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急がれるブロックチェーン技術者の育成、日本は出遅れている?

ツイッターにもフェイスブックにもインスタグラムにも、管理団体が存在する。しかし、ブロックチェーンの世界では、管理者が存在しなくても、参加者が自律的に行動することで成立する。

現在のリアルな世界とあまりにも概念が違いすぎるため、技術者の育成が難しい面がある。


さまざまな可能性が期待されていながら実用化が進まないブロックチェーン

ブロックチェーンは、「すべての仕組み・サービスは運営者がお金をかけて集中的に管理するもの」という従来の常識を大きく変えるものだった。
すでに実用化され、普及しているのが仮想通貨だ。円やドルといった国が発行する通貨に代わる「民主的な」通貨として、世界中に流通することが期待されている。現時点では仮想通貨はむしろ金融商品と見なされ、お店で使う人はそれほど見かけない。

しかし、将来世界のどこでも仮想通貨が使える社会になったら、中央銀行ですら不要になるほど産業構造を大きく変える可能性を秘めている。
ブロックチェーンは、情報をブロックに分割し、ブロックを分散し、自律的に保持する。データを改ざんしにくく、障害に強いシステムが、参加者の手によって運営される。コストが抑えられるのも魅力だ。

もともとブロックチェーンは、ビットコインのための技術として設計された。
しかし、今はさまざまなデジタルデータが扱えるように進化している。アメリカでは、AIとブロックチェーンを活用したビジネスを展開するフィンテック企業がどんどん誕生しており、いずれこれらの企業が日本に上陸したら既存の金融機関は競争力がなくなるとさえ言われている。

メガバンクがこぞってキャッシュレス決済や仮想通貨に取り組むのも、フィンテック企業の台頭による危機感の表れだ。
2020年、ブロックチェーン技術に関連する市場は、全世界で3.1兆ドルに拡大するとされているが、既存のシステムを全く新しい概念のブロックチェーンに置き換えることは、決して簡単なことではない。日本においては、さらに人手不足という壁がある。

そんななか、不足する技術者を養成する取り組みが始まっている。


ブロックチェーン推進協会では「ブロックチェーン大学校」を開設

ブロックチェーン推進協会(BCCC)は、ブロックチェーンの未来を確信する有志の企業・団体が情報を交換し、切磋琢磨しながらブロックチェーン技術の普及啓発を行っている。インフォテリア株式会社代表取締役の平野 洋一郎氏が代表理事を務め、200社以上の企業・団体が参画している。

BCCCのメンバーになると、他のメンバーが取り組む実証実験への参加や、海外のブロックチェーン関連団体へアクセスするチャンスが期待できる。
2017年7月には、円の価値と連動する仮想通貨「Zen」の発行も開始した。価値が高騰する仮想通貨のアンチテーゼとして、広く安心して使える通貨として流通することを目指している。

BCCCでは、不足するブロックチェーン技術者を養成することを目的として、2016年ブロックチェーン大学校を開講した。
日本ではブロックチェーンの技術者が不足しており、情報のほとんどが英語だ。学ぶ環境の充実を、というニーズに応え、日本語の教材を整備した教育コースを用意している。

例えば2017年に開催した「ブロックチェーンブロンズコース」では、プロフェッショナル養成を目的として、1回2時間、全8回コースでブロックチェーンの技術的な仕組みを徹底的に解説する。そのほか非エンジニアがブロックチェーンを利活用するポイントを体系的に学ぶ「ビジネスブロンズコース」やビギナーコースもある。

学長であるジョナサン・アンダーウッド氏は、アメリカのビットコイン研究者で、多数のビットコインウォレットプロジェクトに参画している。
2018年にはブロックチェーン技術者の育成に特化した「教育部会」と「技術応用部会」を新設した。教育部会ではブロックチェーン大学校と連携して2018年2月から「ブロックチェーン技能検定」を実施予定だ。


第一線で活躍する技術者を招き、実践的なセミナーを開催する「Blockchain EXE」

月1回東京で開催するイベントなどを通じ、業界・企業の垣根を超えて技術の習得を目指す取り組みをしているのが「Blockchain EXE」だ。

クーガー代表取締役の石井敦氏とKDDIの茂谷保伯氏が主宰し、第一線で活躍する技術者による実践的な内容のセミナーを開催している。2018年1月には、初の海外ミートアップをニューヨークで開催した。

ブロックチェーン技術のひとつである、イーサリアムを作ったジョセフルービン氏が創業したコンセンシス社と、日本からKDDI、日立製作所、クーガーが参加し、スマートホームのテーマで意見交換を行った。こうした海外交流も含めたコミュニティの形成に取り組んでいる。

クーガーは、本田技術研究所にAI学習シミュレータを提供し、アマゾンが主催するロボットコンテストで上位チームを支援するなどの取り組みで知られる。
KDDIはクーガーと共同で、携帯電話の修理業務をブロックチェーンに適用する実証実験を開始するなど、ブロックチェーンに意欲的に取り組んでいる。


大手企業のブロックチェーン事例の増加が待たれる

技術者の養成には、教育環境の充実と、学んだ技術を実践するプロジェクトが必要だ。
大手企業がブロックチェーンの実用化に積極的に取り組めば、多くの技術者が関わって技術力を磨くことができるようになるだろう。

ブロックチェーンの特性を十分に引き出したビジネスコンセプトと、その思想をシステムに反映できる技術力があれば、人口が減少し、テクノロジーによる圧倒的な革新性が求められる日本の社会にとって、大きなプラスとなるはずだ。


<参考・参照元>
自己主権型アイデンティティとは何か~ブロックチェーンがもたらす新たな可能性 | InfoComニューズレター
ブロックチェーン推進協会が「ブロックチェーン技能検定」開始、年間300名受験者めざす:EnterpriseZine(エンタープライズジン)
なぜ、いま「モビリティ×ブロックチェーン」を考えるのか? Blockchain EXEからみえる未来|WIRED.jp

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