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プログラミング教育の必修化に環境整備は間に合う?西伊豆町や柏市の先進的実例を紹介

2017年3月に公示された「新学習指導要領」において、小学校におけるプログラミング教育の必修化が明記された。

科学技術ならともかく、その一部にすぎないプログラミング教育がなぜ小学校で必要なのか、疑問に思う人も多いだろう。プログラミング教育の狙いは何か、必修化する2020年までに環境整備は間に合うのか。


2018年4月からいよいよ移行期を迎えるプログラミング教育の課題

政府の推進するプログラミング教育とは、コーディングスキルを得ることではない。コーディングを通じてプログラミング的思考を育てることが目的だ。
プログラミングは、複数の要素から構成されており、要素を分解してどのような制御を持たせたらよいのかを考える「論理的思考」が必要となる。プログラミングに必要となる思考を育み、コンピュータをよりよい未来にするために活用とする意識を向上させる狙いがある。

新学習指導要領では、通常の科目と融合させてプログラミング教育を展開することが明記されている。
例えば、理科では、電気製品にどのようにプログラムが組み込まれて動作しているのかを教える、音楽では、ICTを活用して音楽を作っていくといったことがあげられる。

政府がプログラミング教育を推進している背景には、諸外国では初等教育におけるプログラミング教育が急速に普及している一方、日本では限定的な取り組みに終わっていることにある。

初等教育におけるプログラミング教育の必修化については批判もある。同志社大学教授の三木光範氏は、「物事にはそれを学ぶ最も適切な年齢がある」として、プログラミングは、論理的思考が長けている人材であれば、大人になってからでもマスターできるとしている。

一方で、教育用のプログラミング言語「Scratch」を開発したマサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボ教授のミッチェル・レズニック氏は、「書くこと(ライティング)の学び」と「コーディング」は同じであるとし、コーディングを他の教科に活用することができれば、良い学びになるとコメントしている。

教育現場としては、異次元の内容がカリキュラムに投げ込まれたと考える向きもあるだろう。
ネットワークにつながる開発環境を構築するだけでも、資金、ノウハウ、人材がいずれも不足しており、それ以前に何をどうすればよいのかわからない学校も多い。先進的な取り組みをしている小学校では、どのように環境を整備しているのか。

次章からはその取り組みを紹介しよう。


地域一体となって教育を行う西伊豆町立賀茂小学校

総務省では、「若年層に対するプログラミング教育の普及推進」事業を2016年・2017年に実施している。
すべての子どもたちが質の高いプログラミング教育を受けることができるように、地元の人材をメンターとして育成し、教育コンテンツやノウハウをインターネット上で共有する環境を整備し、放課後の時間を活用して教育を行う取り組みだ。

この事業の実証校として選ばれたのが西伊豆町立賀茂小学校だ。同校では、午前8時15分から給食の時間までに5時間目を終える「午前5時間事業」を実施している。
そして、ゆとりのある放課後15時以降に行うのが「パソコン学習」だ。

注目するべきは、パソコン学習が学校の授業の枠組みで行われるのではなく、地域ぐるみで教育する形をとっているという点にある。
パソコン学習に学校側は関わらず、研修を受けた元教員、保護者、ボランティアがメンターとして指導にあたる。地域の力を借りることで、新学習指導要領への移行対応に追われる教員の負担を軽くする狙いもある。

2017年10月からは、5・6年生を対象とした組み立て式教育ロボットを使った講座が始まった。ロボットはレゴ社の製品で、アームや車輪の動きを制御するプログラムを組むことができる。
この講座のテーマは、「防災」だ。コーディングとロボット制御の基礎を習得後、導入として、この講座の監修を担当している小山真人静岡大教授が、地震や津波の仕組みを解説し、どのような被害が発生するのかを解説する。その後生徒たちは応用課題に取り組むという流れとなっている。

通信教育事業、小中高生向け教室事業などを展開するZ会が作成している。
講座に「ジグゾー法」を用いた共同学習を取り入れているのが特徴だ。ジグゾー法とは、1人では十分に答えの出ない課題に対して、まず課題を分解して生徒に振り分け、生徒が分解したものに対して自分なりの答えを出す。

その後グループ学習で、自分で出した答えを教え合い、全体の課題解決に向けて答えを探っていくというもの。手間暇がかかるが確実に効果があがるとして注目されている学習法だ。
講座で使用しているロボットは、LEGO社の教育用ロボット「マインドストーム」だ。通常のレゴブロックの他に、センサー、ギア、タイヤ、そしてプログラムを組み込めるブロックがあり、組み合わせて形を作っていく。

生徒たちはモノを作る楽しさと、モノを制御する楽しさを体験しながら、プログラミングを学び、プログラミングが社会にどのように活用されるのかを学ぶ構成となっている。


教育委員会の強力なリーダーシップで環境を整備した柏市

千葉県柏市は人口40万人の大都市だ。その柏市で2017年、市内全42校の小学4年生、約3,600人全員にプログラミング教育を実施した。
授業は総合的学習の時間2時間を使い、プログラミング言語「Scratch(スクラッチ)」を利用して実施される。

Scratchは、前章で紹介したMITメディアラボの研究チームが開発したプログラミング言語だ。マウス操作と簡単なキーボード入力でプログラミングができるため、世界中で教育のために活用されている。

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