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新幹線がうらやましい? なぜ、アメリカには高速鉄道がないのか

アメリカ人が日本を訪れた際にうらやましがるものがいくつかある。そのうちの一つが新幹線だ。飛行機のように、煩わしい手荷物検査や保安検査もなく乗ることができ、高速で移動する新幹線はアメリカ人にとって垂涎モノだと言える。そして、彼らの国でも初の高速鉄道が2022年に開業予定だという。その現状を報告する。


高速鉄道がない先進国、アメリカ

アメリカを訪れたことのある人は、高速鉄道がないという点にお気づきだろう。地下鉄や通勤用のコミュータートレインなどは大都市部で見られるが、日本の新幹線のような主要都市間をつなぐ高速鉄道はアメリカには存在しないのだ。筆者はアメリカと関わるようになって35年になるのだが、昔も今もアメリカに高速鉄道がないということが不思議でならない。

一方で、最近はカリフォルニア州やテキサス州で高速鉄道を建設しようという機運が高まってきている。そこで今回は、アメリカに高速鉄道が存在しないのはなぜか、今後は可能性があるのかについて探ってみることにする。


広大過ぎる国土、低過ぎる人口密度

アメリカに高速鉄道がない理由の筆頭に挙げられるのは、アメリカの国土の広大さと人口密度の低さである。アメリカの国土は、世界で初めて高速鉄道を走らせた日本の約25倍。対してアメリカの人口は日本の約2.4倍、人口密度は日本の約10分の1だ。

また、アメリカの主要大都市が互いに離れていることも理由のひとつだ。ニューヨークは人口約840万人のアメリカ最大の都市だが、2位のロサンゼルス(人口約397万人)から約3,944キロメートルも離れている。これは飛行機で5時間半、車だと5日程度かかる距離だ。アメリカ第三の都市と呼ばれるシカゴ(人口約270万人)との距離も、約1,273キロメートルある。このように大都市が近接していないアメリカは、日本やヨーロッパのように主要都市が隣接していて高速鉄道の経済性が確保できるといった状況にないとしても止むを得ないだろう。

車社会のアメリカは国土そのものが車を使うことを前提に設計されている。各主要都市は高速道路でつながっており、全米を壮大な高速道路網が覆っているのだ。よって、住宅も車庫付が基本で通勤通学も車かバスがほとんどである。長距離を移動する際は飛行機を利用し、到着地の空港でレンタカーを借りて移動するのだ。飛行機と車の組み合わせこそ、アメリカならではの高速交通システムであり、アメリカの文化と言ってもいい。


カリフォルニアの高速鉄道開発計画

とはいえ、大都市間をつなぎアメリカ大陸を横断するような高速鉄道ではなくとも、比較的近接している都市間をつなぐ高速鉄道を建設する機運は高まっている。

カリフォルニア州は、サンフランシスコ―ロサンゼルス―アナハイム間を3時間程でつなぐ高速鉄道開発計画を立ち上げている。建設資金は総額で642億ドルと見込まれ、ほとんどがカリフォルニア州債で調達される。なお、巨額の公費が投じられるこの高速鉄道開発計画には、カリフォルニア州の投票者の79.4%が賛成票を投じており、圧倒的な支持を表明しているのだ。そして、サクラメントとサンディエゴを結ぶ区間の建設工事も間もなく始まる。当局は現時点で、2025年にはシリコンバレーエリアでの区間営業が開始できるとの見込みだ。

しかし、カリフォルニア州の高速鉄道開発計画は現在、アメリカ史上最も高コストで先の見えないプロジェクトとされている。特に、住宅が密集しているサンフランシスコ・ベイエリアにおける建設工事や、既存路線の鉄道車両の転換作業に予想以上のコストが必要となり、関係者間で対立が生じているのだ。また、各所で工事の遅延が常態化し、更なるコストがかかっている。こういった状況から、高速鉄道が当初の予定通り本当に採算性が確保できるのか、という疑問の声を上げる地元マスコミも出てきているそうだ。


テキサス州で日本の新幹線が走る?

同じく、テキサス州でも高速鉄道開発計画が立ち上がった。テキサス州のダラスとヒューストンを1時間半でつなぐ高速鉄道開発は、政府ではなく民間のテキサス・セントラル・パートナーズが行っている。

計画には日本のJR東海も関与しており、日本のN700系新幹線がベースとなるN700−I Bulletが導入される予定だ。なお、建設費用120億ドルはすべて民間から調達され、税金などは一切投じられない。カリフォルニア州が巨額の公費を投じ未だに追加コスト負担に喘いでいるのに対し、テキサス州は負担なしで地元に新幹線を導入しようとしている。ノーコストで地元に雇用を生み、長期に渡り地元経済を潤し続ける高速鉄道を導入できるとあって、テキサス州の地元民は大喜びの様子。多くの人が待ちわびるテキサス新幹線は2022年末に開業予定だ。

前述した通り、開業工事が順調に進めば2022年にはアメリカで初めて高速鉄道が走ることになりそうだ。そして、50年以上もの年月をかけて培った、日本の新幹線技術がアメリカで花開くというのだから感極まる。筆者もアメリカとの付き合いが長い人間の一人として、テキサス新幹線開業の暁にはぜひとも乗りに行こうと思う。


<参考・参照元>※リンク先一部英文記事
Why can't America have high-speed trains?|CNN
世界の人口密度ランキング|世界経済のネタ帳
Largest cities in the United States by population|Ballotpedia
What's the latest on California's high-speed rail project?|The Mercury News
The dream of high-speed rail in California is taking longer and costing more|The Mercury News
With private funding and no public incentives, how can we oppose the Texas bullet train?|Business|Dallas News
Texas Central|The Texas Bullet Train

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