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書いた文字がそのままデジタルにというロマン [コラム]

もう15年以上前から、「手書き文字がそのままデジタルデータになる」ペンやノートが一般向けに発売されている。そして、必ず一定以上の注目を集めつつ、未だ決定打に至っていない。

それらの製品の特長や仕組みを振り返りながら、手書きをデジタル化したいという欲求がどこから来るのか、そのソリューションはどこに向かおうとしているのかを探る。

例えば、今年も発売されたモレスキンの「スマートダイアリー」のような、紙に書いた文字がそのままデジタル化されてデジタルデバイスに転送されるタイプの製品は、もう随分長い間、様々な製品で試みられている。

それらのいわゆるデジタルノートは、その方式でいくつかのタイプに分かれている。
もう15年以上前から製品化されている方式では、ぺんてるの「airpen」に代表される、ノートの上部にセンサーをセットして、専用のペンが書いた文字の座標を拾うタイプと、Livescribe社の「スマートペン」や、モレスキンの「スマートノート」などに採用されている、ノートに細かくドットが印刷されていて、専用ペンに付いているカメラで、そのドットを認識する、アノト式と呼ばれるタイプ。

この2つは、現在も引き続き製品が出続けているが、その技術自体もかなり成熟してきている。特に、アノト式は、ペンもノートも専用のものを使う必要があるが、使用時にセッティングが不要で、ペンの電源を入れればいきなり書き始めることができるし、ページめくりなどを気にする事なく、普通のノートに書くようにどんどん書き進めれば、自動的にデジタル化されてスマホなどのデバイスに転送されるため、その実用性はかなり高い。

音声も同時に記録し、書いたノートをペン先でタップすれば、その位置で録音された音声が再生できたり、音声データごとパソコンに転送できる機種もあったりと、取材などにとても便利だった。
「airpen」の方式は、好きなノートが使えるという点が魅力だが、やはりセンサーの設置や、ページ送りなどの操作が煩雑で、用途を限定するのが欠点だが、アンケート調査など、決まったスペースで1枚単位で書く作業などには、とても便利だ。

新しく登場した方式としては、ワコムの「Bamboo Slate」やコクヨの「CamiApp S」などで使われているタイプがある。これは、専用のプレートの上に乗せたノートに、専用のペンで書くタイプで、ペンに内蔵されたコイルの動きをプレートに内蔵されたセンサーが読み取る仕組みだ。

製品は、センサー内蔵のプレートがノートカバーになっているので、特に操作を意識する事なく、ノートに書き込めば、それがデジタル化されるのは楽で良い。ページをめくる時には操作が必要だが、基本的に操作はそれだけで良い。専用ペンがスリムに作れるのも魅力だ。
ただ、センサー内蔵のノートカバーがどうしても重くなってしまうのが欠点だ。

このように、いくつかの方法のデジタルノートがあるのだが、実のところ、決定版と呼べるものがまだ無いのが現状。ライターとして仕事に使えるという意味では、Livescribeの「Wifiスマートペン」という製品は、取材の効率をとても向上させてくれるツールなのだが、専用ノートが安くない(1冊96ページで約450円)のに作りが安っぽいこと、専用ペンがとても持ちにくいサイズと形である事など、そもそもの「書く道具」としての完成度がとても低いのが残念。

筆記用具としての完成度が高い、後発のワコムやコクヨの製品は、ノートとしては大きく重くなるので、やはり実用的とは言いにくい。これも、用途によって力を発揮する製品だろう。

そこで気がつくのだが、普通のノートに書いたものを、PFUの「ScanSnap」のような、気軽にスキャンできるドキュメントスキャナでデジタル化する方が、色々と便利ではないだろうか。最近のノートはミシン目入りの切り離せるタイプが増えているし、好きなノートに好きなペンで書いて、家でデジタル化する。
デジタル化にかかる時間なんて、ノート10ページ裏表でも1分程度だ。ファイルは自動的にPDFになるから二次利用も楽にできる。

スマホが流行した当時、メモ帳の端にマーカーを付けて、スマホのスキャンアプリで撮影すると、キレイに長方形に補正された状態で撮影できるメモ帳やノートが売れたけれど、あれは、いざという時の保険としてのデジタル化であり、基本はメモ帳だった。そのため、メモ帳として使いやすく作られていたから製品として成立したのだ。

確かに、ドキュメントスキャナよりも、デジタルノートの方が安く購入できる。使っていて未来感もある。
しかし、自分が書いたものを全部デジタルで管理したいと思ったら、スキャンの方が確実で楽なのだ。そして、そんな事は、デジタルノートを作るメーカーにも分かっている事なのだろう。それでも、様々な製品が登場するのは、「手書きが直接デジタル化する」というソリューションが、とてもファンタジックに未来を感じさせるからだと思う。
「そういう事できたら凄いよね」というロマンは、既に他の方法で実現していたとしても、それでは満足できないのだ。

最近のタブレットでは、画面上に直接手書きしながら、録音と同期できるアプリなんていくつもあって、タブレット用のペンの精度も上がっていて、わざわざ紙でなくても、手書きを直接デジタル化できるのだけど、多分、それでは満足できないのだろう。

もっとも、あらゆるペンで、あらゆるノートに書いたものが、そのままデジタル化されるというなら、それはイノベーションだけど、そうでなければ、最早「手書き文字がそのままデジタルに」は、もう実現され切っている。
それでも、まだ実現したいと思わせるロマンが手書き文字にあるということなのだろう。

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