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なぜ、IoT家電はまだ便利とはいえないのか[コラム]

家電のIoT化は確実に進んでいる。そのための技術も随分熟成してきた。

しかし、実際にIoT家電を購入すると、まだまだ導入のための設定は煩雑だし、使えば便利だけれど、なければなくても構わない機能が多く、また、それぞれをスマホで操作するのは、結局、操作自体が煩雑になってしまいがちだ。また、家電同士の連動も、メーカーを超えて操作できる規格がまだ少ないため、買ったはいいが、他と繋がらないというケースもでてくる。

インターネットが成し遂げた相互互換による利便性は、IoT家電では実現できないのだろうか。
家電の今後はIoTが鍵だという考えは分かるし、間違っていないとも思う。
インターネットがもたらした最も大きな変化は、「常に繋がっている」という事が生活も社会も、とんでもなく便利にしたという事実を世界中に思い知らせたことにある。インターネットに一般の人が繋げられるようになった当初は、その「繋がっている」という事態の大きさに気がついている人は少なかったし、現実問題として、常時接続を可能にするためには、莫大な投資が必要だった。

それでも、インターネットを体験し、その面白さに触れた人々の多くは、その本質に気がついたから、「本来は常時接続されていることが、このインターネットという新しい世界には必要なのだ」という事は、当時から多くのライターが書いていた。

そして、深夜の時間帯ならインターネットに何時間繋いでも定額という、テレホーダイが始まったことで、夜11時から翌6時までの限られた時間帯に於いては常時接続が可能になった。
そのせいで、仕事が夜型になったフリーランスは沢山いる。

繋がっていることと、繋ぐことができることは、大きく違うのだ。
何より、繋ぐことができる環境は、接続の時間に応じて料金がかかってしまうということ。そうなると、どうしても、繋ぐ先を厳密に選ばなければならないし、無駄に繋ぐという訳にもいかない。これが何を意味するかというと、現在のような「ちょっと分からないことがあればインターネットで調べる」という事を考えつかないということだ。

仕事で必要な重要な何かを調べるために、無駄なインターネットへの接続は控えねばならないと考えてしまうと、結局、日常的にインターネットに繋ぐという発想自体が生まれないのだ。

その意味では、携帯電話会社の、通話は無料に近いが、データ通信は使用量で料金が上がるというスタイルは、実は歴史の後退でもあるのだが、それはまた別の話だ(かつてはデータ使用量無制限だったからこそ「パケホーダイ」という名前だったという事実も、そろそろ忘れられているかもしれない)。

そして、今、スマートスピーカーを購入して思うのは、既に、繋がっていることが前提になっているから、安価で、月々の契約も必要なく、電源を入れてWi-Fiの設定さえすれば、すぐに使える便利な製品が登場する時代になったということ。これも「繋がっている」が当たり前になった現在だからこそ成立する話なのだ。

そこで、IoT家電である。これらも、繋がっている、つまりWi-Fiで無線でインターネットに繋がる環境がある、Wi-FiやBluetoothで、機器が相互に連携できるということが前提にあって成立している。
そのために、当然ながら、ネットワークへの接続プロトコルは、基本的に、全てのIoT家電は互換性がある。A社の照明機器と、B社のエアコンは、どちらも同じルーターに繋ぐことができる。これは、とても凄いことなのだ。

ほんの少し前というか、今に至っても、テレビのリモコンは、そのテレビと同じ会社のレコーダーくらいにしか使えないし、ACアダプターは互換性がないし、LED照明機器の多くは、LED自体が専用だ。
これは、今まで当たり前だったことで、相互に繋がったり、互換性があったりする方が、製品として間違っているという考え方は、家電メーカーには当たり前にある。

結局、そこにIoT家電の問題も集約されるのかもしれない。
例えば、筆者の仕事部屋の照明は、リモコンで明るさも色温度も変えることができるLEDのシーリングライトだ。しかし、この機器は、Amazon echo dotで操作することができない。

Wi-Fiに対応していないのだから当たり前だ。しかし、もし、学習リモコン的な装置があって、その装置用にあらゆる家電メーカーがリモコンのデータを提供する、というような状況があれば、家中のリモコンで動かせる機器は簡単に、スマートスピーカーでコントロールできてしまう。

そのくらいの低いハードルでないと、IoT家電は普及しにくいと思うのだ。今は、それぞれの機器が、ネットワークへの接続以外では、それぞれのプロトコルで動いているから、結局、その機器に対応しているハードウェアでなければ、その機器のコントロールができない。単にWi-Fiに繋がっているというだけでは動かせないのだ。

最低限、スマホのアプリなどは必要になる。それくらいは良いとは思うのだけど、機器が増えてくると、アプリの切り替えも面倒になることは目に見えているし、それ以前に、IoTを実現するために家電を全て買い替えるというのは現実的ではない。

買い替えは買い替えの時期に少しずつ行うもので、現在の日本の家計の状況では、IoTを買い替え需要のためもツールとして使うのも難しい。
だから重要なのは、今ある家電のIoT化だ。前述の学習リモコン的な装置も、その一つだし、既にあるエアコンをコントロールして、室温を好みの状態にキープするAIも備えた機器もアメリカでヒットしている。まずはそういうところから普及を考えるのが正解だろう。そして、その後は、連動して動かすためのインターフェイス。

新製品に組み込むにしても、上位機種のみの対応では、手を出す人は少ない。
さらに、今のままでは、あまり便利ですらないのだ。結局、各機器をそれぞれコントロールしていてはIoT家電が担うべき未来にはたどり着かない。ジグビー規格に沿うのか、別途オープンソースの規格を策定するのか、技適の問題、スマホやスマートスピーカーの家電のインターフェイスとしての洗練、などなど、課題は山積みだ。だからこそ、「常に繋がっている」事による恩恵を思いださなければならない。

囲い込みによる失敗を、企業はインターネット普及以降、数限りなく見てきているはずだ。その失敗を繰り返すと、IoT家電の普及を遅らせるだけだ。

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