CAREER

キャリア

テレワークにAI導入……IT企業の働き方改革が止まらない!

政府の肝いりで実施される「働き方改革実行計画」。過労死や長時間残業など社会的問題を背景として残業の上限を設けるそのやり方は、人材不足という問題を抱えながら厳しい納期を要求さるIT業界では根本的な解決にならないという意見もある。はたして働き方改革はIT業界の未来を変えていけるだろうか。

IT業界で働き方改革は成立するのか

経済産業省による「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果」では、2019年をピークにIT関連産業への入職者が退職者を下回り、2030年にはIT人材が約59万人程度不足すると予測している。

その背景には労働力人口減少と、先端的な技術を担うIT人材のニーズの高まりがある。今やITは企業の中で位置づけが変わりつつある。今まで会社の業務にあわせてシステムを導入していたが、システムを導入することで会社を成長させるという認識が高まっているのだ。AIやIoTなど、企業を成長させるために必要な先端的な技術を持つ人材のニーズが高まっていることが、人口減少と相まって人材不足を増長させている。

一方で、過労死や長時間残業は産業界全体の問題だ。政府は2017年3月「働き方改革実現会議」を開き、「働き方改革実行計画」に残業時間の上限を設けることを打ち出した。IT業界ではクリエイティブな働き方をするために、生活に余裕をもった勤務形態は大切だ。ただ現実問題として、膨らむ仕事に余裕を持ってこなせるだけの人手がない。単純に人を補充しても、専門性を持っているがゆえに育成する時間が必要であるため、忙しい人の助けにならない。顧客からは厳しい納期を要求される。現場からは「残業規制をしてもサービス残業が増えるだけ」、「家に持ち帰って仕事することに変わるだけ」という不信感も垣間見える。

こうしたなかで、人材不足と労働環境の改善を目指し、独自の働き方改革を進めるIT系企業も増えてきた。今まで育児や介護などで働くことをあきらめていた人材へ向け間口を広げて、働きやすい環境を整備する。これにより、離職率を減少させ雇用を保つだけでなく、その雇用を抱えるに足る企業成長を目指すという。


日本マイクロソフトが取り組む、働きやすさから質の向上へ―日本マイクロソフト

では、具体的にIT企業ではどのような取り組みが行われているのか。先進的な取り組みを紹介する。

日本マイクロソフトの働き方改革に対する取り組みは、2011年にまで遡る。当時、日本マイクロソフトは、労働生産性、コスト効率、風土・文化面にさまざまな問題を抱えていた。例えば、組織間の連携がうまく取れない、月間5,506回のオフィス間の移動、男性の1.8倍という高い女性離職率といったことだ。そこで2011年2月、点在していたオフィスを統合したのをきっかけに、ワークスタイル変革の取り組みとしてテレワークを推進した。これは、オフィス統合の翌月に発生した東日本大震災の経験がベースとなっている。日本マイクロソフトでは、テレワークという本社に行かなくても仕事ができる「時間と場所を選ばない働き方」が、BCP(事業継続性)の面からも評価されていくとしており、震災1周年を機に「テレワークの日」を導入した。翌年以降も継続的に実施され、2014年には外部の賛同法人も募り「テレワーク推奨強化週間 2014」として規模を拡大するまでになった。

ただ、テレワークというと管理者の立場で言えば「働いているのか、働いていないのかよくわからない」という不安がある。しかし、日本マイクロソフトでは自由と責任を与えるために、勤務状態のチェックはせずに成果で評価している。

また、働きやすさを働き方の質向上へ繋げるため、無駄な会議などの気付きをAIが与える「MyAnalytics」、組織横断型の「Microsoft Teams」、遠隔地でもSkype for Businessを用いて会議を可能にする「Surface Hub」を導入して、働き方の変革を進めている。

これら一連のワークスタイル変革により、社員1人あたりの事業生産性が26%向上し、女性の離職率は40%低下した。働き方改革を推進した日本マイクロソフト業務執行役員(当時)の越川慎司氏は、制度を導入するだけではうまくいかず、働き方の質を高めなければいけないと言う。


働き方は自分次第。給与は転職市場価値で決める―サイボウズ

今でこそ、働き方改革の先進企業として知られているサイボウズだが、以前は土日も働いて当たり前、朝出社すると会議室で社員が寝ているのが当たり前の会社だった。しかし、2005年の離職率が28%を記録したことをきっかけに、働く時間と場所を選べる制度を導入するとともに、「社内相対評価」から「市場性+社内絶対評価」に変更。働き方で評価が変わることのないように、その人が転職したときの市場価値と社内での成果で評価する制度を導入した。2015年には次世代コミュニケーション基盤としてオフィスとサポートセンターの基盤を統一、リモートワークの環境を整えたほか、あらゆるチャットやWeb会議をできるようにした。

そして、社長自ら3度の育児休暇の取得や16時半退社などを実施して、社内の風土を変える取り組みをした。その結果、離職率が28%から4%にまで改善したのだ。

サイボウズ社長の青野慶久氏は、働き方を変えるにはツールも制度も必要だが、一番大切なのは風土を変えることだと言う。つまり、ツールと制度を導入しても、風土が変わらなければ浸透しないということだ。


デジタルトランスフォーメーションが働き方を変える

サイボウズの開発するクラウド型Webデータベース「kintone(キントーン)」の広告が話題となったのは記憶に新しい。「労働時間削減、結局現場にムチャブリですか?」など、働き方改革に対する現場の不満を生々しく切り取ったコピーが並ぶ。社員がラクをするだけでは会社の業績が上がらない。制度を導入しただけでは働き方の質が上がらない。社員にも企業にもプラスになる制度にするには何が必要だろうか。

紹介した2社の働き方改革の軌跡を辿ると、在宅勤務などの多様な働き方が当たり前となる企業風土にしていくのが第一歩だ。そして「MyAnalytics」のように、ツールで無駄を検出して労働の質を高めることがその次のステップとなるだろう。

そして、今後はAIなどのツールが働き方の提案をしていくことになるだろう。すでに一部の企業ではパフォーマンスの高い社員の行動からAIがノウハウを解析し、他の社員に提供する仕組みの検討を始めている。もっとよい働き方はないか、もっとその人が活躍できる働き方はないか。AIが手助けをしてくれれば残業をしなくても社員も会社もさらに成長できるはずだ。


<参考・参照元>
IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果 ~ 報告書概要版 ~|商務情報政策局 情報処理振興課|経済産業省
「働き方」を斬る - IT業界、6人に1人がブラック状態|ITpro
働き方改革を“企業成長の武器”に MSの取り組み、第2フェーズへ| ITmedia エンタープライズ
日本マイクロソフトはなぜ「女性離職率40%減」を実現できたか(越川 慎司) | 現代ビジネス | 講談社
育休は最長6年、副業もOK! サイボウズはなぜ「100人100通りの人事制度」を作ったのか|ログミー
9月15日 MKI、サイボウズ社にワークスタイル改革を推進する次世代コミュニケーション基盤を導入|MKI (三井情報株式会社)
サラリーマン目線の広告に共感 「結局現場にムチャぶりですか?」|withnews(ウィズニュース)

あわせて読みたい記事!