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ロボットという「枯れた」技術の安定と可能性[コラム]

日本のもの作りの現場では、既に長い間、ロボットが稼働していて、なくてはならない労働力となっている。
その技術は、もはや人に取って代わるという段階を超えて、ロボットにしかできないこと、人にしかできないことで分業態勢が出来上がっている。そこで使われている技術も、既に十分熟成して、ひたすら完成度を上げる方向に定着しているようだ。

一方、そのロボット技術を人の動きのサポートに使う、いわゆる強化外装的な方向性には、大きな可能性が秘められているのだ。

2018年1月に東京国際展示場で行われた第3回ロボデックスを取材して思ったのは、ロボットという技術のとてつもない地道さだ。
もはや、工業技術としては伝統工芸品といっても良いレベルで、長く研究され、製作されている工業用ロボットの世界は、既に100Vの家庭用電源で動き、設置設定が簡単で、スマホでも操作が可能といった、実用性の高さ、汎用性の高さがポイントになってきている。

マニュピレーターの技術や、センサーの技術などは、もはや枯れた技術として、安定して動くことは当たり前になり、組立だけでなく、目視で検品するロボットまで登場していた。

一つひとつ、製品を手に取り、4つの眼で製品チェックをしているロボットの姿は、どこか熟練の職人さんにも似て、風格さえ漂っているから不思議なものだ。デザインも、従来のケーブルが剥き出しになった、いかにも機械工作然としたアームではなく、角を落として、キレイに塗装された、見た目にもカッコいい、デザインされた製品になっているのだ。

誰に見せるという訳でもない産業用ロボットも、仕事環境の一部と考えれば、デザインにも注力するのは当然のこと。
単に、人件費を削減するための自動機械としてのロボットではなく、生産になくてはならない精度を出すための、人間を補助する相棒としてのロボットが、工業製品製作の環境の中に、ゆっくりと溶け込んでいく様子が窺えるのだ。

ただ、その成熟度の高さ故、ロボットに画期的な新しさは感じられない。
地道に積み重ねてきた技術と、コンピューターによる制御の技術が、ひたすら完成度を上げていく、そんな段階に来ているのだ。これは、一種の達成だし、いわゆる人型インターフェイスとしてのロボットが、いかに、まだこれからの技術であるかを見せつけるものでもある。

ある程度、できることが頭打ちで、町中でペッパー君やルンバが稼働している現在、人型ロボットが、とてもチープに見えてしまうのは仕方がないことだろう。

むしろ人型ロボットの方向性として面白かったのは、人間の強化外装としての、補助具的な製品だ。
例えば、株式会社ニットーが企画・制作・製造を行う「archelis(アルケリス)」。腰からすねにかけて装着する樹脂のサポーター的な製品で、装着した状況で普通に歩けるのだが、中腰になると、その姿勢でまるで椅子に座っているような状態になって、楽に中腰の姿勢を続けられるのだ。もちろん、腰の位置を動かして、自分が楽な位置で固定することも可能。

実際に試してみたのだが、これが、ちょっと驚くくらいに、ピタリとスツールに座っているような楽な姿勢で、自分を固定することができた。
用途としては、医療手術の現場での、長時間に及ぶ体幹の安定を実現するためのものだそうだ。カーボンと金属を上手く使った、軽量、柔軟、強靭を実現した技術も素晴らしい。医療用具だけあって、価格は20〜30万円ほどになるそうだが、この方向には、大きな可能性を感じた。

歩行中に、どこででも座ることができる道具なのだから、大きなビジネスへと繋がっても不思議ではない。直接コンピューターで制御する製品ではないが、これも、一つのロボティクス的な考え方だろう。

同じような方向性で、福井の株式会社シマノの「STRONG HOLD」という製品も展示されていた。
こちらは、肘を固定して、長時間の手先の作業を可能にする道具で、やはり医療手術を補助するツールとして作られている。考え方も構造も、「archelis」の肘版といったところで、こちらの応用範囲は、日常生活ではなく作業現場に限られるけれど、この方向が、産学官金で連携したプロジェクトで推進されているというのが面白いのだ。

他にも、ロボデックスでは、重いものを持ち上げる時のサポートのための腰から腕に装着するパワードアーム的な製品もいくつも展示されていた。
こちらは、動力を内蔵した、電動アシスト自転車的な、人の動作の後押しをしてくれる道具。イメージ的には、こちらの方がよりロボットに近いが、より未来を感じさせるのは、動力を内蔵しないタイプだというのも、不思議なものだが、今はそういう時代なのだろう。

人間の力を利用して、そのまま補助ツールの機構を動かすのに使うという、それこそ、江戸時代のからくり人形的な、アイディアと構造で生みだす製品の方が、外部エネルギーを使った動力源で動かす機械よりも、技術として新しく感じられるのだ。
それは、動力を使う技術そのものが古くなったという事でもあるし、必要とされるのが高出力ではなく、ミニマムな必要最小限の力だということでもある。

その考え方が広く浸透しているからこそ、段ボールを使うニンテンドーSwitchの新製品「Nintendo Labo」が大きな反響を持って迎えられた。
「Nintendo Labo」のパッケージに、電池や電池ボックス、モーター類が含まれていないというのは、今のテクノロジーの方向性を考える上でも、とても重要なことなのだ。


<参考・参照元>
第3回 ロボデックス ロボット [開発]・[活用] 展 - ロボットに関する全てが一堂に出展 | リードエグジビションジャパン
ウェアラブルチェア「archelis(アルケリス)」
Nintendo Labo | Nintendo Switch | 任天堂

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