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Amazonが高級スーパーマーケットのホールフーズを買収した理由とは?

Amazonによるホールフーズの買収劇が世界を驚かせた。137億ドルの巨大M&AによりAmazonは何を得たのか?ホールフーズの買収でAmazonはアメリカの食品流通をどう変えようとしているのか?そして、食品流通の変革の波は、いずれは日本にも押し寄せてくるのか?Amazonが立ち上げたAmazonフレッシュピックアップの現状とともに検証する。


137億ドルの巨大買収劇はAmazonの過去最大規模


2017年6月、Amazonが高級スーパーマーケットのホールフーズを137億ドル(約1兆5070億円)で買収したというニュースが世界を駆け巡った。Amazonのビジネス史上最高となる巨額の買収額も衝撃的だったが、EC大手のAmazonがなぜ実店舗を手に入れるのか、不可解に感じた人も少なくなかったようだ。

ホールフーズ・マーケットは1980年設立。ヒッピーのような暮らしをしていたジョン・マッキーとルネー・ハーディー・ローソンが家族や知人から45,000ドル(約495万円)を借り、テキサス州オースティンの街で野菜や果物を売る小さな店を開いたのが始まりだ。住んでいたアパートに在庫の野菜や果物を保管していたとして追い出され、店に暮らし始めた二人はシャワー代わりにディシュウォッシャーのホースで体を洗っていたという。

創業者の二人は、やがてより大型の店舗を獲得してオーガニックな青果物の販売を本格的に始めて消費者の支持を集め、テキサス州を中心に店舗を拡大。2000年頃から他店舗のM&Aなども行いつつビジネスを広げ、アメリカを中心に三カ国で469店を運営するまでに至っている。NASDAQに上場し、2016年の年間売上は約157億ドルとなっている。


ホールフーズ買収でAmazonが得た“すぐに活用出来るモノ”

ホールフーズ買収でAmazonが得た“すぐに活用出来るモノ”は、物流拠点としてのホールフーズの実店舗だろう。ホールフーズの店舗はアメリカの大都市、中都市を中心に、綺麗なネットワークを描くように配置されている。Amazonが今年3月に立ち上げたばかりのAmazonフレッシュピックアップを一気に普及させるための拠点として使える。

Amazonフレッシュピックアップは、ユーザーがAmazonで注文した食料品などをAmazonフレッシュピックアップセンターのスタッフが袋詰めして準備し、ユーザーが受け取れる(ピックアップ出来る)仕組みとなっている。Amazonプライムメンバーは無料で利用でき、注文から15分後にはピックアップ可能だ。買い物時間が節約でき、車で子供を迎えに行ったついでに食料品などを受け取れる便利な仕組みだが、ホールフーズ買収前の時点では、AmazonフレッシュピックアップセンターはAmazonお膝元のシアトル市内に、たったの2カ所しかなかった。今回のホールフーズ買収により、直ちに使える469の店舗をAmazonは手に入れた。

Amazonフレッシュピックアップセンターを、ゼロベースから全米各都市に整備していた場合のコストと時間は、間違いなく相当なものになっていただろう。


Amazonがどうしても欲しいホールフーズのプライベートブランドと売り場

また、ホールフーズのプライベートブランドもAmazonにとっては垂涎モノだ。ホールフードは「365エブリデイバリュー」というプライベートブランドを有し、消費者から高い支持を得ている。Amazonは食料品などのプライベートブランドを強化しており、ホールフーズのプライベートブランドとの相乗効果が期待出来る。また、何よりもホールフーズの実店舗という、Amazonのプライベートブランドの新たな売り場を獲得できたことは大きなメリットだ。

Amazonフレッシュピックアップで注文したAmazonとホールフーズのプライベートブランド品を、ホールフーズの店舗に併設されたAmazonフレッシュピックアップセンターで受け取る。そのような風景が日常的になるのも、そう遠くないかも知れない。


Amazonのロジスティクス技術のホールフーズでの活用も

また、Amazonがこれまでに培ってきた各種のロジスティクス技術の、ホールフーズでの活用も噂されている。Amazonは2012年に倉庫用作業ロボット開発のKivaシステムズを7億7500万ドル(当時の相場で換算して約610億円)で買収、自社のフルフィルメントセンターにKivaシステムズのロボットを導入、極めて効率的なオーダーフルフィルメントシステムを実現している。Amazonのロジスティクス技術は、AmazonのパブリッククラウドAmazon Web Serviceと並ぶ、AmazonをAmazon足らしめるコアコンピタンスとなっている。

自動化を中心としたAmazonのロジスティクス技術がホールフーズのロジスティクスで使われることは想像に難くない。ホールフーズの店舗スタッフがいきなり職を失う可能性は低いだろうが、ホールフーズの物流センターなどでロジスティクスの仕事に携わる人にとっては、仕事の内容が大きく変わる可能性があるだろう。

今回のAmazonのホールフーズ買収は、Amazonのビジネスに直接的なメリットをもたらすものである。その一方で、我々消費者にとっては、Amazonが目指す食品流通のパラダイムシフトを予感させるものでもある。旧態依然とした食品流通の世界に、アマゾンのロジスティクス技術が導入され、業界全体を大きく変える。そして、変革の大きな波は、やがて日本にも押し寄せて来る。

日本においても、Amazonはすでに食品の取り扱いを始めており、注文から最短1時間で届くAmazon プライムナウのサービスも開始している。Amazonはかつて、日本の書籍流通を激変させた。Amazonは、いずれは日本の食品流通も変えるだろう。今回のAmazonによるホールフーズ買収の結果が、日本の食品流通にも何らかの影響を与える事が、近い将来に現実のものとなるだろう。


<参考・参照元>
Why Amazon is buying Whole Foods - Business Insider
Amazon buying, acquiring Whole Foods for $42 a share - Business Insider
アマゾンのホールフーズ買収、真っ先に取り組むのは倉庫の自動化か - Bloomberg
ホールフーズが売上低迷で店舗閉鎖、コア顧客離れが原因か | Fashionsnap.com
ホール・フーズ・マーケット【WFM】:業績(通期)/株価 - Yahoo!ファイナンス
アマゾン、米高級スーパーを1.5兆円で買収 :日本経済新聞
Whole Foods Market | America’s Healthiest Grocery Store

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