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電子マネーは普及するもモバイル決済が伸びない日本。一方、世界のモバイル決済市場は10億人規模へ

市場調査会社ジュピターリサーチが、2017年の全世界のモバイル決済のユーザー数が25億人に達したとするレポートを発表した。現在世界規模で増加するモバイル決済の利用者は、世界的には中国などの新興国やアフリカ諸国で爆発的に増えている。

なぜ、中国やアフリカでモバイル決済の利用者が増えているのか。現状をお伝えする。


世界規模で増え続けるモバイル決済利用者

市場調査会社のジュピターリサーチが、モバイル決済に関する興味深いレポートを発表した。
「デジタルマネートランスファー&送金:国内と海外市場2015-2022」と題されたレポートは、全世界のモバイル決済の利用者数が2017年に25億人に達したと記している。今や全世界人口76億人の3分の一がモバイル決済を利用している計算だが、それにしても急速に、かつ大きく普及しつつある事に驚きを禁じ得ない。

モバイル決済の利用者が爆発的に増えている直接的な原因はスマートフォンの世界的な普及だ。
コンサルティング会社のアウンコンサルティングがまとめた数字を見ると、スマートフォンの国別普及率は先進国よりも中国やアジア諸国などの新興国の方が高いことがわかる。
もともと十分な通信インフラを持たない新興国において、アナログ回線などの通信インフラを一足飛びにしてスマートフォンを普及させたというリープフロッグ現象と呼ばれる現象が起きているが、スマートフォンの普及がモバイル決済の普及の程度も強めている事は容易に想像がつく。


特にミレニアル世代はモバイル決済を志向

同レポートは、2018年以降もモバイル決済の利用が進む理由としてFacebookやWeChatなどのソーシャルメディアの台頭と、Appleペイキャッシュ、Zelleなどのプレーヤーが市場を牽引する事を挙げている。
特にWeChatペイは中国以外の国でもサービスを順次開始しており、今後の普及に拍車をかける可能性がある。

一方、USバンクが行った調査によると、アメリカの消費者の47%が現金よりもデジタル決済を好むと答えており、特にミレニアル世代では49%がデジタル決済を選ぶという結果が出ている。
また、46%の消費者がひと月に現金を使う日が8日未満であると答えている。アメリカでもP2P決済を含めたモバイル決済が当たり前のように使われ始めている。
関係者は、特にサービス開始直後から利用者数を急速に増やしているP2P決済のZelleに注目している。


アフリカがモバイル決済の主要マーケットに

ジュピターリサーチのレポートはまた、全世界のモバイル決済利用者のうち、アフリカと中東の利用者のシェアが最も多い事も指摘している。
全世界282のモバイル決済会社の半数以上が、サブ・サハラン・アフリカ地区(サハラ以南のすべてのアフリカの国。アフリカの大半の国が含まれる)と呼ばれる地域で営業しており、モバイル決済用口座が1億存在しているという。アフリカは15歳以上人口の11.5%がモバイル決済口座を保有しており、世界の他の地域を圧倒している。
2013年からのアフリカの市場成長率は33%にも達しており、今後も高い伸びが期待されるという。

同地域で早くから営業を開始し、今日までにアフリカで最大の市場シェアを持つまでに成長したM-Pesaは、当初は銀行口座を持たないアフリカの人々にお金のやり取りを行わせるモバイル決済口座を提供することからビジネスをスタートさせた。銀行口座を持たないアフリカ人はこれに飛びつき、すぐにアフリカ人の生活にとって欠かせないものとなったのである。
同社は事業をさらに広げ、今日までにクレジット信用貸付、保険、国際間送金などを提供するまでになっている。
モバイル決済が一気に普及した中国と同様、銀行口座を持たない人の割合が高いが故に発生したリープフロッグ現象が、アフリカでも起きている。
一つの社会実験として見ると、アフリカの方がスケールや程度がはるかに大きい。アフリカは今、まるでモバイル決済が切磋琢磨してしのぎを削りあう「進化論」のような過程にあるようだ。


モバイル決済の未来

金融システムの整備が不十分で、国民が十分な金融システムを利用できていない国の方がモバイル決済を受け入れる余地がより多くあり、普及が進む。
モバイル決済は今後、金融システムが不十分で、かつスマートフォンの普及率が高い国やエリアが市場を牽引していくだろう。その意味で、スマートフォンの普及率が82%に達する中国に加え、91%に達するアラブ首長国連邦、86%に達するサウジアラビアなども今後注目すべきと思われる。

一方で我が日本、モバイル決済の現状と今後はどうであろうか。日本銀行がまとめたレポートによると、2017年3月時点の日本の電子マネー対応携帯数と電子マネーの発行数の比率は9.3%にとどまっているという。
また実際にモバイル決済を利用した事があるかという問いに対しては、「利用している」と答えた人の割合がわずか6%にとどまっているという結果が出ている。

日本では「ウォレット」と呼ばれるチャージ式の電子マネーを使う割合が多く、現金好きな日本人の性格が濃く表れている。
電子マネーの利用額は日本が世界の他の国を圧倒している。日本においては、電子マネーの利用範囲が拡大する形でモバイル決済市場が拡大してゆく事になりそうだ。
かたやP2P決済を含むフィンテックが次世代の有望ビジネスと目されており、日本にもそのプレーヤーとして活躍してほしい。

しかしながら、日本から世界をリードするプレーヤーが出る兆しは、今のところ見えていない。


<参考・参照元>
Mobile P2P users to reach 2.5bn in 2018 | ITWeb
世界40カ国、主要OS・機種シェア状況 【2017年2月】
Mobile financial services in Africa: Winning the battle for the customer | McKinsey & Company
モバイル決済の現状と課題 - 日本銀行
U.S. Bank Cash Behavior Survey | 2017 | U.S. Bank

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