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インターネットが簡単になっているという事[コラム]

かつて、インターネットの設定ができれば、会社のネットワークを任されたり、女の子が部屋に上げてくれたりした。
そのくらい面倒くさいものだったのだ。iModeがうっかり成功してしまったのも、インターネットは難しいものというイメージがあったからだろう。

しかし、今、インターネットの接続の設定で悩む人はほとんどいない。パソコンでできることは、スマホでもできるようになって、デジタルのハードルはとても下がっている。
この状況が、とても良いモノであるという自覚は、今後のデジタルビジネスにとって重要な事なのだ。


インターネットに一般から繋ぎやすくなったのは、1994年あたりからだったけれど、だからといって一気に普及した訳ではない。
それどころか、1996年になっても、日本語のホームページはまだまだ少なく、インターネットに繋ぐこと自体がイベントのような扱いだった。

そもそも、パソコン自体が大して普及していなかったのだから当たり前だ。
当初、インターネットに繋ぐ設定は中々面倒くさい上に、使っているパソコンやハードウェアによって設定方法が違っていたりして、インターネットへの繋ぎ方の記事を書きながら、これでは普及には随分時間がかかるだろうと思っていた。

そのインターネット自体も、海外の製品を直接買えるのと、アダルト画像が簡単に入手できること、自分のホームページや伝言板が、個人でもほぼ無料で作れることくらいしか面白いこともなく、そこから無理やり面白そうなものを探して紹介記事を書いていた。
面白いサイトの紹介がお金になっていたのだから、変な時代だ。

今と比べて、良かったのはテレホーダーに契約していれば、今よりも随分通信費が安かったことくらいだ。スマホでのネット接続が主流になってからも、しばらくは、ネット接続料金は基本データ量無制限だったから、電話に比べれば随分安かった。
現在、電話代はほぼ無料になり、その分、データにかかる料金がやたらと高くなったのは、明らかにユーザーの足下を見ているだけの商売だが、それはまた別の話。

ここで言いたいのは、インターネットは参加者が少なかった頃は安く、しかし面白くもなかったという事。
ツイッターにしてもサービスが開始された当初は、本当に、パソコンを日常的に使っているユーザーの中の、さらに一部のアーリーアダプターが、使い方を模索しながらちょこちょこやっていただけで、「このサービスは気楽でいいけど、ここに人が集まる未来は本当にあるのかな」とみんなが思っていたのだった。

そして、今、パソコンを買ってきてインターネットに繋ぐ作業は、もう驚くほど楽になった。楽になったというか、ほとんど設定が要らなくなった。
プロトコルをインストールする必要があったアレは、一体何だったんだというくらいの簡単さ。それこそ、Sonyの「ナスネ」なんて、単にスマホと一回、無線LANで接続するだけで、外出先からも、録画した番組を見ることができてしまう。

かつては専用線と固定IPが必要だった上に、ファイアウォールを越えるための設定も面倒くさかったのに。
といっても、このくらい楽に、ルータ越しの接続ができる機器はまだ少ないのだけど、これが出来るということは、それは遅かれ早かれ一般化する。
かつて、ネットの設定してあげると言って、何十人の女の子の部屋に上がり込んだ私たちのようなことは、今はもうできないし、今後はもっとできなくなる。
便利になるとはそういうことだが、このくらい楽じゃないと、普及しないのも当たり前なのだ。

インターネットがスマホで普及したのは、インターネットに繋ぐことが前提で作られていて、設定が要らなかったからだし、その意味で、インターネットを携帯電話のネットワークの中で飼い殺しにしようとしたiModeを始めとする各キャリアの携帯電話ネットワークが、インターネットの普及を大幅に遅らせたこと、インターネットにも料金がかかって当然という錯覚を与えたことの罪は大きい。
iModeがビジネスとして成功したせいで、まるで成功事例のように思われている事が現在のネットビジネスの足を引っ張っているということは自覚した方が良いのだ。

現在の、会員制のニュースサイトなどの、記事を読むのに無料登録させるスタイルも、それが、ファンクラブや何らかのサロンのように、あらかじめメンバー自体も選別した上で、知らないユーザーが入ってこないようにするスタイルなら良いけれど、不特定多数に向けての囲い込みマーケティングは、iModeの成功が生んだゾンビのようなものだという自覚は持っていても損はない。

結局、プラットフォームやサービス自体は、楽になれば普及するのだ。スマホやタブレットがパソコンよりも普及してしまうのは、そういうことなのだ。
そして、入り口での手続きと、普段利用するインターフェイスさえ楽ならば、後は、多少難しい事でも、面倒な事でもユーザーは平気でついてくる。
それどころか、内部で創意工夫の芽を育て、面白いものを勝手に出してくるのが現代だ。

早坂吝のミステリ「探偵AIのリアルディープラーニング」は、探偵として作られたAIと、犯人として作られたAIを軸に、実際の事件をAIが解くとどのようなメリットがあり、どのようなトラブルが起こるか、AIが犯罪計画をするとどのような形になり、どういう隙ができるのかを、現在よりもほんの少しだけ進んだ世界を舞台に描いた小説。

そこには、当然のようにフレーム問題も、シンボルグラウンディング問題も扱われる。こういう物語がでてくるということは、AIの普及ももうすぐなのだろう。
既に、SFではなく、ミステリで素人が扱うAIが登場するのだ。つまり、ポイントはインターフェイスなのだ。

設定や導入にお金がかからず、楽にできれば、後は、どうにかなる時代になっているはずなのだ。iModeのような、強引に時代を戻すようなやり方ではなく、デジタル社会が進んでいけばと思う。(納富廉邦)

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