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日本マイクロソフトが実現してきた「働き方改革」、その実際の成果とは?

テレワークからAI活用へ

日本マイクロソフトは現在に至るまで、働き方改革(当初はワークスタイル変革)に取り組んできた。その起点は2011年度に現在の品川オフィスに移転時にさかのぼる。オフィス環境の刷新や制度・人事ポリシーの見直しなど自社の取り組み行うと同時に、2014年から外部へ拡大。32法人と共に「働き方改革(テレワーク)週間」を開始した。2015年の取り組みは651法人、2016年には833法人と賛同する企業は増加して行った。2017年は同様の取り組みを行わず、「日本マイクロソフト 働き方改革ムーブメント」として、継続的に働き方改革の活性化を目指した活動に切り替えた。
日本マイクロソフトが取り組んできた働き方改革。2017年移行は「働き方改革第2章」として「日本マイクロソフト 働き方改革ムーブメント」に移行した

日本マイクロソフトの働き方改革に対する取り組みは多岐にわたるが、筆者が取材してきた範囲で最初に意識したのは、2015年4月に同社が開催した「Skype for Business」を用いた働き方改革支援の発表会だ。Skype for Businessはインターネット経由でIM(インスタントメッセージ)やWeb会議などを実現し、旧Microsoft Lyncや旧Microsoft Office Communicatorの名で知られたツールだが、多数の企業で採用が増加する状況を踏まえつつ、「いつでもどこでも最適に活躍できる環境を生み出す」と、日本マイクロソフト 執行役 常務 パブリックセクター担当 織田浩義氏(当時)は説明する。

言わずもがなIMやTVカメラを使ったWeb会議は物理的な距離を無意味にし、従業員の居場所を問わずに濃厚な意思疎通が可能だ。他方で時差の問題が発生し、夜半や早朝に電話会議を実施するグローバル企業が増えたため、新たな問題が発生していると言わざるを得ない。ただ、裁量労働制が的確かつ労働者の利益につながる仕組みで施行するのであれば、テレカンに参加して睡眠不足なんて話は聞こえてこなくなるだろう。
日本マイクロソフト 執行役 常務 パブリックセクター担当 織田浩義氏(2015年当時)

資生堂が開発したテレワーク用アプリも登場

次に目を見張る取り組みは資生堂が主体となり、日本マイクロソフトが開発協力したテレワークアプリ「TeleBeauty」である。資生堂の調査によると、テレビ会議を行う際の化粧や自室がWebカメラに映り込んでしまうという、女性特有の問題が明確化した。そこで資生堂のメーク技術や1999年から店頭運用してきた化粧シミュレーション技術などを活用し、Skype for Businessに映し出される自身の顔に、自然なメークや年々の流行、シャープ、かわいらしさと特徴的なメークを施す機能や、顔色が悪く見えることを避ける機能などを備える。

このような取り組みはグローバルで見ても類似例がなく、日本マイクロソフトの担当者が米国本社に取り組みを説明したところ、「Very Cool!とリアクションがあった」(織田氏)という。筆者は男性のため、このような悩みを抱えることはないが、テレカン1つ取っても、「早朝や深夜にそのためだけに身なりを整えるのが大変」(資生堂調査結果)という声は少なくないそうだ。筆者が本機能を使うことはないにせよ、技術が生活を刷新する好例だと感じた。
資生堂が開発した「TeleBeauty」。Webカメラに映る女性の仮想メークを可能にする

AIによる分析結果で労働スタイルを可視化

そして本格的な導入を改めて感じたのが、Office 365 にAI(人工知能)を用いたソリューション「Microsoft MyAnalytics」の発表会である。MyAnalytics は Office 365 のプロファイルを管理し、メール送受信や会議利用時間など個人の活動を整理する Office Delve を背景に、AIによる分析結果で労働スタイルを可視化するソリューションだ。2017年2月に日本マイクロソフトが開催した同発表会では、自社の利用方法として、「会議やメール、共同作業といった業務効率の向上や、他部門や他社との共同作業が重視するなか、自身のコミュニケーションに対する気づきに活用している。また、高品質のアイディアを生み出す時間を創出し、KPI(重要業績評価指標)の可視化による(働き方の)質が向上した」(日本マイクロソフト コーポレートコミュニケーション本部 本部長 岡部一志氏)と説明する。

