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IoTで進化するコールドチェーンの未来、ASEANにも拡大へ

日本政府が、ASEANコールドチェーン(低温流通体系)の確立を推進しているように、農産物の輸出を拡大するにはコールドチェーンが不可欠だ。

この分野において、IoTでの管理のニーズが高まっている。IoTによってコールドチェーンはどのように進化するのだろうか。


食品事業グローバル化のカギ、コールドチェーンの可能性と課題

日中平和友好条約の締結から40年。北京では2018年1月から日本食の魅力を紹介するキャンペーンが始まり、開催イベントが開かれた。
中国でも人気のテレビ番組「孤独のグルメ」に出演する松重豊さんと、中国語に堪能な女優・桜庭ななみさんが参加し、日本の米をアピールした。

中国では見た目が美しく、ヘルシーな日本食がブームで、2017年には日本食レストランが中国に約4万店に拡大した。2013年と比較すると約4倍という勢いだ。
農林水産物の輸出額も過去最高を更新している。「和食」がユネスコの無形文化遺産に登録され、世界レベルで人気が高まっているのに加え、中国で実施したイベントのようなPR・販促活動の効果が表れている。

輸出の物流ラインを支える影の立役者がコールドチェーンだ。コールドチェーンとは、低温流通体系とも呼ばれ、生鮮食品や医薬品が製造・流通・販売と流れる過程で、途切れることなく低温を保って届ける仕組みを指す。

近年、高齢化・核家族化によって、加工食品や調理済み商品のニーズが高まり、生活になくてはならない存在になっている。さらにここへきて急速に進む日本の農林水産物のグローバル化に伴い、国境を越えたコールドチェーンの形成が必要となってきたのだ。

コールドチェーンの重要性がさらに高まる中、最近では最新のテクノロジーを活用したソリューションが登場している。


cold chain as a serviceを提供するパナソニック

スーパーマーケットやコンビニエンスストアでなくてはならない「冷やす設備」。店舗内で冷凍冷蔵機器を適切にメンテナンスすることで、修理コストや商品ロス業務を削減する。

しかし、導入する各店舗では慢性的な人手不足が深刻な問題となっており、店舗チェーンは設備管理や保守・省エネに問題を抱えている。
これらの課題に対し、IoTを活用して解決するソリューションが、パナソニック産機システムズが開発する遠隔データサービス「S-Cubo(エスクーボ)」だ。

温度や消費エネルギーを最適化や、稼働状況の異常監視を遠隔で実施するのに加え、資産管理をチェーン全体で一元管理する。
そして2017年4月からは「冷やす」をサービス化した「エスクーボシーズ」を開始した。
エスクーボで提供していた冷凍冷蔵設備の導入、省エネ運用、保守メンテナンスまで、月々のサービス利用料で課金するサービスだ。初期投資コストを抑えられる上に、運用にかかわる負担が軽くなる効果が期待できる。

エスクーボシーズでは、IoTによる遠隔監視で故障予知を行い、AIで運転データを解析して、店舗の環境に合わせた省エネ運転を行う。
さらに、店舗チェーン全体で設備機器の最適化を行うこともできる。人気店舗に最新の設備を導入し、不採算店舗に人気店舗が使っていた旧式のモデルを置き換えることで、不採算店舗でも老朽化しない設備運営を実現する。資産管理、設備運営を統合的にサービス化したことが大きな特徴だ。

今後はAIを活用した分析機能を強化して、省エネ自動化サービス開発や故障予知の精度向上を図る。
パナソニックでは2017年にアメリカのデータ解析を行うARIMO(アリモ)社を買収した。また、2022年までにAI人材を1,000人に増やす計画を策定している。

ちなみに2017年11月時点でAI人材は約150人。現在の7倍の人数に増やすことになる。IT系企業と同規模のAI人材をそろえ、ITサービス企業へ進化することを目指している。


色の管理で温度管理の異常を知らせるインクを開発した日立

コールドチェーンを実現するために、現在はデータロガーやRFIDなどのセンサー付記録器をトラックやコンテナに設置して、設置した単位で管理が行われている。

コールドチェーンの重要性が高まるなか、今後は個別商品単位での管理を行うことで、精度を高めることが期待されるが、商品単位でセンサーを取り付けることは費用の面から現実的ではない。

そんななかで日立が開発したのが、商品の温度管理の異常を「色の変化」で検知するインクだ。
このインクは温度変化により色が変わるため、適正温度から外れた場合に検知して色を変える。いったん色が変わると、再度適正な温度の状態に戻しても色は元には戻らない。

日立はすでに、このインクを使った実証実験を始めている。商品のIDコードとインクを組み合わせたQRコードを個別の商品や段ボール箱に付与する。
保管倉庫、販売店などの流通の各ポイントにおいてスマートフォンで撮影すると、商品の温度、場所などを取得できる。個別の商品をきめ細かく温度管理でき、かつ安価に実現できるところに特徴がある。

日立ではこのインクとIoT技術を使って顧客との実証実験を開始した。生産から流通まで一貫した品質管理を実現する狙いだ。


流通段階までで食品廃棄の9割が発生しているASEAN

南アジア・ASEANでは、食料紛失・廃棄のうち、約9割が製造から流通の段階で発生している。
コールドチェーンが整備されていないことが原因の一つだ。保冷トラックで輸送していない、荷卸し・積み替え等を低温環境で実施しない、といったケースがままある。

そこで日本政府では、クール便など日本の高品質な物流システムを海外に展開するため、2018年に東南アジア諸国連合(ASEAN)と共同で「日ASEANコールドチェーン物流ガイドライン」を策定した。ASEANのコールドチェーンの品質が上がれば、日本からの食品需要が高まることが期待される。
日本の農産物は海外でも評価が高いが、コールドチェーンが整備されていないために広く認知されていない。
コールドチェーンの整備が加速し、ASEANで日本の農産物が当たり前のように食卓に並ぶことを期待したい。


<参考・参照元>
日本の農産物、海外でブームの兆候…「安心・安全・うまい」で輸出激増 | ビジネスジャーナル
“冷やす”を「コト売り」に、パナソニックが冷凍機のサービス化で得たもの (1/2) - MONOist(モノイスト)
日立製作所/温度管理の異常が色でわかるインク開発 | LNEWS
報道発表資料:ASEANにおける質の高いコールドチェーン物流の促進に向けて<br/>~第13回日ASEAN物流専門家会合の開催結果~ - 国土交通省

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