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IoT通信技術で“自転車の鍵”は次世代へ!スポーツバイク愛好家のエンジニアが開発した盗難防止サービス「AlterLock」

スポーツ感覚で自転車を楽しむサイクリストが近年増加している。そうした中、舗装された道路を高速で走るために設計されている「ロードバイク」を筆頭とする高級自転車のニーズも高い。

それに伴い、持ち主の心をざわつかせるのが盗難。1万円程度のママチャリであれば何とか諦めもつくかもしれない。しかし、ロードバイクは10万円台から100万円を超えるものまで価格帯は概ね高額。もしもに備えてセキュリティは万全にしておきたいものだ。

こうした潜在的なニーズを踏まえて、年内ローンチを控えているのが「AlterLock」。従来の金属金具を開閉するタイプの鍵とは一線を画す、IoT通信技術を応用したこれまでにない新しい鍵として販売前から注目されている。どのようなアイテムなのか、またどのようなテクノロジーが採用されているのか。開発を手掛ける株式会社ネクストスケープの照山聖岳(てるやま・きよたけ)氏に聞いた。



商用化した最新のIoT通信が「AlterLock」の製品化を後押し

SI事業を展開する株式会社ネクストスケープは、基幹システム構築、EC、CMS導入、クラウド化推進など最新のITソリューションを企画。開発・運用保守にまつわる案件も多数手掛けている。エンジニアである照山氏は、スポーツバイクを嗜み、高額のロードバイクを所有しているそう。「AlterLock」の開発は「趣味が高じたため」と笑うが、実際のところ高級自転車を取り巻く盗難事情は深刻だ。

「4年前からロードバイクを所有して、個人的に課題に感じているのが『自転車が目の届くところにないと不安になること』です。基本的に駐輪場には置かずに家の中で管理していますが、サイクルイベントやレース会場でも盗難の話を耳にする機会も増えたこともあり、サイクリングに出掛けた時などちょっとの間も盗難が心配になってしまいます。スポーツバイクは総じて軽いので持ち運びしやすいですし、軽装で出掛けるため、ボルトカッターで切断できないような堅牢な鍵の携行は向いていません。そのため、有効なセキュリティ対策が乏しいままでした。私はエンジニアということもあって、以前からスマートフォンと連携するデバイスのコンセプトアイデアをあたためていました。」

しかし、実現のためにネックになったのが従来の通信規格。通信事業者のネットワーク回線を使用すると利用料金が高額になってしまう。具体的なデバイスやアプリの構想はあったものの、コスト面で実用化が困難なことからしばらく漬けたままになっていたという。そんな折、低価格・低消費電力・長距離伝送を実現する「LPWA」の存在を知り、開発は一気に前進することになる。

「2017年6月頃に、IT 系の展示会に参加したとき、偶然 IoTに適した通信規格ということで、商用サービスを展開している『Sigfox』を目にしました。盗難防止や追跡のため、位置情報など少量データの送信などミニマムな通信だけなので、低料金という必須条件をクリアできると判断し、導入を決めました。」

世界に先駆けてIoTの鍵をサイクリストに届けたい

これまでもBluetoothの盗難防止タグは販売されているが、トラッキングできるエリアは都市部など人口密集地に限られてしまうため、スポーツバイクには不向きだと言える。IoTネットワークと連携した鍵は、国内外を見ても初めての試みであり、トラッキングエリアも拡張されることになる。

サイクリストが納得できるサービスを開発するべく、まずこだわったのはデバイスの装着位置。可能な限りの小型軽量化を行っても、スポーツバイクは極限まで洗練させているため、取り付ける場所がほぼない。

「当初、デザイン性を損なわないため内蔵を検討していたのですが、フレームにアルミやカーボンを使用していることがほとんどで、素材の厚みもあって電波が飛ばず、通信が困難になることが分かり諦めました。」

