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AIによる人事マネジメントが、未来の日本企業にもたらす変化

AIが人間を評価する時代がやってきた。しかし、人格そのものを評価するのではない。企業ごとに評価基準が設けられているだろうが、果たしてその基準は公正かつ適切なのだろうか。そして、その評価によって重大な配置ミスを犯してはいないだろうか。AIによる人事マネジメントが働き方をどう変えてくれるのか考察したい。


AI人事評価の普及の兆しと日本の現状

企業は利益を生みだす能力に長けた優秀な人材確保に忙しく、雇用者は自身のスキルと評価のマッチングを望む。双方のバランスが崩れると、せっかくの縁も活躍の舞台も水の泡となる。人事評価を専門部署が行っている企業もあるが、各部署の役職者や経営者本人が査定している企業も多い。人的評価はしばし、不透明さが問題となってきた。正当な評価は、労働に対するモチベーションを大きく左右する。そこで近年、AIによる人事評価、配置、採用サポートを取り入れる企業が増えている。

アメリカや欧米を中心に増加したHuman Resource Technology(以降HRテックと表記)だが、日本でも2015年あたりからHRテックが導入されはじめた。HRテックの導入により、採用段階から就労中のデータ収集が可能となり、データの解析が進むにつれてミスマッチを減らせる利点が評価されたのだ。積極的にHRテックを導入した業種は、雇用形態が複雑になりがちな製造業や、管理部門が膨大で多くの労働者を抱える大手小売業が多い。専門部署で人事管理をするにも手間がかかりすぎるからだ。

未だ、AIで人を管理評価することに嫌悪感を抱く経営者もいるようだが、データ収集と管理を一括で行える効率的なシステムとして考えてみてほしい。


AI人事マネジメントのメリット

AIによる人事マネジメントは、採用から配置後に至るまでにどのようなメリットをもたらすのか、順を追ってみてみたい。

1. 応募者管理、配置管理で採用コストの削減
人材確保の第一歩として、採用業務が発生する。採用にあたり求人広告費も必要になるだろう。企業としては求人コストを無視できない。そこでAIに求人媒体と面接採用率の統計、データベース作成、予測をさせ、部署ごとの求人媒体の選別など、採用業務の段階でコスト削減を実現させるのである。
また、採用者の配置後の勤務状況を継続的に管理することで、スキルや人柄に応じた適切な配置を採用段階で可能にする。

2. 評価採用基準をフラットにできる
面接官ごとに評価が異なる現象を、AIの介入によりフラットにすることが可能だ。筆記試験や職歴、学歴などの情報を集めることで、採用基準の平均化をはかれる。

3. 私的な不当評価の防止
AIならではのメリットだ。データをクラウド化することで情報はオープンになり、私情や縁故由来の過大評価、過小評価を防止することができる。

4. 出退勤管理
タイムカードと連動することで、出退勤の管理が簡素化するだけでなく、残業状況の把握や給与算出がスムーズになる。
出退勤管理と給与算出システムの連動に目新しさはないが、労働者の心身の変化の兆候を察知する役割も担う。週明けに休みがちになったり、早退が増えたりなど、離職や不調の傾向をいち早く見抜くことで、カウンセリングや労働契約内容の改定など双方の歩み寄りが可能となる。

以上、4つのメリットを挙げたが、デメリットも否定できない。


AI人事マネジメントのデメリット

どれだけテクノロジーが進化しても、人間にしかできない普遍的なこともある。

1. 人的評価による、モチベーション向上など
ひとは誰かに憧れを抱くことがある。恩を感じ、恩を返すことをモチベーションとする者もいる。この上司の下で働きたいと配属先を希望するケースも否めない。
つまり、「このひとに評価されたい」という欲求を満たすことで、労働者の生産性向上やモチベーションの向上が実現することがあるのだ。よって、AIにはできない精神的ケア要素を否定することはできない。

2. データ収集までに一定時間がかかる
企業規模を問わず、データ収集には時間がかかる。少なくとも1年は必須だ。さらに過去のデータを参考に内部編成を行い実験的な組織での運営まで試みると、5年、10年と長い目で見ていきたい。

だが、企業とは長期的な戦略を掲げているものである。将来を見据えたAI人事マネジメントの導入で、早くも実績をあげている企業も増えている。


米ウォルマートの実績

欧米では小売り世界最大手の米ウォルマート・ストアーズなどがHRテックを導入して実際に使い始めているという。クレディ・スイスは転職しそうな人を対象にこの仕組みを使い、最適な職場を割り出して異動させた。これにより、離職者を約300人減らすことに成功した。職場のミスマッチが減り働きやすい環境づくりに生かせた。
引用元:AIで人事部いらず?データで最適配置 ビズリーチやヤフー、人との役割分担探る

離職傾向が高い業種においては、評価基準の見直しだけでなく、離職者の動向をあらかじめ察知することが鍵となる。個人適性を活かすことで精神衛生環境を充実させることも可能となり、人事教育プランの費用対効果分析をはじめ、有意義な人事マネジメントを可能にするのだろう。

大手の成功例だが、中小企業も次々と実績をあげている。これらの成功例は、日本の人事マネジメントにも良い刺激となる。


人事マネジメントの未来

AI人事マネジメントが普及することにより、各企業の人事評価基準が明確化するだろう。実績公開することで、学歴フィルターなど悪しき習慣が明るみになる可能性もある。求職者は応募企業の人事評価システムをあらかじめ理解、納得した上で採用面接に挑めるようになり、企業側は応募者が求人内容に適切な人材であるかの判断基準に、AIの助言とも言える分析データを活用できる。

採用から配置までの段階で、「人柄」という項目が削除されることはないだろう。なぜなら、ひと対ひとの関わりが社会なのだから。よって、人事評価をメインとした人事部が機能しなくなることはないが、大手企業の採用業務には大いに活躍することだろう。

また、瞬時に適切な人員配置をしなければならない人材派遣業にも適している。すでに導入している人材派遣業もあるが、今後は企業の規模を問わず、AI人事マネジメントシステムは、名を変え・形を変え、日本の企業にも浸透していくだろう。

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