SOLUTION

ソリューション

誰でも「1人称の体験」を。知識を自分ゴト化するVR・MR学習の魅力

知識偏重教育だった時代では、とりあえず暗記して理解はその後に、という感覚だったが、今は深く学び、新しい真理に肉薄することが求められている。
理解を助けてくれる教材として注目されているのが、VR / MRコンテンツだ。ヘッドセットをかぶり、コンテンツの世界に没入することで、どのような学習効果が得られるのだろうか。


脱・一方向授業で子どもたちのやる気を引き出すVR/MRコンテンツ

中国・北京の高校では、天体物理学のVRコンテンツを活用した授業と従来の授業で効果を検証した。
天体物理学は、天体の理論・構造を学ぶもので、実験を行うことが難しい分野である。授業直後にテストを行ったところ、VRを活用した授業が27.4%も点数が高いという結果となった。

しかも、それまでの学力でCクラスだった生徒がVRの授業を受け、Aクラスの生徒が従来の授業を受けたところ、Cクラスの生徒の得点が上回ったという。授業を受けた生徒のアンケートでは、「まるで宇宙の真ん中にいるように感じられる」といったモチベーションの向上が認められる回答が多く見られた。

スコットランドの地方議会では、地域内のすべての学校にスマートフォンやタブレットを使わない一体型のVRヘッドセット「ClassVR」を配布した。
これは、教育用に開発されたヘッドセットで、歴史・地理のVRツアーや、科学を体験するコンテンツが揃っている。

このように世界各国では、VR / MRコンテンツの没入感を教育に積極的に活用する地域も増え、学習効果が注目されている。VR / MRコンテンツにはどのような効果があるのだろうか。


月面着陸を体験して宇宙を学ぶPlayStation VR

アイルランドの企業VR Educationは、『アポロ11号』をPlayStation VR向けに配信を開始した。本作は、1969年に歴史上初めて月面着陸に成功した「アポロ11号」を題材としたVRドキュメンタリーだ。NASAの資料と音声をそのまま使用しているので、当時の状況をそのまま体験しているかのような臨場感を味わえる。

引用元:Apollo 11 | PSVR | PS4

作品は、ケネディ大統領の「アメリカの宇宙事業に関する演説」から幕を開ける。その後、ロケットの船内が、ニール・アームストロング船長、バズ・オルドリン月着陸船操縦士、マイケル・コリンズ司令船操縦士の視点で描かれる。

プレイヤーも月への航海に参加する。着陸の際は、司令船が月着陸船に向かうように、一度司令船を切り離し、回転させてから再び設置する「ドッキング作業」が必要となる。また、月面に着陸する際には、角度とスピードを調整しながら安全に着陸しなければならない。
こうした作業はプレイヤーが操作する。

着陸後は、月面を自由に歩行できる。宇宙船をいろいろな角度から見ることができ、科学実験装置について、説明を聞くこともできる。
ニール・アームストロング船長の「これは一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な飛躍である」といった関係者の言葉がシーンの合間に表示され、どのような思いで月面着陸が実行されたのかということが追体験できるようになっている。

同社はこの作品の他にも、2017年12月にはKickstarterで資金を調達し、「Titanic VR」の早期アクセスバージョンをリリースした。

引用元:Titanic VR Release Trailer

「Titanic VR」は、処女航海中の1912年に氷山に接触して沈没したタイタニックの謎を、プレイヤーが謎の資産から依頼を受けたリンチ博士とその助手になって明らかにしていくというものだ。
イギリス公共放送局のBBCの協力を受けて、生存者の生の証言を集め、災害に対する学びも深めていく内容となっている。


目に見えない磁界の世界を学ぶHoloMagnet3

砂鉄を撒いた紙の上に、磁石を置くと、N極とS極を結ぶ幾つかのラインができる。この現象を理科の授業で学んだ人も多いだろう。
この「磁界」は洗濯機やテレビなど身の回りの電化製品も発生している身近なものだが、普段目に見えないだけに、理解しにくい生徒も多い。
そこで、MRデバイス「HoloLens」を使って、磁界を視覚的にとらえることのできるアプリ『HoloMagnet3』を開発したのが、理科教材アプリ開発会社のフィール・フィジックスだ。

『HoloMagnet3』では、目の前にある棒磁石を動かすと磁場も動くことが視覚化されるため、両者の関係が理解しやすくなる。同社では中学校・高校の理科・物理・総合学習の時間や、塾でのイベントで、このアプリを使って出前事業を行っている。
また、東京学芸大学や群馬大学と共同でアプリの実証・効果実験を行う予定だ。

コンテンツは、磁界の他にも銀河系を扱うコンテンツがあり、今後も「重力」や「気体分子」といったコンテンツが増える予定だ。
こうした教育現場への貢献が評価され、同社代表の植田達郎氏が「Microsoft MVP賞」を受賞した。この賞は、マイクロソフトがコミュニティやメディアを通じて優れた能力を多くの人と共有する個人に対して授与される。

植田氏は、都内で教員として物理を教えていたが、授業をしていると「子供たちの心がポキポキと折れていく」のを感じていた。
そこで理科本来の面白さを子供たちに知ってもらうために退職し、三重県で同社を設立した。2017年にはVRの開発を開始し、三重県鈴鹿高校に出張授業をしたところ、成績が16%とアップさせるなど、理科の教育に力を注ぐ。

引用元:HoloMagnet3 - HoloLens education app by Feel Physics


体系立てたコンテンツ制作が求められる

VR / MRの没入感は、文字や絵だけでは伝わらなかった「肌ざわり」を伝え、深い理解を与えるのに役立つだろう。
一方で、どうしてもコンテンツを作るのに時間がかかるという問題はある。『アポロ11号』のように史実をストーリー仕立てにするコンテンツは深い理解に役立つが、素材集めには相当のコストがかかっている。

しかし、あえて体系立てたコンテンツの誕生に期待したい。『HoloMagnet3』のように目に見えないものを可視化することで、食わず嫌いで勉強しなかった子どもの思考が一段引き上げられる可能性もある。
体系立ててVR / MRコンテンツで学ぶことのポテンシャルは、かなり高いはずだ。


<参考・参照元>
VRを使った教育に効果はあるのか?学習意欲や理解度を調査 | Mogura VR - 国内外のVR/AR/MR最新情報
【PSVR】月面着陸をVRで体験する『アポロ11号』 | Mogura VR - 国内外のVR/AR/MR最新情報
沈んだタイタニック号の沈没の謎に迫る『Titanic VR』配信開始 | Mogura VR - 国内外のVR/AR/MR最新情報
HoloLens活用の理科教材でマイクロソフトMVP賞を受賞 | Mogura VR - 国内外のVR/AR/MR最新情報

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