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ロボット牧師が宗教改革発祥の地に登場、未来の教会へ福音を告げるか?

宗教改革500周年を祝うドイツ。その宗教改革発祥の地、ヴィッテンベルクの教会にロボット牧師「BlessU-2」が登場した。地元住民の話題を集め、キリスト教関係者の間で議論を呼んでいる。人々の教会離れと牧師不足が深刻なドイツの教会に、ロボット牧師は福音を告げるのか?ロボットと人が築く、未来の宗教の姿を考察する。


宗教改革500周年に登場したロボット牧師

宗教改革500周年を迎え、お祭りムードが漂うドイツ。その宗教改革発祥の地で、マルティン・ルターが活躍したヴィッテンベルクの教会にロボット牧師が登場。地元住民の間で話題になっている。

「BlessU-2」と名付けられたロボット牧師は、人よりもやや大きめのサイズである。腹部には大型のタッチスクリーンを搭載しており、眉毛と口元を動かして顔の表情を表すことや、両手を上下に動かすことが可能。ドイツ語、英語、フランス語、スペイン語、ポーランド語の5カ国語で祝福を提供し、男性または女性の声を選択できることに加え、聖句をプリントアウトできるという。また、説教が終わると、按手して顔から光を発しながら祝福するパフォーマンスを見せたりもするのだ。

「BlessU-2」の登場により、地元の教会関係者は「議論を引き起こすだろう」と語っている。その言葉どおり、バックアップロボットとペアで活動を開始した「BlessU-2」は早速人々の注目を集め、地元のキリスト教関係者の間で議論を呼んでいる。一方でロボット牧師登場の背景には、近年のドイツの教会が抱えるドイツ人の教会離れや、牧師不足という深刻な問題が存在している。


ロボット牧師登場の裏にあるもの

ドイツのキリスト教会では、近年牧師不足が慢性化している。牧師不足の背景にあるのが、ドイツのキリスト教信者数の減少と無神論者の増加だ。カトリックとプロテスタントを合わせたドイツのキリスト教信者数は1950年代をピークに減少し続け、現在の2010年代においては全人口の60%を下回っている状況であり、多くの教会が教会員の減少に直面している。なかには教会内にATMを設置したり、教会の鐘の音を携帯電話の着信音として販売したりする教会も出現し、教会へ人を呼び戻すのに必死だ。日本でもお寺の檀家の減少が問題になりつつあるが、檀家の減少によって空き寺になったり、存続が困難になったりするお寺が増加しているのと同じような状況なのだろう。

ロボット牧師に対する人々の反応は、今のところ軒並み好評のようだ。教会から離れてしまった人、教会と縁のない人の注目を集め、教会へ関心を向けさせることにはある程度成功しているようだ。「BlessU-2」はあくまでもそのために開発されたものであり、人間の牧師をリプレースするために開発されたのではないと、開発者も主張している。今回登場したロボット牧師は、キリスト教を含むすべての宗教に対して、ロボットやAIが今後どのような貢献ができるかについてのヒントを与えてくれているのではないだろうか。


進化するロボット牧師は人間の牧師を超越するか?

多くの教会の牧師は通常、毎週日曜日の礼拝説教のために相当の時間をかけて準備をする。一般的には教会歴や時節に合わせて説教のテーマを設定し、その根拠となる聖書箇所を指定、論理を補強するために註解や釈義を参照し、他の牧師による過去の類似した説教なども引用したりして全体像をまとめ上げる。説教の内容を深めようとするほど、準備の作業量が膨大になるのだ。筆者の知り合いのある牧師などは、説教前日の土曜日は終日牧師館へ引き籠り、朝から夜中まで周到に準備を行うため、毎週土曜日はくたくたになるとこぼしている。

牧師が行うそのような仕事は、現在普及が進むディープラーニング型のAIが得意とする仕事でもある。「BlessU-2」はスタンドアロンのロボットだが、ディープラーニング型AIを搭載したロボットがIoT化してネットに接続し、聖書、釈義、註解などへアクセスして情報をまとめ、アウトプットすることは十分可能だろう。さらに、他のロボット牧師と連動し、各種の情報をまとめてビッグデータ化すれば、時節や情勢に合わせて最適な説教テーマを共有するといったことも可能になるかもしれない。このような高度でスマートなロボット牧師が本格的に活動を開始すると、毎週日曜日にお決まりの説教を棒読みするだけの手抜き牧師は、たちどころに職を失ってしまいかねないだろう。


ロボットと人間が築く、宗教の未来像とは

宗教改革発祥の地に突如出現したロボット牧師は、当地の人々に驚きを与え、話題となる事には成功した。では、現在から500年後の世界でロボットは宗教にどう関わっているのだろうか。

ひとつ言えることは、上述したとおり、説教準備などの仕事の多くはAIやロボットがかなりの程度関わっていることになるだろう。聖書箇所の釈義や註解の参照のみならず、ギリシャ語、ヘブライ語テキストの底本、写本などへも直接アクセスし、各国の現代語聖書翻訳に相当の影響を与える可能性もある。

一方で、たとえ500年後の未来であっても、ロボット牧師が人間の牧師を完全にリプレースする事はないと筆者は予想する。人間の牧師を補佐するロボット牧師補は登場してくる可能性は高いが、人々を励まし奮い立たせ、勇気づけ、慰め導くといった仕事は、あくまでも人間にのみ残されるだろう。宗教の本質や意味とは、AIのディープラーニングで解が得られる類のものではなく、人の人生に直結するものである。有限の命を持たないロボットには、永久に入れない領域なのだ。このことは500年後のみならず、たとえ1000年後であっても不変であると、筆者は固く信じている。


<参考・参照元>※一部リンク先英文サイト
Robot priest unveiled in Germany to mark 500 years since Reformation | Technology | The Guardian
ドイツにおける宗教事情 |ドイツ生活情報満載!ドイツニュースダイジェスト
いらないお寺は消えゆくのみ、生き残りを掛けた戦いが始まる ~エンディング産業展セミナーより~ | 一墓一会 いちぼいちえ

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