残念ながら個人事業主である筆者は MyAnalytics の恩恵に与ることはないが、自身がPCの前でどれだけキーボードを叩き、電車やバスを乗り継いで取材に駆け回っているかを可視化できるのであれば是非とも導入したい。MyAnalytics はホワイトカラー向けソリューションだが、IT技術が進めば筆者のようなファーストワーカー向けにも働き方改革ソリューションが搭乗するだろう。
Office 365 Enterprise E5に含まれる(単独購入も可能)「Microsoft MyAnalytics」

数字が証明する働き方改革の顕著な成果

このように多くのIT技術で実現してきた働き方改革だが、気になるのはその実績ではないだろうか。まず2015年度に日本マイクロソフトが精査したところ、ワークライフバランス満足度(社員満足度調査結果)は+40%、事業生産性(社員1人あたりの売り上げ)+26%、働きがい(Great Place to Work設問)+7%とプラスの結果を打ち出した。

他方で残業時間は-5%、旅費/交通費は-20%、女性離職率は-40%、ペーパーレスは-49%という数値を示している。2016年11月には自社社員に対するテレワーク週間2015の調査結果として、テレワーク環境が仕事や生活での必要性が76%から94%に上昇し、申請が手間なので利用しづらいという認識は18%から17%へ低下。特別な事情を持った社員しか使えないといった誤った制度理解は15%から11%へ低下した。
同取り組みへの参画企業に対する調査では、「全体の約3割が10%以上の経費削減効果」「過半数の企業に労働時間の削減効果が見られ、70%の削減を実現した企業もあった」「全体の5割以上が一定の生産性向上・効率化効果を認識」「4社に1社がテレワークで20%以上の売り上げ・利益向上を期待できる」と回答する。

2017年4月の発表では、MyAnalyticsの活用により会議時間27%の削減(ファイナンス部門)、作業に集中できる時間は50%増加(人事部門)。その結果として日本マイクロソフトは、人事・ファイナンス・マーケティング・営業4部門の4カ月間合計で3,579時間の削減に成功し、従業員2,000人相当の残業時間に換算した場合は7億円/年の削減。さらに従来型PBX(構内電話交換)を使い続けた場合とOffice 365 PSTNへ移行した場合を比較して、「5年間で27%。27億円削減(約5万人の企業を想定して換算)が可能」(日本マイクロソフト 代表取締役 社長 平野拓也氏)と同社はアピールした。

現在、日本マイクロソフトの社長室には可動式テーブルを設置し、会議参加者は立った状態でミーティングを行っている。その成果として日本マイクロソフトは、「皆『お客さん状態』から抜け出し、会議の終わりにはSurface Hubの周りになって議論を進む。予定時間より会議が終わるため、効率的な会議進行が可能になった」(平野氏)と説明する。既に社内は固定席を設けないフリーアドレス化するなど、多面的に快適な労働環境の実現を目指してきた。同社の働き方改革は数字の上でも労働環境の面でも成果を上げている。冒頭で述べた「日本マイクロソフト 働き方改革ムーブメント」を通じて、自社自身の働き方改革における経験や知見を共有するため品川オフィスを来訪者へ門戸を開き、2018年2月末には来訪者数が100万人を突破した。今後の日本マイクロソフトの働き方改革に対する取り組みは、日本のビジネス環境を変えて行くだろう。
日本マイクロソフトの社長室は2016年度から、対面用や会議用テーブルが可動式のものに置き換えた。その効果は同社代表取締役 社長 平野拓也氏も実感したと語る

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