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近くて遠いメガネ型デバイスの未来[コラム]

デジタル情報を表示する窓として、ひとに最も近い場所の一つして考えられているのが、メガネだろう。
デジタル情報といったところで、そのほとんどが視覚情報である以上、眼を介するのは仕方がない。ならば、目の前にあるメガネに表示するのが手っ取り早いし、きっと便利だと思うのは無理もないし、自然な流れだ。

しかし、どうやらメガネ型デバイスの実現は、かなりハードルが高いようだ。


スマホの画面が、人とデジタルを繋ぐ窓として最高ではないことは、多分、みんなが知っている。

ウェアラブルという言葉が今も続き、ウェアラブルEXPOなどのイベントが人を集めているのも、手のひらの上の画面というインターフェイスへの物足りなさの表れだろう。

一時期、そこを担えるかと期待されたスマートウォッチは、腕時計というデバイス情報表示には向かないという事実に気がつくまでの繋ぎのような形で、その存在感を失っていき、画面表示ではなく、アクチュエーターによる触覚への通知マシンとして、また身体に密着しているセンサーとしての役割へとシフトチェンジした。

スマートスピーカーは、聴覚へのアプローチの可能性を確実に開いたものの、情報表示機能を持たせる意味が薄いのは明らかだ。

2018年のCESでは、画面付のスマートスピーカーが多く出展されていたそうだが、それは結局、パソコンでありスマートTVへの、つまり家電的な製品。新しいデバイスとしての可能性を示すものではなく、スマートスピーカーを家電として売ろうとする商売の問題であり、そこに新しい何かはない。

ただの、音声インターフェイスを持った据置型タブレットだ。新しいどころか、もしかするとスマートスピーカーが開いた新しい何かへの可能性を閉ざすかもしれない、迷惑な製品だと言っても良いのではないだろうか。

そして、情報表示のためのウェアラブルツールとして、最も期待されていたデバイスの一つが、メガネ型である。
ARとの相性の良さもあり、視界に直接情報を表示できるメガネ型のデバイスは、もう数年前から、いくらでもプロトタイプが発表されてきた。いくつかは、市販さえされたが、2018年現在、満足に運用されているものは一つもない。

2018年1月に行われたウェアラブルEXPOでも、相変わらずいくつものメーカーが、メガネ型のデバイスを展示していたのだが、実際に実用になる製品は一つもなかった。一つもないだけではない。その多くは、もう何年も前から展示され、しかし、そこでできることが変わらないまま、完成していない。

いくつか、デモが動くタイプのデバイスを体験してみたが、そこで観られる景色自体、ここ数年、何も変わらないのだ。変わらないどころか、少し実用に近づいたデバイスほど、実際に試した時の、「これでは実用に耐えない」という実感が強い。

分かりやすい問題として、キャリブレーションの難しさがある。メガネは簡単にズレるし、正確に同じ位置で掛け続けることが難しい。
しかし、現実とメガネに表示される情報の位置合わせは、メガネが1mmズレるだけでも視界上、大きくズレてしまうのだ。また、実際の視界を邪魔しないように情報を表示しようとした時、文字情報はとても小さな文字になる。

レンズ上に直接表示するしかないため、表示できる情報も限られるし、拡大縮小も難しい。もちろん、バッテリーの問題も解決していないし、重量の問題も残っている。メガネ全体をスクリーンとして利用するならともかく、現実とのオーバーレイには、まだかなりの解決しなければならない技術的な課題が残っている。

フルゴーグルによるVRの方が、技術的には遥かに成熟しているし、コンテンツを作るコストさえ無視すれば、システム自体の運用ははるかに現実的だ。だからといって、フルゴーグルによるARの実現は、さすがに、危険が大きいというか、あれで街を歩くのはまだまだ難しいだろう。

しかし、キャリブレーションの問題や、情報表示の問題など、現実の視界の中に情報表示を重ねる技術は、VRなら簡単に解決できる。カメラによる情報に、別途情報を重ねるだけで良いのだから、既に出来上がっている技術だ。その画面そのものを見るのだから、キャリブレーションの問題もない。
スマホによるAR体験の簡単さは、カメラによる画像を画面で観る、というインターフェイスだからこそ可能になっているという事を忘れてはならないのだ。

QD LENSのような網膜照射型の情報表示の方が、メガネ型よりも多分、遥かに現実的だ。

これなら、視度調整も不要だし、情報の鮮明度も高い。両目への照射が可能なら、3D的な、視界の数十センチのところに画面が浮いている、といった表現だって可能だろう。照射装置をどう付けるかという問題はあるし、現在できている試作品のように、メガネの向こう側に照射装置を設置して、というスタイルだと、やはりキャリブレーションの問題の解決は難しそうだが、そこは、眼球の動きの自由度の高さに期待できるのかもしれない。
網膜に照射できるほどの微弱なレーザー光を安定して出力できる技術というのも、そう簡単ではなさそうだが、それでも、メガネ型デバイスに比べれば、実現の可能性は高そうに思える。

ドラゴンボールに出てくるスカウターを始め、ゴーグルに情報が表示されるデバイスは、昔からフィクションの世界では見慣れているせいか、実現の可能性が高いデバイスだと思われていたような気がする。そして、デモとして動かすレベルのものは確かに簡単にできたのだろう。

カメラのファインダーの中にも、被写体に対する情報が沢山表示されている。それはアナログカメラの頃から。

でも、どうやら、そう簡単なものではないらしいという以上に、そろそろ手を引いた方が良い案件かも知れない。

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