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北京市が食の安全性の確保にビッグデータやクラウドを活用へ。中国産食材の安全性は改善するか?

北京市商業委員会がビッグデータクラウドコンピューティングを使って北京市内の食の安全性を確保するというニュースを新華社が報じている。

食のトレーサビリティと安全性を確保すという当局の狙い通りに行くのだろうか?中国の食の安全性についての各種の情報と共に、今後の展開などを予想してみた。


年間百数十人が食中毒で死亡、低レベルな食の安全性

121名。この数字がなにかご存知だろうか。これは、2015年に中国で、食中毒で亡くなった人の数である。
中国では毎年百数十名が食中毒で亡くなる。そして、亡くならないにしても毎年相当数の人が食中毒の被害に遭う。

食中毒などに加え、中国では企業による食品汚染事件が度々発生する。2008年にはメラミンで汚染された粉ミルクが出荷され、飲んだ乳児6名が死亡する事件が発生している。また、同年に化学物質のジクロルボスに汚染されたインゲン豆が日本に輸出され、食べた主婦が入院するという事件も発生した。

2010年には排水溝の下水を濾過して作られた「下水油」事件も発生、多くの人が摂取する大規模な社会問題となり、同じ時期にプラスチックを混ぜた「プラスチック米」がインドネシアなどへ輸出される事件も発生している。食の安全性については、残念ながら低レベルであるとせざるを得ない。


中国で食べてはいけないものとは?

中国の食の安全性について、食品工学を専攻したというある中国人大学院生が、「中国で食べてはいけないもの」として以下の10の食品を挙げている。

・牛乳
・野菜
・魚
・カエル
・ウナギ
・貝
・燻製食品
・レストランでの食事
・冷凍餃子
・道での販売

まずは牛乳。特にUHTと呼ばれる高温殺菌された牛乳は添加剤が混ぜられているものが多いので飲んではいけない。また、多くの牛乳に人工甘味料が含まれているという。
野菜も危険。中国の野菜の多くに農薬が過剰に使われている。農薬が野菜の根まで浸透し、洗っても落ちない。野菜が食べたければ信頼できるオーガニック野菜の生産者から買うしかない。

魚も危険。特に市場で売られている生きた魚は危険。投稿者によると、中国の市場で売られている生きた魚は、マラカイト・グリーンという物質が混ぜられた水の中を泳いでいる。マラカイト・グリーンは発がん性物質で、人体への影響が懸念されている。
そのほか、カエルとウナギ、エビ、燻製肉、冷凍餃子、屋台の食べ物などを「食べてはいけないもの」として挙げ、警鐘を鳴らしている。多少誇大に訴えている感も覚えるが、全くの事実無根というわけでもないだろう。

中国の食の安全性は、全体レベルで脅かされている可能性があると思われる。


ビッグデータとクラウドコンピューティングを活用へ

そんな中国で最近、ビッグデータとクラウドコンピューティングを活用して食の安全性とトレーサビリティを確保しようというプロジェクトが始まった。
北京市商業委員会が発表したところによると、クラウドベースのシステムは、食品の生産、加工、パッケージ、流通、販売までのサプライチェーンのすべての取引をデータベース化し、関係者で共有するものだという。システムの開発は中国の大手IT企業JD.comが行うとしている。

ビッグデータを一般の消費者にも公開するのかについては公表されていないが、関係者が情報を共有することで、サプライチェーンレベルでの食の安全性確保へ向けた一定の効果は出せるかも知れない。
少なくとも食品トレーサビリティが確保出来れば、食中毒などが発生した際のトラッキングも容易にできるようになるはずだ。

北京市商業委員会によると、2017年末時点で同システムは北京市内で1,778の豚肉のトレーサビリティ観測点と2,383の野菜のトレーサビリティ観測点をそれぞれ確保したという。
2018年中にそれぞれ1,900点と2,600点に増やしたいとしているが、システムの導入は着実に進んでいるようだ。


新技術で食の安全性は確保できるか?

システムの普及により中国の食の安全性が確保できるかだが、筆者は楽観的な予想と悲観的な予想のどちらもしている。
まずは楽観的な予想だが、中国ではアメリカのウォルマートがIBMと共同でトレーサビリティ確保のためのシステム構築を始めている。アメリカ向けに商品を製造している中国産食品も度々汚染事故などを起こしていて、アメリカの企業がイニシアティブをとるかたちでトレーサビリティ確保を目指している。

日本向け食品も含めた輸出用食品の領域では、トレーサビリティ確保と安全性確保が一定の水準で実現すると予想する。
一方の悲観的な予想だが、中国の一般消費者の間においては、食の安全性確保は困難かも知れない。システムの普及以前に、中国人同士がお互いを信頼していないからだ。

前に日本に住む知人の中国人が次のように言ったことがある。
中国へ日本産の食品を輸出している彼は、中国人が日本産の食品を争って買う事について、「世界で最も中国人を信用していないのは中国人です。中国人は、隙があれば中国人を騙そうとします。お互いがお互いを信用しないからお互いが作ったものを信用していない。でも日本人は信用できる。日本人なら人を騙そうとしないから信用できる。中国人が、日本人が作った米や粉ミルクを買うのはそれが理由です」と話していた。

中国人同士がお互いを信用していない、故に食の安全性が低い。仮にこの前提が真実だとすると事態を改善するのは相当困難だろう。
筆者のこの悲観的な予想が間違いであることを願う次第である。


<参考・参照元>
Big data to help ensure food safety in Beijing - Xinhua | English.news.cn
China's food poisoning deaths up in 2015 - Xinhua | English.news.cn
日本で食中毒にかかる人は年に何人?:農林水産省
Foods Everyone Should Avoid in China | fish | pollution | seafood | The Epoch Times
メラミン混入粉ミルク事件の余波消えず:日経ビジネスオンライン
asahi.com(朝日新聞社):農薬冷凍インゲン 厚労省、販売中止を指示 - 食品不正
驚きの中国産食品 高級コメは「プラスチック製」です!(週刊現代) | 現代ビジネス | 講談社(2/5)

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