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Wi-Fiの不自由さから解放!セルラーPCは第三のPCとなり得るか

LTEなどのセルラーネットワークへ接続でき、ARMの高性能化によってかなり実用的な段階まで進化しているセルラーPCは、デスクトップ、ノートに続く第三のPCとして存在感を示す可能性が出てきた。本稿では最新事情を紹介しつつ、低コストなセルラーPCが情報格差問題を解決するカギになり得るかを考える。


なぜセルラーPCは流行らなかったのか

セルラーPCは決して目新しい製品ではない。しかし、最近になってセルラーPCの存在感が増してきている。セルラーは登場した当初からモバイルデバイスに求められる機能を全て保持していたといえる。では、なぜそれほど流行しなかったのか。
その原因のひとつは、ネットワーク環境、特にセルラーネットワーク(携帯電話ネットワーク)の速度が価格に見合わなかったという点にあるだろう。今でこそLTEの普及でモバイル通信は快適な速度を実現しているが、いわゆる3G世代までは、大容量かつ高速にデータ通信を行うには、力不足であった。その割には月額数千円という通信費がかかる。したがって、わざわざセルラーPCでセルラーネットワークにつなぐよりも、通常のノートPCを公衆無線Wi-Fiにつないだほうがコストパフォーマンスは上だったのだ。

また、タブレットやスマートフォンの陰に隠れてしまったという側面もあるだろう。長時間の作業や、大容量のデータを扱う作業はデスクトップPCやノートPCで、それ以外のSNSやメールはタブレットやスマートフォンで、という棲み分けができてしまい、セルラーPCは「帯に短く襷(たすき)に長し」といえる状況だった。

しかし、LTEなどの高速なセルラーネットワークが普及したこと、小型CPU「ARM」の性能向上によって、セルラーPCが見直される時代が来ている、と筆者は感じている。


windows10とARMが実現する真のセルラーPC

セルラーPC復活の立役者ともいえるのが、「ARM系CPU」だろう。ARM系CPUは通常「ARM」と省略されて呼ばれることが多いが、もともとは英国のARMという一企業が設計したモバイル向けCPUのことを指す。ただし、ARM自身はCPUの製造を行っておらず、自身が生み出した知的所有権を根拠に、他社とライセンス契約を結んでいる。つまり、回路設計だけを行い、実際のARM系CPUは、ライセンス契約を結んだ半導体メーカーが製造しているのだ。代表的なARM系CPUのメーカーとしては「Qualcomm」や「Media Tek」があるだろう。あのAppleもARM系CPUを設計している。

ARM系CPUは、スマートフォンやタブレットに搭載されるため、もともと省電力性が高い。なおかつ最近ではマルチコア化によって高性能化も進んでいる。かつては通常のPC用CPUと比べて比較にならないほどの性能差があったが、近年、その差は縮まりつつあるのだ。

このARM系CPUとマイクロソフトのWindows10を組み合わせたセルラーPCが、2017年中に発売される予定だという発表があった。これまでWindows10はIntelとAMDのCPUにのみ対応してきたが、Qualcommとの提携によってARM系CPUに本格対応する形だ。使い勝手と性能、省電力性、高速な通信を全て備える「真のセルラーPC」が登場することになりそうだ。


セルラーPC特有のメリット

セルラーPCのメリットは、接続の手間が圧倒的に低いことだ。公衆無線Wi-Fiを探す必要も、有料のWi-Fi専用端末を契約する必要もない。携帯電話やスマートフォンと同等の繋がりやすさを、PCに内蔵しているからだ。LTEの普及によって、都市部であれば高速大容量な通信はいつでも利用できるようになる。これに加えて、ARM系CPUの圧倒的な省電力性と必要十分な処理性能も見逃せない。
また、キーボードやタッチペンといった「物理デバイス」が主流という点も大きい。数千文字を入力する必要があるとき、キーボードが恋しくなったことはないだろうか。スマートフォンやタブレットではなく、あくまで「PC」の物理キーボードから入力することで、作業の効率を高めてくれるだろう。資料作成や文字入力が多いビジネス用途であれば、尚更だ。


格安セルラーPCは情報格差を埋められるか

セルラーPCは、ビジネス用途以外でも注目されている。それは、世界各地で起こっている「情報格差」の解決策としてだ。経済格差をベースとした「情報格差(デジタルデバイド)」は、年々拡大を続けている。デジタルアクセスにはお金が必要であり、そのお金を持たない人々が情報化社会から取り残されている。これは、単に流行を知らないという表面的な問題だけではなく、教育格差や貧富の差を拡大させ、社会を不安定にしてしまう要素として懸念されているのだ。
また、日本国内でも若者のパソコン離れが進み、PCの操作に不安がある、もしくはPC自体を所持していないという学生が増えているそうだ。確かにPCでなければできない作業は減る一方だ。若者にとってはPCよりもスマホのほうが安価で手軽に感じるのだろう。しかし、その一方、複雑かつ多様な処理を同時進行するビジネスシーンでは、まだまだPCが主力であるといえる。

こういった情報格差を解決する方法として、格安のセルラーPCがある。スマートフォンやタブレットよりも割安で、十分な情報処理能力を持っているからだ。例えば、マイクロソフトの「Surface」がある。廉価かつ必要十分な機能を持つセルラーPCとして、情報格差の縮小に貢献できそうな端末だ。

すでにスマートフォンよりも安く市場に出回り始めている廉価版セルラーPC。情報格差を埋めるカギは、この一見中途半端なデバイスが握っているのかもしれない。



<参考・参照元>
ARM版「Windows 10」PCは4Qに登場--クアルコムCEOが明言 - ZDNet Japan
複合現実、ゲーミング、Cellular PC(セルラー PC)の可能性を広げるデバイスのイノベーション - Windows Blog for JapanWindows Blog for Japan
IoTデバイスをLTEにつなぐ|NEWS & CHIPS
若者のパソコン離れ、「新たなデジタルデバイドに」 :日本経済新聞
「ARM系CPU」って何だ?|デジ・ステーション|J-Net21[中小企業ビジネス支援サイト]

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