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ヤマト運輸のAI配送がついに走り出した~果たしてどこまで有効に機能するか

2017年に残業問題などで大きくクローズアップされた宅配便大手のヤマト運輸では年初に発表したAIサポートによる配送最適化の利用がいよいよ始まっている。まだ一部の営業店での試験的実施に過ぎないものだけに、この段階で厳しい評価をすることは酷だが、実際につかってみた現場では個別のドライバーが現場から蓄積している配達ノウハウとの乖離も出始めているようで、ここからAIがディープラーニングでこうしたギャップをどう埋めることができるかがポイントということになりそうだ。


新たなSFAの導入では必ず現場から不満が出るのが定石

SFA(Sales Force Automation/営業支援システム)というのは、1990年代後半から多くの営業現場で導入が検討された業務の効率を高めることを目的としたシステムであり、先行導入を実現した事業会社も多かった。

しかし、この手のITの仕組み導入は大きなチェンジマネジメントを要求されることにもなり、総じて導入当初の現場の反応はよろしくないものだったようである。米国では広範に利用されていた医薬品業界のMRのためのSFAなどもリアルタイム活用ができず、結局あとでまとめて日誌を入力するために残業がかさむなど、笑うに笑えない問題は絶えない。業務要件だけでまとめていくとどうしてもリアルな現場との食い違いがでることは否めないものだが、そこにAIがさらに絡んでくるとなると果たしてどこまで有効に機能するのだろうか。これは非常に興味深いケースとなることは間違いない。

ヤマト運輸のケースでは、これまで以上に現場のドライバーが持ち歩くツール類は高度なIT化が実現していた。新たなタブレットの導入に伴って、顧客サービスの充実を目的としてカード決済機能などの実装をするなど、ドライバーと顧客の接点が従来に比べて増加した。これだけでも現場のドライバーたちには、これまで以上の負担を強いていることがわかる。このような側面も、評判を落とす材料の一つになっているようだ。実際に足元でのドライバーの動きを見てみると、すでにプリンターは携行しており、歩くITオフィスのような状況になっていることは間違いない。IT部門や外部のコンサルティングファームが頭で考えるIT機器利用の仕組みは想像以上に現場のドライバーにプレッシャーを与えていることがよくわかる。


クロネコのAIはドライバー業務負担の軽減が最大の目標

もともとヤマト運輸の業務過剰状態は、アマゾンがプライム会員向けに国内で打ち出した即日発送という驚異的なサービスが負担のきっかけとなったことは間違いない。朝頼んだものが夕方には届いてしまうというのは、確かに便利なことこの上ないサービスだ。しかし、どうしてもその日のうちに必要だというものは少ない。アマゾンがこのサービスを行ったことで本国アメリカのFedExなどでも、売り上げは上がったのに利益が下がるという効率の低下が顕在化している。

つまり、発注側はバーゲニングパワーで一括に大量の発注をかけてくれるが、その代わりに単価の下落を要求してくる。そのため、仕事はたくさんやってくるが、配送サイドでは配送業務を効率的にこなすことができず、結局は会社としての損益分岐点が下回るというなかなか厳しい状況に追い込まれてしまうというわけだ。

ヤマト運輸が直面したのもまったく同じ状況で、全体の1割程度に過ぎなかったアマゾンからの過酷な受注は、全社の配送担当を著しく疲弊させることとなった。こうした状況からAIを導入することでなんとか業務負担を軽減しようというのが今回の狙いとなっている。具体的には新型タブレットを導入し、配達場所と指定時間などいくつかの項目を事前に条件設定すると最適ルートをナビゲートしてくれるというものだ。さらに配達履歴をAIが分析することで効率的な配達順序も示してくれるというなかなかの仕組みになっている。


ベテランには独自の知見とノウハウが積みあがっている

ところがこれを実際に利用しはじめた営業店のドライバーからは、自らが独自に保有する知見やノウハウとのギャップを指摘する声が出始めているという。

ヤマト運輸の場合は、特定地域をつねにヘビーローテーションで巡回する地域配送のプロが多数存在しており、個別の顧客の住宅事情や在宅時間などの経験値から総合的に判断することで配達順序を決めているというのだ。商店への配達は仕事の邪魔にならない時間帯の配送を心がけたり、宅配ロッカーが設けられているマンションなどの場合には満杯にならない早い時間帯の配送を行ったりという、それぞれのドライバーの独自の気配りによるCRM(Customer Relationship Management/顧客関係管理)が存在することがわかってきている。

どうやら、AIによるナビゲーションはこうしたドライバーが見えないところで蓄積してきた、いわばインタンジブルなノウハウをどう吸収するかも真剣に考えなくてはならない時期にさしかかってきているようだ。現場からの不満の声が高まると、うまくいかないことばかりがクローズアップされがちだが、ディープラーニングは徐々にAI自身が問題を解決して状況改善を行ってくれるというところに大きな妙味がある。

ここからはいかにして現場のドライバーの持つインタンジブルノウハウを吸収して形にするかが期待されるところだ。AI導入の改革はまだはじまったばかりだ。なんとか短期間での巻き返しを実現して現場にも使いやすい仕組みを導入し、業務の軽減化を実現してほしいところである。


<参考・参照元>
全文表示 | ヤマト「未払い残業代、支払います」 それでも社員に「失望感」のワケ : J-CASTニュース
ヤマト運輸株式会社様 | 導入事例 | 法人・ビジネス向け | KDDI株式会社
AmazonはFedExを破壊するか? | A塾Amazon輸出

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