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ドローンで収益をあげるビジネスモデルとは〜規制の壁と収益化の道

ドローンの規制が緩和される国家戦略特区を中心として実証実験が活発に行われている。だが、比較的新しいテクノロジーであるがゆえにドローンを活用した新サービスの実用化には時間がかかり、規制に阻まれている部分も多い。今の規制でもドローンの収益化は可能なのだろうか。


ドローンの活用を阻む規制の壁

ドローンのうち、重量200グラムを超えるものは無人飛行機とされ、日本において以下の空域を飛行する場合は国土交通省や航空局など許可が必要だ。

・空港等の周辺の上空
・150m以上の高さの空域
・人口集中地区の上空

こうした規制以外でも自治体によっては独自のガイドラインで規制を強めている。
というのもドローン墜落事故が全国各地で相次いで発生しているからだ。2017年11月には岐阜県大垣市郭町のイベントで上空から菓子をまいていたドローンが落下し、子どもを含む男女6人が軽傷を負ったのは記憶に新しい。

大垣市の事故は電波障害か機体の故障とみられているが原因はわかっていない。
このような想定しえないケース以外にも、2015年4月に首相官邸に放射性物質を含む土砂などを積んだドローンが落下したほか、2017年10月には大阪の伊丹空港でドローンとみられる物体が誘導路の上空を飛行し、旅客機が着陸をやり直した。
このように安全性を考慮せずに操縦する一部の業者がいることも事実である。

ドローンの飛行は日常生活に浸透していないため、こうした事故があると「規制を強めて安全な操縦を確保するべき」という世論も強まってしまう。
一方でドローン市場の拡大には期待がかかる。日本のドローン市場は2017年には533億円で2015年と比較して倍増し、2022年には2,116億円とさらに拡大する見込みとなっている。
とはいえ、現時点ではドローンの商用利用も事実上不可能となっている。

現在ドローンの操縦者の目視外の飛行は許可制になってはいるものの、承認されるには操縦者の代わりに目視で監視できる補助者を配置することが義務付けられており、実質運用できないからだ。
ただ2017年8月に国は長距離飛行の運用規定を改定する方針を固めている。この改定が実現されれば宅配や災害救助などに適用できる見通しだ。

こうした規制は、海外でも例外ではなく、アメリカでは頭上飛行、夜間飛行、操縦者の視界外の飛行を禁止している。
ただし、2017年10月には自治体単位で規制緩和を促す大統領令が発令された。アマゾンやウォルマートがドローンを使用した宅配技術の開発に注力するなかで、この規制緩和は商用利用の拡大につながるだろう。

こうして国の規制緩和をにらみながらもすでにドローンの収益化に対する取り組みは始まっている。現状の規制のなかでどのような収益化が可能なのか。
2つの事例を紹介しよう。


ドローン・フェスの開催で地域を盛り上げる長野県伊那市の取り組み

長野県伊那市は県の南部に位置する人口約7万人の市である。南アルプス、中央アルプスに臨む大自然に抱かれたこの町は、鹿など害獣による農作物の被害に長らく悩まされてきた。被害額は長野県全体で6億円にものぼる。
その対策として市が注目したのがドローンだ。ドローンによって野生の鹿の検知を効率化できないかと考えたのだ。

そこで企画したのがイベント「ドローン・フェス in INA Valley 2017」の開催だ。
イベントの目玉企画、ドローンを使って鹿の検知の精度を競う「鹿検知コンペティション」は前代未聞の試みとなった。
コンペティションの内容は標高1,500m以上の高地に位置する鹿嶺高原に置かれたダミーの鹿を検知するというもの。

競技会場もドローンの操縦の難易度を上げるために変化のある地形に設定し、ドローンの操縦者や機体の能力を限界まで引き出す極めて難易度の高い内容となっていた。
この難題に立ち向かったのは総額約6,500万円の最新ドローンを使うチーム、AIを駆使したシステムとドローンを連携して挑むチームなど、そうそうたる顔ぶれとなった。
残念ながら競技は悪天候のため中止(希望者のみ優勝を決めない競技として開催)となったが、ドローンの実用化に向けて高レベルのチームが揃ったと評価は高かった。

ドローンのような新しいテクノロジーは実用化までに長い時間がかかる。そのためにも常に新しい情報にアンテナをはって長期計画を練らなければならない。
フェスの開催には伊那市のそんな狙いもあった。何より2017年10月18日(水)~21日(土)の4日間開催という大規模なフェスでドローンを収益化したことも大きい。
ビジネスマッチングだけでなく、子どもが楽しめるイベントなども用意して地方の小さな町に集客できたということは自治体にとって大きな収穫といえるだろう。


震災からの復興へ、Jヴィレッジの収入源としてのドローン活用とは

福島県双葉郡楢葉町にあるJヴィレッジは1997年に開設されたナショナルトレーニングセンターだ。
2011年の東日本大震災後より、Jヴィレッジは東京電力福島第1原発事故の収束作業のための拠点とならざるをえなかった。資材置き場やヘリポートとして使用するためにピッチには砂利が敷き詰められ、芝生は荒れてしまっていた。

震災前からJヴィレッジの経営は苦しかった。
平日利用が少ないことが響き、2009年の最終赤字は5,000万円。維持費が年間10億円必要なのに対し、収入は7億円にとどまった。
このような背景からサッカー練習場としての再開は絶望とされていたが、2013年には東京五輪・パラリンピックの開催が決定し、もう一度復興をという機運が高まった。

2019年4月の全面再開に向けて、その収益化として注目したのがドローンだ。
ドローンの現在の規制では、整備のために試験飛行したり講習会を開いたりできる場所は極めて限られている。Jヴィレッジの広大な敷地をドローンの飛行に使ってもらうことでスポーツ以外の利用者を増やし収益を得る狙いだ。

さらに、Jヴィレッジの近くにJR常磐線の新駅を作る計画があり、すでに関係者で協議に入っている。
新駅が実現すれば、スポーツ関係者はもちろん、ドローン利用者にとっても利便性が飛躍的に向上するだろう。このように規制を逆手にとった活用例は興味深い。


ドローンの活用は収益化なくしては広がらない

市場の拡大が確実視されているにもかかわらず、規制の壁に阻まれるのが現状だ。
だが、規制の裏にビジネスチャンスありといわれているように、今の状態で収益化できる道はまだまだあるはずだ。
収益化する試みが広がれば、ドローンの活用も飛躍的に進むだろう。


<参考・参照元>
航空:無人航空機(ドローン・ラジコン機等)の飛行ルール - 国土交通省
株式会社インプレス|ニュースリリース - 2016年度の国内のドローンビジネス市場規模353億円(前年度比102%増)、 2022年度には2116億円に拡大 『ドローンビジネス調査報告書2017』3月23日発行
ドローン商用利用に向け航空法改正へ 政府、来年国会に提出 空域設定、飲酒操縦禁止など 罰則も検討(1/2ページ) - 産経ニュース
規制の緩和でアメリカのドローン開発が変わる? | ドローンニュース
獣害に苦しむ自治体を救え! 伊那市「ドローン×鹿検知コンペ」密着取材 | ROBOTEER
東京五輪:ドローンに復興託す 「Jヴィレッジ」新収入源 - 毎日新聞

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