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米国ではテレワークを廃止する動きも? AIが労務管理し、テレワークの質を上げる未来とは

政府主導のテレワーク・デイの導入で盛り上がりをみせているテレワークだが、導入している企業はごくわずかだ。また、米国ではテレワークを廃止する動きもあり、話題となっている。テレワークにはマネジメントや労務管理の難しさという問題があり、これをいかに解決するかが注目される。

導入企業は16%~テレワーク導入の難しさ

政府の働き方改革の目玉ともいえるテレワーク。テレワーク導入に関しては大手企業を中心とした積極的な試みが報道されており、徐々に「新しい働きかた」として認識され始めている。

例えば富士通では、2017年4月から全社的にテレワークを本格導入しており、NECグループのNECネッツエスアイでも、2017年7月からテレワークの全社導入が決定した。しかし、日本企業全体で見れば、その導入状況は芳しくない。総務省が公表した「平成28年度版 情報通信白書」によれば、日本国内でテレワークを導入している企業は16.2%に留まり、「導入予定である」と合算しても2割程度に留まっている。また、8割以上の企業が「導入していないし、具体的な導入予定もない」と回答しており、テレワーク導入への抵抗が感じられる結果となった。

企業がテレワーク導入へ抵抗を感じる要因としては、「導入後のメリットが不透明なこと」や、「テレワーク運用のノウハウが確立されていないこと」などが挙げられるだろう。中長期的に大規模な改革を行う体力を持つ大企業ならまだしも、中堅・中小企業の多くはビッグバン的にテレワーク導入を推進するリソースがない。資本金50億円以上の大企業で導入率が4割を超える一方、1億円未満の中堅中小企業では1割にも満たないという現状がある。

このように、今後テレワークが働き方改革の目玉として機能するためには、中堅・中小企業へどれだけ普及させられるかがポイントだ。では、中堅・中小企業でもテレワーク導入を成功させるポイントはどこにあるのだろうか。


テレワーク成功の鍵は労務管理にあり

中堅・中小企業でもテレワーク導入を成功させるカギとなるのが「労務管理」だ。テレワークの制度設計自体はさほど難しくないものの、いざ運用していくとなれば従業員のパフォーマンスを評価しにくくなるという問題がある。

実際に何時にどこで何をしており、毎日どういった成果を上げているかという「勤務実態」が把握しにくい。つまり、労務管理の精度向上が、テレワークを成功させるために必要不可欠というわけである。こういった労務管理の問題に対し、先進的な技術を用いた解決策が実用化され始めているのだ。


行動履歴分析にGPS。AIとIoTによる労務管理の最前線

テレワーク固有の問題ともいえる「労務管理の難しさ」に対し、GPSやAI、IoTを駆使した労務管理システムを提案しているのが、「AI Workstyle Analytics」を提供している株式会社エルテスだ。AI Workstyle Analyticsでは、屋内の活動についてはBeacon(信号を半径数十メートルに発信し、対象の位置を特定する仕組み)で、屋外の活動についてはGPSを使って従業員の行動を可視化する。これら位置情報データと共に、仕事の状況をより具体的に把握するためPC操作ログも組み合わせ、最終的には位置情報データとPC操作ログを収集したAIが、従業員の勤務実態を分析するのだ。

これまでのテレワーク用ツールは、従業員同士のコミュニケーションをサポートしたり、目標やアジェンダを共有したりといったものが多かった。しかし、AI Workstyle Analyticsでは、従業員個人の具体的な行動データや作業履歴を集中することで、従業員の勤務実態とパフォーマンスを可視化する。これにより、精度の高い労務管理を可能にしている点が特徴だといえるだろう。

だが、こういった仕組みは「機械が人間を管理する」ともいえるため、従業員の心理的ハードルをどう取り除くかがポイントではないだろうか。AIが分析した結果をしっかりと個人の業績評価に結びつける制度設計や、従業員のプライバシー確保、セキュリティに配慮することも忘れてはならない。


日米で異なるテレワークへのアプローチ。日本の未来は?

このように、テレワークの課題となる労務管理を解決するツール自体は、進化を続けている。しかし、テレワーク先進国である米国では、日本とは真逆の流れが生まれていることも事実だ。例えばIBMやヤフーといった名だたる企業が、在宅勤務制度やリモートワークを廃止している。Googleでも禁止こそしていないものの、在宅勤務を推奨しているとは言い難い。これは米国企業の間に「チーム単位での成果」を重視する考え方が広まっていることが理由のようだ。一方、日本では「個人のライフスタイル」や「労働力の確保」、「離職の抑制」などが重視されるため、テレワークを推進している。また、テレワークの認知度を比較してみても、日本では過半数(54.2%)が「テレワーク自体をほとんど聞いたことがない」と回答したのに対し、米国では同じ回答が25%程度に留まっている。認知度は圧倒的に米国のほうが上回っているにもかかわらず、テレワーク自体は縮小傾向にあるのだ。

テレワークの導入や効果測定で日本のはるか先を行く米国では、テレワークが企業の業績向上や働きやすさにそれほど貢献しない、という結論が出つつあるのかもしれない。一方、日本ではどうだろうか。日本は、生産年齢人口の減少や超高齢社会の到来という「労働と人材」に関する大きな課題を抱えている。同様の課題は先進国の多くが抱えているものの、日本の状況は世界でも例をみないほどに深刻だ。テレワークの「労務管理」を強化し、評価や育成の仕組みを確立していかなくては、社会を維持することが難しくなるだろう。

今、日本国内の企業は「労働と人材」に対するマインドセットを変化させる必要に迫られているのかもしれない。


<参考・参照元>
平成28年版 情報通信白書|テレワーク|総務省
テレワークを支援する「AI Workstyle Analytics」の提供開始|株式会社エルテス
テレワーク導入拡大 中小企業での普及が課題 |SankeiBiz(サンケイビズ)
ICTを活用した富士通の「働き方改革」|富士通
NECネッツエスアイの働き方改革について ~7月からテレワーク勤務を全社員向けに本格導入、「テレワーク・デイ」にホワイトカラーの半数が実証実験~ | NECネッツエスアイ
「在宅勤務禁止」は時代錯誤か、必然か:小笠原 隆夫 | 財経新聞

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