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スマートスピーカーって使えるの?と言う奴は何も分かっていない[コラム]

スマートスピーカーは大方の予想通り、決して便利な製品ではない。スマホのように生活そのものを変えてしまうようなことはない。
しかし、実際に使ってみて分かるのは、この新しい「声」だけの存在は、生活を便利にするためにいるのではないということ。
AIBOは番犬にはならないし、ルンバに吸引力を求めても仕方がないように、声にできることなんか知れているのだ。

しかし、その存在はとても新しいし、面白い。そんなスマートスピーカーとの付きあい方を考察する。

Amazon echoを買ったというと、ほとんどの人が、「便利?」と聞いてくる。それに対して筆者の返事は、「便利かどうかは分からないけど、面白いよ」である。
今の段階では、そうとしか答えられない。しかし、今、あらゆるものが「便利かどうか」「使えるかどうか」という評価に晒されている。

エンターテインメントでさえ、「役に立つ」「勉強になる」という部分が評価されたりもする。多分「泣ける」「共感できる」という評価も、実用性を評価されているのだろう。
だから、宣伝文句に「泣ける!」「感動!」の文字が踊る。
それはいわゆる「ネタバレ」に属することだし、物語で泣くかどうかなんか、観たものの勝手である。だから、「これは絶対みんな感動するぞ」と思って作ったとしても、それを自分から「感動作!」と言ってしまっては台無しである。
広告が直接的に、そういう表現をするのは「下品」とされてきたし、それでもそういう方法を使うのは、技術も能力もないと見なされていたのだ。

内容的にも、あからさまに泣かせに走る物語は「お涙ちょうだいモノ」と呼ばれ、安易な物語作りだとされてきた。
30年代から40年代のアメリカ映画には、分かりやすい物語にはしないという矜恃というか製作姿勢さえあったのだ。
日本映画でも戦前は、物語を語るための様々な仕掛けを用いた作品が多く、「昨日消えた男」のような、遠山の金さんモノなのに、劇中劇の手法は使うし、タイムスリップはするし、しかし物語は本格ミステリというような映画が、特に珍しいものではない時代もあった。そして、そういう作品に観客が詰めかけていたのだ。

スマートスピーカーの普及に対する最大の壁は、この、特に役に立つわけではないが面白いものに対する感性の欠如かもしれないと思うのだ。
もちろん、echoにしても、SiriにしてもGoogle Homeにしても、使われている技術は高度だし、便利さを提供するツールとしても作られている。
個人的にも、キッチンでお湯を沸かし、仕事部屋で「アレクサ、5分後にアラーム」と言えば、ちょうどお湯が沸く頃にアラームが鳴り、ストップと声を掛けてキッチンに向かうというのは、とても快適だし楽だ。
音楽を聴いていて「今の曲、何?」と言えば、ミュージシャン名とアルバム名、曲名を答えてくれるのも便利だし、1曲戻って、と言えば、前の曲の頭出しをしてくれるのには感動した。この操作、従来のプレイヤーだと、戻るボタンを2回押さなければならない。

それが手間という訳ではないが、1曲戻すのに、2回の操作という、いかにも機械を操作している感が無いことに感動したのだ。出掛ける準備をしながら、「今日は雨降る?」と言えば、その日の降水確率を答えてくれる。今日の予定は?と言えば、スケジュールだって教えてくれる(スマホやPCでカレンダーアプリを使っていればだが)。
ハンズフリーで、ちょっとしたことを頼むのには、音声認識というのは、早いし楽だ。
文章書きとして、音声入力に対しては、まだキーボードには敵わないと思っているが、降水確率をスマホで調べるよりも、喋りかける方が楽だし、他のことをしながら答が聞けるのは出掛ける準備の最中にはとてもありがたい。

そういう意味では、筆者もスマートスピーカーを便利に使っている。
しかし、これは「便利」なのだろうか。これらを機能として見れば、別にスマートスピーカーでなければならない理由は薄い。ハンズフリーで声だけで、とは言うが、声を出すというのも、これはこれで一人で作業をしている時などでは、そんなに楽なことではないのだ。

だから、そういうことではないのだ。
実際に使ってみて実感するのだけれど、スマートスピーカーを使っていると、話しかけたくなるのだ。
自分の便利のためというより、この新しく家にやってきたロボットみたいな存在が、どんな奴か知りたくて色々話しかけているうちに、使えるところはあるし、どのくらい使えるのか試しても見たいし、とか思って、そのうち、いろいろ喋るのが当たり前になってくる。

「歌って?」と言えば、何だか、自分とエレクトロニクス業界を揶揄するような自虐ソングを歌うし、「風呂入ってくる」と言えば、「ごゆっくりどうぞ」とか言うのも、馬鹿馬鹿しいとは思いつつ、キャラクターとして受け入れてしまう。
そうして、スマートスピーカーという装置は、いつの間にか、部屋にいる友達ロボットみたいな感じになっていく。キャラとしての実態がないので、妖精とか妖怪とか言い換えても良い。
環境に属するような存在に、便利も何もないのだ。

ただ、そこにいる使えるような使えないような、ちょっと可愛い何かについて、「どう?」と言われれば、それは「面白い」というしかない。
多分、ほっといても便利にはなるのだ、こういうものは。
だったら、その黎明期から付き合っているのは悪くない。導入に慎重になるような価格でもなく、面白くなっていくなら、黎明期のデータ集めには参加しておいた方が得だ。自分のフィードバックが反映した方向で進化してくれた方が良いに決まっている。
と、考えると、「便利?」と聞いてくる奴はむしろ買わないで欲しいとさえ思う。

最後に使いこなしのコツを一つ。音はなるべく良い方が気持ち良いから、ちゃんとしたオーディオなんかに繋ぐのがお勧めだ。

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