトル1本の水を打ち上げが300万円ほどかかってしまう現在の打ち上げコストでは、宇宙で行うあらゆる活動が高コストになってしまいます。現在、ロケットの再利用開発が加速していますが、これを解消するためにも、ロケットの低コスト化は急務です」

我々からは遠い存在と思っていた宇宙。しかし、宇宙利用は想像を超える以上のスピードで進んでいる。ロケット開発にさらなるイノベーションが起これば、イーロン・マスクではないが、人類が火星に住むのも、決してフィクションではないかもしれない。宇宙ビジネスには無限の可能性が広がっている。


撮影:齋藤葵

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