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リテールオートメーションの普及により、10年間でアメリカのリテール人材の最大750万人が失職か

2017年5月、コーナーストーン・キャピタル・グループがリテールオートメーションに関するレポートを発表した。それによると、リテールオートメーションの普及により、今後10年でアメリカのリテール人材の最大750万人が失職する恐れがあるというのだ。
リテールオートメーションの普及の可能性と、その未来を考察する。


コーナーストーン・キャピタル・グループのレポート

アメリカのベンチャーキャピタルのコーナーストーン・キャピタル・グループがショッキングなレポートを発表した。
それによると、リテールオートメーションや高度なEコマース環境の実現により、現在1,600万人いるアメリカのリテール人材のうち、今後10年で最大47%、約750万人が職を失う可能性があるというのだ。

特にインハウス系の人材が職を失う可能性が高く、キャッシャー、ストアスタッフ、クラークなどの仕事が相当程度、失われるとしている。一方、営業、事務、出荷作業員などのバックエンドスタッフの職はある程度残されるとしている。
同レポートはまた、インハウス系では女性が失職する可能性が高いとしている。
アメリカのリテールで働くキャッシャーの73%が女性であるが、会計は最も容易に自動化が可能だと考えられているためである。

オートメーションによるキャッシャーのリプレースは日本でも現実に進みつつある。
私事で恐縮だが、筆者は東京都目黒区に住んでいる。近所の2カ所のスーパーで最近、こぞって自動会計処理システムが導入された。
それまではレジ打ちとキャッシャーが二人1組で仕事をしていたが、自動会計処理システムが導入された事でキャッシャーは必要なくなった。筆者の見たところ、残るレジ打ちスタッフもリプレースされる可能性がある。


キャッシャーの仕事が最も危うい?

コーナーストーンのレポートは、現在人間が行っている会計の自動化が特に急速に進むと見ている。
リテールの会計は最も簡単にオートメーション化できる分野とされ、上述したように日本でも自動化が進みつつある。
通貨の仮想化が進むと予想される今後は、物理的な通貨を介さずにリアルタイムでデビットやクレジットをする自動ペイメントシステムが一層一般化していくだろう。

電線で電話同士をつなげていた時代、電話交換手という仕事が存在した。
電話のかけ手と受け手とを物理的につなぐ電話交換手は、当時の若い女性のあこがれの仕事だったと昔の記録に残されている。現代のキャッシャーが会計の自動化により仕事を失いつつあるが、将来には、キャッシャーがかつてあった職業として懐かしがられる日が来るのかもしれない。


無人化を目指すAmazon Go

ところで、会計を自動化してキャッシャーをゼロにするにとどまらず、Amazonはインハウススタッフ完全ゼロのスーパーマーケットを開設している。
Amazon Goと名付けられた店にはキャッシャーも案内係もフロアスタッフも存在しない。

スマホに専用アプリをインストールし、センサー付きのゲートをタッチして入店する。コンピュータービジョン、センサーフュージョン、ディープラーニングなどの技術を使ってピックアップされたアイテムを自動認識し、アプリのバーチャルカートに追加する。ピックアップされたアイテムを元の棚に戻せば、センサーが認識してカートからアイテムを削除する。

ピックアップが済んだらゲートを出て買い物終了。
決済はアマゾンのアカウントに登録したクレジットカードで行われる。レジの列に並ぶ必要もなく、そもそもレジ自体が存在しない。自由に入って、欲しいアイテムをピックアップ、あとは勝手にGO。
まさにAmazon Goだ。

Amazon Goは現在、シアトルのAmazon本社敷地内でAmazon社員向けにベータ運営が行われている。
Amazon Goは2017年中にも一般向けの営業を開始するとしていたが、現在のところ、技術的な課題をクリアするために時間がかかっているとしている。関係者は、2018年にもAmazon Goの一般向け営業が開始されると見ている。


リテールは二極化の時代へ

いずれにせよ、インハウス系の仕事を中心に、リテールオートメーションが人間の仕事の相当分をリプレースしてゆく事は間違いない。
特にコンビニエンスストアやスーパーマーケットなどのコモディティグッズを販売する店のインハウス系の仕事は、かなりの部分がリプレースされるだろう。
今から五年もすれば、インハウススタッフゼロのコンビニエンスストアが、都市部を中心に散在していたとしても不思議でも何でもない。

一方で、専門性の高いアイテムを扱う店や、高度な知識やスキルが要求される領域では、人間が引き続き仕事を担当すると予想する。
筆者の地元にプロのパティシエを相手に商売をしている洋菓子材料専門店があるが、特殊な材料や用具を求めて日本中から人が集まって来ている。作るケーキの種類やレベルに合わせて素材などを提案してくれるので、他では考えられない買い物ができるという。

要するに、今後のリテールの世界は、限りなく無人化されたコモディティ系リテールと、高度に専門家された専門リテールとに二極化してゆくのだろう。
これは良い悪いの問題ではなく、テクノロジーの進化と、テクノロジーを活用したビジネスの経済合理性の問題だ。つまり、良くも悪くも新しいカルチャーなのだ。
仕事を奪われる事になる人には気の毒だが、人間は時代に合わせて何らかの新しい仕事を得続けて来た。今回も例外ではないと、筆者は信じている。


<参考・参照元>
Retail Automation: Nearly Half of all Retail Jobs Could Be Lost | Fortune
Amazon.com: : Amazon Go
Amazon Go grocery store opening delayed due to technical issues - Business Insider

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