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ハイパーループは日本でも実現するか?時速1200kmの未来の超高速輸送システム

移動時間を1分1秒でも短縮し、一刻も早く目的に着きたいという思いは世界共通であろう。速さを求めて日本が2027年のリニア中央新幹線開業を目指す一方で、世界はハイパーループの開発に躍起になっている。

世界最速の移動手段となり得るハイパーループの技術は、日本で活用できるのだろうか。


韓国で研究が進む「真空チューブ輸送」

韓国政府は、ハイパーループの2021年の実用化へ向けて「真空チューブ輸送」計画を開始した。

そもそもハイパーループとは、真空状態に近いトンネル内を宙に浮いた状態で「ポッド」と呼ばれる人や貨物を載せた乗り物を移動させるという、長距離高速輸送システムだ。このシステムは時速およそ1,200kmでの走行を想定している。

2027年開業予定のリニア新幹線は時速約500km、一般旅客機の時速は800~900kmだというのだから、この「真空チューブ輸送」が完成すれば世界一速い移動手段となるうえに、リニア新幹線よりも早く実現することになるのだ。また、「真空チューブ輸送」の技術自体は漢陽(ハニャン)大学に支援を求めており、ハイパーループに関する一部ノウハウを米Hyperloop Transportation Technologies社が提供することが分かっている。

しかし、この計画の妨げになっている問題もいくつかあり、そのひとつが規制だという。超高速で移動しているのだから、安全面や管理体制が問われて当たり前である。
もうひとつ、開通後の利益回収の問題がある。超高速で短・中距離の運行ではなく、何百km単位の長距離移動時の利用を想定しているのだが、どれだけ需要があるのか。遠方の出張や旅行の際は重宝されるだろうが、運賃設定によっては飛行機や新幹線を選択する人の方が多いかもしれない。運行開始までに交通手段のひとつとして、いかに認識と価値を高めていくか明確にしておくべきだと言える。


イーロン・マスクが提唱したハイパーループの実現性

今や世界各国が注目するハイパーループだが、この構想を提言したのは米の起業家イーロン・マスク氏である。現在、米Hyperloop One社と韓国政府へ技術協力もしているHyperloop Transportation Technologies社が競うように開発を進めている状況だ。

Hyperloop One社はすでに走行実験までこぎつけており、2017年の7月には実際の車両を使って走行し時速310kmを記録している。この結果からハイパーループの想定する時速へ到達するには、まだまだ足りないように感じるが、これには加速距離の問題があった。この走行実験が行われたラスベガス郊外にあるテストコースは500mしかなかったため、そのうちの300m地点を通過したときの最高時速が310kmとなったわけだ。また、今の技術でこれよりも長距離の走行ができれば、時速740kmまで出るのではないかと予測されている。

このことから推察すると、走行するための技術開発は実現間近まで近づいており、資金面や試験区画の関係上、実験する環境が整っていないというのが正直なところではないだろうか。韓国やアメリカの他にも、広い国土を持つロシアや中国でもハイパーループの開発は進んでおり、先にどの国が技術と環境が整え、さらなる一歩を踏み出すかつばぜり合いを演じている状況だ。イーロン・マスク氏がハイパーループ構想を公表して4年、実現までもう間もなくのところまで来ているのかもしれない。


解決すべき課題点

ハイパーループを実用化するために取り組まなくてはならない課題点は、先に述べたこと以外にもまだ残されている。まず、運行するために要する電力の調達方法といった技術的な点だ。加えて、利用する側の立場として気になるのは、超音波にも匹敵する速度に乗客が耐えられるかという点である。

実際、戦闘機のパイロットが加速時や旋回時にかかるG(重力加速度)に耐えられず、失神することもあるそうだ。また、訓練を受けたパイロットが耐Gスーツを着用した場合でも、数秒間の9Gで限界だという。

このことを踏まえると、ラスベガスで行われた走行実験のように加速のみに重点を置いた場合、とても乗客を乗せて走行できる状態だとは思えない。さらに、走行コースに少しでもカーブがかかっていた場合、遠心力も加わるため座っていられない状態になるのではないだろうか。乗客の安全性に配慮し乗り心地を保証するには、長い加速時間と減速時間、走行するラインのレイアウトの直線性が必要だ。このことからも、ハイパーループは直線的な長距離走行向きであって、短・中距離ではそのポテンシャルを最大限に発揮できないことが分かる。

利用者の利便性や快適性の追求がなされないままでは、実用化されたところで利益回収は見込めないだろう。


日本での実現可能性は?

磁気浮上式リニアモーターカーは、日本が先駆者と言われている。もとはドイツで開発された技術だが、それをさらに発展させたのが日本で、いよいよ実用化に向けて東京~名古屋間の建設が始まったのだ。

また、現在は中国でも実用されているがその技術は似て非なるものである。ドイツ及び中国で採用されたのは常伝導リニアであり、永久磁石を採用している。常伝導リニアでは浮上距離は短く、最大10mm程度で、日本国内で使用するにはリニアレールの直線性、地震等の自然災害への対応の面から不適であった。このことから、日本では超電導リニアが1970年代から研究され、実用化段階まで進歩したのだ。

超電導であれば浮上距離が80mmとなり、直線性のないレールであっても、一定の地震があっても運行に危険はないという。加えて、現在のリニア最高速度は日本がホルダーである。だが、超電導リニアにはエネルギー効率の問題が付きまとう。常伝導リニアでは必要の無かった冷却システム、熱的損失、何より高速になればなるほど増大する空気抵抗である。

鉄道に関わらず、交通のオートメーションはさらに進化している。車両の自動運転は東京メトロ南北線等においてすでに実用化されており、運転手はふたつのボタンを押すだけで次の駅まで走行出来る。人間による不安定性を排除したことにより、運行間隔が短縮可能となった。鉄道信号も減少し、無駄なエネルギーの使用も減らされている。

リニア中央新幹線では時速500kmの走行が可能となる予定だが、いずれは時速1000kmでの走行が実現されるのではないだろうか。このとき問題となるのは乗り心地とエネルギー効率だ。しかし、乗り心地の改善は日本のお家芸と言える。新幹線N700系やE5系は世界最高の技術を駆使し、時速300kmであっても揺れが非常に少ない。リニア中央新幹線にも乗り心地には期待したい。

また、エネルギー効率について特に空気抵抗による効率悪化は速度の2乗に比例する。これをクリアするための研究も積み重ねられてきた。

ここまで研究が進んでいることを考えると、日本ではハイパーループを新たに導入するよりも、超伝導リニアの技術をブラッシュアップすることが現実的なのではないだろうか。


<参考・参照元>
1200km/h!? リニアや旅客機よりも速い乗りもの「ハイパーループ」計画が進行中!|乗りものニュース
社会問題も解決する「ハイパーループ」構想の全貌|Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)
ハイパーループ 旅客カプセルのプロットタイプの走行実験で時速310キロ達成 【動画】|Sputnik 日本
戦闘機の旋回性能と人間の限界|MASDF
韓国政府、わずか4年後の「ハイパーループ」始動を計画──超高速な「真空チューブ輸送」は実現するか|WIRED.jp
リニア、ハイパーループは本当に未来の鉄道となれるのか?|ギズモード・ジャパン

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