考慮した結果、フレームとボトルケージの間に盗難防止ネジで設置することにした。


デバイスに搭載される機能は、主に「加速度センサー」「GPS」「LPWA」「アラーム」となる。リチウムイオンバッテリーを内蔵しているが、取り外しができないのでモバイル充電を前提にしている。デバイスからアプリにプッシュ通知を送信する仕組みだ。具体的なサービスイメージは次の通りだ。

<「AlterLock」のサービス仕様>
(1)所有者が自転車から離れるとBluetoothが切断され、自動的に追跡モードに移行する。
(2)追跡モードの状態で移動を検知すると、デバイス本体のアラームが鳴り、所有者のスマホにプッシュ通知で知らせる。
(3)デバイスの位置情報が定期的に送信され、スマホから自転車の位置を追跡する。
(4)所有者が自転車の近くに戻ると、Bluetoothが接続され、自動的に待機モード移行する。


アプリには、次のような機能を設けている。

<自動ロック>

所有者が自転車から離れると自動的に見守りを開始。なお、自転車の画像をはじめ、防犯登録番号や固体識別番号を登録する機能も設けているため、万が一の時に警察への届け出などに必要な情報もアプリ上で管理できる。

※手動での待機モード・追跡モードの切り替えも可能。

<アラーム&通知>

自転車の振動を検知するとデバイスから発するアラーム音が盗難を抑止し、即座に所有者のスマホに通知。振動検知の感度やアラームのオン・オフなどの設定も可能だ。

<GPS追跡>

万が一盗難された場合でも、GPSと通信機能によって自転車の位置情報を長期間にわたり追跡。

ちなみに、クラウドサービスには、Microsoft「Azure(アジュール)」を採用しているが、その理由について照山氏は次のように語る。

「『Sigfox』もクラウドを持っているのですが、通信で上がってきたデータを一時的に格納する機能しかなく、ユーザー情報などと連携するには別のクラウドに渡すプロセスが必要になります。『Sigfox』では『Azure IoT Hub』につなぐアダプタを標準でサポートしていることもあり、プロトタイプの段階でイニシャルコストをかけずにバックエンドのシステムを構築できるというメリットが大きかったので、採用についてはあまり悩まず決めました。」


若年層の検挙率が4割! 次世代のセキュリティサービスで「自転車盗難」を根絶したい

なお、デバイスの費用については税込み 9,000円以下、サービスは月額 390 円を想定しているという。現在、プロトタイプの実証実験を重ねているところだが、盗難時の追跡にあたり課題も浮き彫りになっている。

「アプリには、『Sigfox』経由でGPS情報が更新されていきます。そのため、近場であれば自分で探しに行くこともできますが、盗難となればトラブルに巻き込まれる可能性もあるので、初動としては速やかに警察に届け出ることがベストだと思います。ただ、警察がアプリのマップ情報をもとに捜査してくれるのかというと、定かではありません。これも含めて万が一盗難被害に遭った際のフローもこれからの実証実験で組み立てていければと思っています。」

ちなみに、デバイスのバッテリー駆動時間は1度の充電で、最大2か月は動作可能とのこと。しかし、トラッキングの精度もさることながら、最終的に目指しているのは「AlterLock」が盗難の抑止力として作用することだという。

「もちろんスポーツバイクを狙って組織的な犯行に及んでいるケースもありますが、2016年の統計によると、施錠状態の自転車を盗難した人員のうち、約4割は14歳から19歳であることが分かっています。若年層の出来心で盗まれてしまう現状と対峙するには、しっかりとしたセキュリティを誇る『AlterLock』のようなサービスが認知されることが必要不可欠だと思います。現在は開発段階であり、課題も少なくありませんが、スポーツバイク愛好家たちの気持ちを楽にしてくれるアイテムとして受け入れられることを確信しています。そしてゆくゆくは、自転車盗難自体を社会からなくしていけるような、抑止力ツールとしても存在感を発揮していけたらと思っています。」

IoT通信やクラウドサービスの拡充も相まって、製品化に向けて勢いに乗る「AlterLock」。サイクリストたちの不安を払しょくするにたる製品に仕上がるか――。年内のリリースを楽しみに待ちたい。

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