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HR Techを使えば企業も社員も幸せに?AIで組織づくりもバランスよく

今後10年で、500万人を超える労働人口の減少が起こると言われている日本。優秀な人材の確保と育成が、企業のこれからの重要な経営課題になるだろう。そこで注目されているのが、クラウド、人工知能AI)やビッグデータを活用したHR Techだ。これからの組織作りにAIはどのように影響するのかを考察していきたい。


2015年に登場した“HR Tech”

米国で生まれたHR Techは、2015年に日本にも上陸しその年は「HR Tech元年」と言われた。この手法は今では日本でも徐々に普及しつつある。その背景には、このサービスを提供する企業が増えたこと、またクラウドサービスにより導入コストを抑えられることにある。

HR Techによるサービスは、大きく3つに分類することができる。今までは人の手だけで行われていた人事にAIを導入することでどんな影響があるのか、またどのようなメリットがあるのか、さらに今までの人事システムとはどのような違いがあるのか、HR Techのシステムの紹介と導入事例を紹介しよう。


採用

これまで、採用や人事は良くも悪くも人の「主観や経験」で判断されてきた。面接時、着席するまでの数秒でその人柄を判断する人事のプロももちろんたくさんいるだろう。ただ、ここに客観的判断基準がないことが問題とされることもある。また、人は自分に似た人に共感を覚えやすい傾向にあるため、企業において採用する人材に偏りが出てしまい人事配置しづらい結果になることも考えられる。また、現在、Excelやメールを使って採用管理をしている企業はたくさんあるだろう。しかし、採用数が増えたり、募集する職種や雇用形態が多様になってくると、採用管理や進捗状態の把握も煩雑になりむずかしくなる。そこで、システムを導入することで面接にかかる工数や人件費を大幅に削減することが可能となるのだ。

2015年NECが採用のために開発したAIシステムは、人材紹介会社3社で導入されたことで話題となった。過去の入社試験を受けた2000人のデータを分析し、どんな人物を採用してきたのかをAIが学習するシステムである。学習結果をもとに、履歴書を分析し、採用方針に合う人材を見出し照合まで行う。AIを導入することで、曖昧な判断基準をなくし、一次試験までの人事の負担を軽減が期待される。


適材適所な適正配置

「年功序列」を基本的な考えとする日本では、優秀な人材だとしても入社したての若者を即座に管理職に昇進させることは珍しいのが通例だった。しかし、労働人口が減少している昨今、優秀な人材を手放さないためには、適正な人事をすることが重要となる。

株式会社ミライセルフは、心理学に基づく適正クイズとAIを用いて、社員の価値観をもとに適正を分析・判定するサービス「mitsucari(ミツカリ)」を2016年から開始した。ミツカリを利用すると、価値観がフィットした組織づくりができ、組織としての効率のアップが期待できるというものだ。

ミステリーショッピングリサーチ(覆面調査)を起点とし、クライアント企業・店舗の業績向上に取り組んでいる株式会社MS&Consultingは、社員80名でミツカリに回答。「自分とパーソナリティータイプが近い人、マッチング度の高いチーム」には多くの人が興味を寄せた。以下は同社採用チームリーダーの西山氏の言葉である。
将来的には人事配置の参考情報になると思いますし、「社内勉強会や研修のグループ分け」をミツカリのマッチングで出してみるのも面白い。結果を見て「なるほど、そういうふうに説明できるか」と感心させられました。いま株式会社MS&Consultingの社員数は110名ぐらいですが、部署や人数が増えるほどコミュニケーションを取る頻度も減ってきますので、密度が大事になってきます。ミツカリの結果を共有することで互いの理解が早まったり、コミュニケーションのきっかけになったりすることも考えられるのではと感じています。
引用元:ミツカリ 事例詳細


人材育成やリテンション

今後、日本企業において、最も重要になる人事課題の一つとして「リテンション」があげられる。入社して、数年かけて教育してきた人材が離職してしまう。それは、費用だけでなく育成にかけた時間を考えても決して軽い損害とはいえない。そこで今、社員とのエンゲージメント(組織の成功への貢献に対する意欲)の実現に関心が寄せられている。

2012年にIBMが買収した「Kenexa」は、日本国内での認知はまだ低いが、IBM Watsonを搭載した人事データの分析に特化したシステムだ。「社員のエンゲージメント(≒愛社心)を数値化し、評価するHRツール」として高い評価を得ている。IBM Kenexaを導入することで、社員の雇用時から通常勤務時、退職時までの全プロセスにおけるエンゲージメント調査を行い、タイムリーかつ効率的・効果的なリテンション施策を講じることができる。エンゲージメントの低い人材をあらかじめ想定できてきれば、コミュニケーションを増やしたり、部署を移動させたりすることで離職を未然に防ぐことも可能となる。仮に退職が防げない場合でも、後任の配置や採用に向けて早くから対策を取ることもできるだろう。

Johnson Controlsは、自動車残業・ビルテクノロジー領域の世界的巨大企業である。Johnson Controlsでは、IBM Kenexa導入後、社員のエンゲージメント(≒愛社心を持つ割合)は56%から72%になり、さらに売上額においては346億ドルから408億ドルへ18%上昇(4年間推移)したという結果も出ている。

これまでの人事システムは、勤怠管理や『記録するためのシステム』だった。しかし、これからはAIやビックデータを活用し、社員と組織の成功への方向性が同じであり、お互いに貢献できる関係性を築けるような『エンゲージメントのためのシステム』が必要とされる時代になっていくだろう。そうはいっても、採用や異動などの人事に関する最終的な判断は「人」によるもの。HR Techはあくまでも判断を正確にスピーディーに進めるためのツールとして、企業は今後積極的に取り入れていくべきだろう。


<参考・参照元>
総務省|平成26年版 情報通信白書|我が国の労働力人口における課題
HR Techとは 第1回 「HR Techのトレンド」
書類選考を人工知能(AI)で…採用領域に広がるテクノロジーの実態 | HRテクノロジーPro
ミツカリ 事例詳細
IBM Kenexa (ケネクサ) – Japan
マネジメントを正解に導く?IBM『Kenexa』が示すコグニティブHR Techの正体 - BITA デジマラボ
人事コスト下げつつ売上UP?AI×HR Techの本命『IBM Kenexa』脅威の実例紹介 - BITA デジマラボ

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