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イオンではスーパーのレジで貯金引き出しが可能に!生体認証を利用した銀行の新たな取り組み

銀行に来たら印鑑を忘れていたのであわてて家に戻った、という経験はないだろうか。今後は手続きをするのに印鑑どころか通帳やキャッシュカードも必要なくなるかもしれない。
ここのところ大手銀行が次々と印鑑レス・ペーパーレスに取り組んでいるが、さらに一歩進んだサービスとして期待されているのが生体認証だ。


フィンテックに対抗し印鑑レス・ペーパーレスが進む銀行

マイナス金利政策の影響で利ザヤが減少した銀行の業績は悪化し、抜本的な業務改革を迫られている。
その一環として取り組まれているのが印鑑レス化・ペーパーレス化だ。銀行が100数十年続く印鑑文化の慣習を打ち破ったのは、取引に必要ないくつもの書類を不要とすることで業務効率化を図るためである。
フィンテックの隆盛で銀行が競争力をつけるためには業務そのものを抜本的に変える必要があるのだ。

一方で、こうした取り組みは利用者のサービス向上のためでもある。窓口の手続きは煩雑だ。来店して書類を何枚も書き印鑑を何カ所にも押す。
ネット銀行ではインターネットで手続きが完結するのにこのような作業をするのは不合理極まりないということになる。
印鑑や書類をなくすには、新たな本人確認の方法が必要となる。そこで注目されているのが「生体認証」である。

生体認証は身体的に個体差があるものを認証のキーに使う。方法としては指紋認証、静脈(指や手のひらの内側にある静脈のパターン)認証、虹彩(瞳孔の周りにあるドーナツ状に色が付いた部分)認証がある。
印鑑にしろ、キャッシュカードにしろ、偽造されたり、紛失したものを悪用されたりする危険性は残る。その点、生体認証であれば、確実にそして簡単に本人だと判定できるというメリットがあるのだ。


指紋+静脈認証で住所変更やカードの再発行ができるイオン銀行

すでに、各銀行では生体認証の取り組みが始まっている。

イオン銀行では2018年9月末までに国内の全店舗において指紋と静脈の認証による本人確認の運用を開始する。3本の指の指紋と静脈をあらかじめ登録しておけば口座の住所変更やカードの再発行の手続きを店頭の端末のみで行える。その際にキャッシュカードや暗証番号の入力は不要で、指紋認証の場合は1~2秒で本人確認が終了するという。
ATMでの入出金も指紋認証のみで可能になる予定で、指紋認証による利用可能なATMに順次切り替えていく。

認証基盤にはベンチャー企業リキッド社の大規模高速認証システムを採用した。
指紋・静脈情報を暗号化してイオン銀行のデータセンターの専用サーバーに保管する仕組みだ。リキッドは2013年に設立、画像解析やビッグデータ解析を活用した生体認証技術を開発している。

さらに、2018年春からはイオンスーパーのレジで銀行預金を引き出すサービス(キャッシュアウトサービス)を提供する予定だ。
引き出しには銀行のデビットカードが必要だが、将来的には生体認証が採用され、イオンのスーパーで手ぶらで買い物したり現金を引き出したりできる可能性は十分にありそうだ。

総合スーパー事業を柱とするイオングループは2017年3Qの決算では営業収益が過去最高となったが、営業利益の約7割を総合金融事業やディベロッパー事業が占める。イオン銀行はこの高い収益力を背景として新しいテクノロジーを取り入れることに意欲的だ。
親会社のイオンは総合スーパー、モール合わせて約1,000店舗を誇る強力な販売網がある。今後もテクノロジーを活用して小売と金融の融合が進んでいくだろう。


静脈認証でATMが使えるもみじ銀行

地銀でも生体認証の取り組みは活発だ。もみじ銀行ではキャッシュカードや通帳がなくても指の静脈で取引ができるATMを導入した。
左右の指1本ずつ指の静脈を登録しておくとキャッシュカードや通帳がなくても指をかざし、専用の取引番号を入力することで取引ができる。生体認証はもみじ銀行のすべてのATMで利用できる。また、2018年の4月以降には店頭に電子端末を導入し、窓口の業務効率化を図る。

認証には日立製作所が開発するPBテンプレート公開型生体認証基盤を導入した。
顧客が登録した指の静脈を元データに復元できない公開鍵に変換して一括管理して安全性を高めているのが特徴だ。
もみじ銀行の持ち株会社である山口フィナンシャルグループでは静脈認証を先行して導入しており、2017年9月末時点で月間120人分の事務削減を実現しているという。

さらに2020年までにはグループ全体で事務担当者300人を営業や新規事業に配置転換し、顧客の資産形成など専門性の高いサービスに人的リソースを再配分する。「後方事務ゼロ化」を目指し、事務を担当していたリソースを幅広くジョブローテーションをすることで人材を育てていく方針だ。


生体認証の安全性が課題

生体認証で心配されるのはやはり安全性だ。
生体認証は改ざんされにくいといわれているが、その安全神話を疑問視する声もある。生体情報を盗み取るスキマーはすでに開発されているといわれており、ユーザー名、パスワードを盗み取るのと同じぐらい簡単に生体情報を盗むことができるという説もある。

また、パスワードは変えれば済むが生体は変えることはできないのでリスクを回避できないという問題もある。

こうした懸念を抱えながらも今後の銀行における事務作業の効率化、利便性の向上は加速していくだろう。今後の銀行がどのように変化しているのか、生体認証はその一つのカギでもある。


<参考・参照元>
ASCII.jp:決済にも普及間近?「生体認証」の種類と特徴|定時で帰る経理マンになるための経理TIPS
イオン銀、ATMや一部手続きで生体認証を導入 端末に指かざすだけで本人確認 - SankeiBiz(サンケイビズ)
イオン、全国の店舗のレジにATM機能…銀行の店舗に行く必要消失 | ニコニコニュース
山口FG、傘下3行の事務員300人を配置転換 20年メド、顧客対応強化 :日本経済新聞
生体認証を利用した銀行取引は本当に安全? – カスペルスキー公式ブログ

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