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カリフォルニアの大手農業法人がAI、IoT、ブロックチェーンなどの技術を活用して食品安全性を強化へ

イチゴやブルーベリーなどの各種のベリーを生産しているカリフォルニアの大手農業法人のドリスコルズが、AIパブリッククラウドを活用してロジスティクスを強化し、さらにはブロックチェーン技術を活用して食品トレーサビリティを確保するとして話題になっている。
アメリカの農業生産者の新たな取り組みを紹介する。


150年以上の歴史を持つ農業法人ドリスコルズ

ドリスコルズ(Driscoll’s)は150年以上の歴史を持つカリフォルニアの農業法人だ。
1849年にカリフォルニア州ワトソンビルに入植してきたドリスコル家らが苺の栽培を始めたのが最初で、その後家族農家同士が合併して1904年に法人化、今日までに苺、ブルーベリー、ラズベリー、ブラックベリーなどの各種のベリー類を栽培する巨大農業法人になっている。

60億ドル(2018年4月26日現在日本円にして約6,557億円)規模とされるアメリカのベリー類市場の、およそ3分の1のシェアを持っている。
ドリスコルズのベリーは全米に広く流通し、ウォルマート、セーフウェイ、ホールフーズ・マーケットなどのメジャーなスーパーマーケットで販売されている。

ドリスコルズのロゴがついたベリーのパッケージは、アメリカの消費者にはお馴染みだ。その巨大農業法人のドリスコルズが、AI、やパブリッククラウドを活用してサプライチェーンを強化し、さらにはブロックチェーン技術を使って食品安全性を強化しようとしている。そのドリスコルズの取り組みを紹介する。


各種の新技術をどう活用するのか

ドリスコルズはピークシーズンには毎週3,000万ポンド(約1,360万㎏)ものベリーを出荷している。
出荷の際にはベリーの味などの品質を最大化するための温度管理が必要だが、ベリーの温度管理にAIを活用する事でベリーの品質を均等に高め、出荷作業全体の作業時間を大幅に削減できるとドリスコルズは考えている。

これまで人の経験や勘に頼っていた作業をAIがリプレースする事で、コストも削減できると期待されている。
ドリスコルズはまた、IBMと共同でブロックチェーンを使った食品トレーサビリティ確保の実証実験を行っている。
WHOによると、世界では年に40万人が食中毒で亡くなっている。食中毒による死亡事故が発生した場合、これまでは感染源を特定するまでに2カ月以上の時間がかかり、感染の封じ込めに支障をきたしていた。生産者から消費者までの流通の各工程をブロックチェーンで記録する事で流通のトレーサビリティが確保できる。

また、農産物の生産者、流通業者、販売者、消費者へブロックチェーンへのアクセスを開放する事で、食中毒についての情報共有が速やかに行われ、感染拡大を防ぐ事ができる。
さらに、トレーサビリティに関する情報を消費者に提供する事で、消費者のドリスコルズへのロイヤリティも確保できる。


パブリッククラウドの活用も

ドリスコルズはさらに、Microsoft AzureやAmazon Web Serviceなどのパブリッククラウドを活用し、サプライチェーン全体のデータを管理する事も計画している。

ベリーのサプライチェーンにおけるロケーション、時間、温度、湿度などの情報をBluetooth装備のGPSセンサーで収集し、積載するトラックの最適温度をリアルタイムで調整する。温度が高くなればドライバーへ対応を促す。サプライチェーン全体を管理する事で輸送中のロスやダメージを防止する事が可能となる。

ドリスコルズは現在、GPSマップを搭載したソフトウェアでロジスティクスを管理しているが、将来的にはパブリッククラウドで収集した各種のデータを蓄積して、需要予測や各種の分析を行いたいとしている。


ロボット技術の導入も

ドリスコルズはまた、スペインのベンチャー企業と共同でベリーの摘み取りロボットの導入実験も行っている。
複数の農業用ロボット開発会社へ投資をしているというドリスコルズだが、将来のアメリカの農業にロボットが投入されることを見据えているようだ。生産から摘み取りまでロボットが行い、インターネットを通じてパブリッククラウドのデータセンターへデータが送られ、各種のAIが分析を行うという近未来の状況が目に浮かんでくる。

ドリスコルズの取組のうちで、筆者が最も関心があるのが食品トレーサビリティの確保だ。
アメリカの農業、食品産業においては、トレーサビリティの問題が消費者の間で大きな関心を集めている。特に遺伝子組み換え食品などは、生産から消費までの全工程においてトレーサビリティを確保する事が求められている。

それゆえ、ドリスコルズがIBMと共同で行っているブロックチェーンを使った食品トレーサビリティ確保の実験の結果は、間違いなく今後他の生産者にも影響を与えるだろう。


オーガニックベリーなどには特に有効

ブロックチェーンを使った食品トレーサビリティの確保は、特に無農薬などのオーガニックなベリーのマーケティングにも有効だろう。
店頭で販売されるベリーのパッケージにトレーサビリティデータへのアクセス方法が記載され、パソコンやスマホでアクセスできる。データからはどの産地からどの流通路を経て販売されたかがリアルタイムで確認できる。

ドリスコルズのオーガニックベリーが他社に先駆けてそのような仕組みが提供できれば、大きく差別化できる。
筆者の予想では、ドリスコルズは間違いなくそれを実現するだろう。農産物のトレーサビリティを生産者と消費者がリアルタイムで共有する時代がまもなくやってくるのは間違いない。


<参考・参照元>
Driscoll's using new technology to improve flavor, food safety | Food Safety News
Fresh Berries
Blockchain: Dole and Driscoll's on board

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