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浸透してきたアジャイル開発、なかでも「スクラム」がチーム力を格段に上げる秘密とは?

ウォーターフォール開発手法のアンチテーゼとして誕生したアジャイル開発の手法だが、システム開発の域を超えて、ビジネスの現場でも働き方を変革する手法として活用されている。

その中でもスクラムチーム力の向上に焦点を当てた手法として注目を集める。スクラムは、なぜチームのパフォーマンスを引き上げられるのだろうか。


開発だけではないアジャイルのメリット

ウォーターフォール開発は最も古く、今でも最もポピュラーな開発手法だ。「要件定義」「設計」「実装(プログラミング)」「テスト」という各フェーズをきっちり決めて後戻りはせずに、プロジェクト立ち上げ当初に作成された仕様が正しいという前提のもと忠実に開発を進めていく。今でもホスト開発ではこの手法を用いられることが多いだろう。

ウォーターフォールとアジャイルの特徴的な違いは、アジャイルではイテレーション(反復)で開発をするところだ。開発を小さな単位に分けておおむね2週間という短期間で要件定義からテストまでを行う。それを繰り返すことでシステム全体の品質を高めていくというものだ。ウォーターフォールでは、テストまで最低でも数ヶ月~数年間かかるのに対して、アジャイルは1サイクルおよそ2週間。アジャイルは超短期間開発なのだ。

なぜ、アジャイルの手法が生まれたのだろうか?それは、ウォーターフォール開発は顧客との齟齬が生まれやすい枠組みだからだ。最初のフェーズが「要件定義」となるが、ウォーターフォール開発の場合、この「要件定義」はフェーズが終わると二度と行われない。そして、顧客が実際にシステムを操作できるのは早くても「テスト」のフェーズだ。

その時点で、もしも顧客と要件の齟齬が発生したら、数年かかって進めたフェーズを内容によっては要件定義のフェーズからやり直すことも考えられる。そうなると、スケジュールはどんどん遅れ、コストは膨れ上がってしまう。一方、アジャイルでは小さい単位で開発を行うことで早い段階で実際に動くシステムを介して顧客と密にコミュニケーションが取れる。まさにアジャイルは顧客と一体化して進められる開発手法なのだ。

こうした手法は開発だけではなく、ビジネス部門でも活用できるとして注目されている。アメリカのGE社はアジャイル開発の手法を取り入れた製品開発プロセス「ファストワーク」を2012年より開始している。


スクラムで変わるチーム力

アジャイル開発では「少数精鋭のチーム」が大切な要素となる。アジャイル型開発手法の中でもチーム運営に焦点を当てた手法が「スクラム」だ。スクラムは、ラグビーの用語であるチームメンバーが互いに肩を組合い正面からぶつかる型に由来している。
優れたスクラムは体力の消耗が抑えられ、前(ゴール)への推進力を生む。開発手法としてのスクラムも全員が同じ方向を見て集中し、パフォーマンスを最大化することを目的としている。

従来のウォーターフォール開発では、フェーズごとに専任の担当がいて、要件定義なら要件定義者だけのチーム、テストならテスト担当者だけのチームと段階ごとにチーム作っていたため、フェーズごとにチームが分断していた。

それに対してスクラムはそれぞれのフェーズの担当者が集まってひとつのチームを形成する。ウォーターフォール開発ではチームがフェーズごとに分かれていたので、例えば実装(プログラミング)の担当者は「何を作るか」はわかっているが「どうしてこれを作るのか」は知らない。「何を作るか」はその前のフェーズで決められているので、その結論に至った経緯が共有されないためだ。チーム全員がこのシステムの価値は何であるのかを知ってこそ、自分のやるべきことが見えてくる。その能動的な力がチーム力になるのだ。

そして、最大の特徴は「指示する」という役割を担うという人がいないということである。意思決定を行う「プロジェクトオーナー」と、プロセスがスムーズに遂行できるように推進する「スクラムマスター」はいるが、それらは指示命令権のある役割ではない。自分の仕事も与えられているが、あくまでもチームで仕事をすることが重視されるのだ。
全員がチームで仕事をする意識を持つことでラグビーのようにより前へ、より速く進む「チーム力」が生まれることになる。


もう指示命令は必要なし?!個人の意識の向上が課題

チーム力を最大限にするために、何が一番必要か。それは、「セルフマネジメント」だろう。これまではリーダーと言う役割があり、その人が意思決定や指示命令をし、メンバーをサポートするという仕事を担ってきた。
しかしこのやり方ではリーダーだけに過度の負担を与え、リーダー自身がボトルネックになることも考えられる。そして配下のメンバーは「何故やるかわからないけど、指示されたからやる」という受身な姿勢をとってしまう。

そうではなく、プロジェクトの価値を全員で共有すれば、自分がやるべきことがわかる。自分で考えて自発的に働くことができる。これほどモチベーションの上がるやり方が他にあるだろうか。自発的に動けるようにスクラムではプロジェクトでどんなタスクがあるかや進捗状況などが一目でわかるように付箋に書き出して壁に貼り付けることが推奨されている。そのようにして、全員が共有できるような仕掛けを定義しているのだ。

しかし、スクラムの枠組みを用意して形だけ実施してもうまくいかないだろう。全員がチームの成果を重視して自ら仕事をやるという意識に変わらなければタスクの遂行すらできなくなるからだ。この意識の変革がチーム力の最大の障壁と言える。

とはいえこの壁を乗り越えた先には、組織の活性化という嬉しい効果も期待できる。実際にスクラムを実施したNECソリューションイノベータの金丸真之氏も効果を認めている。

まず、チーム全体が生き生きとします。これはスクラム開発を実践してみて間違いなく実感したことです。チーム全体が活性化し、個人個人がプロダクトをより良い物にしようと自ら考え、行動するようになります。
引用元:アジャイル開発 ~顧客を巻き込みチーム一丸となってプロジェクトを推進する~ (後編): コラム | NECソリューションイノベータ

メンバー全員が「仕事が楽しくて仕方がない!」と思える職場が待っているかもしれない。そして、その思いこそがチームの原動力となるのだ。


<参考・参照元>
アジャイル開発 ~顧客を巻き込みチーム一丸となってプロジェクトを推進する~ (前編): コラム | NECソリューションイノベータ
アジャイル開発 ~顧客を巻き込みチーム一丸となってプロジェクトを推進する~ (後編): コラム | NECソリューションイノベータ
開発チームを改善するためのスクラムTips(8):5分で分かる、「スクラム」の基本まとめ (1/2) - @IT
The New Workplace Is Agile, and Nonstop. Can You Keep Up? - The New York Times
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