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キャッシャーの次に失職するのはバイヤーと店長?AIがスーパーの店長に就任する日

香港の英字新聞サウスチャイナ・モーニング・ポストが、中国の大手IT企業のバイドゥがスーパーマーケット用AIを開発していると報じている。同社が開発中のAIは、人間のバイヤーや店長に代わって売れ筋などの情報を予測し、最適な発注を行うという。

AIが店長に就任する日はやって来るのか、近未来を占ってみた。


アメリカではAmazon Goがついにオープン

2018年1月、米国ワシントン州シアトルにキャッシャーレス・スーパーマーケットAmazon Goの第一号店がオープンし、話題を集めた。

世界初のキャッシャーレス・スーパーマーケットのグランドオープニングには地元住民に加えて全米から客が集まり、長蛇の列を作った。
キャッシャーレス、つまりキャッシャーがいないAmazon Goは、簡単に入店して品物をつかみ、そのまま出店できるという手軽さから、「グラブ・アンド・ゴー(Grab and Go)」というキャッチフレーズが付けられている。「(品物を)掴んでそのままゴー」という意味だ。

Amazon Goのようなキャッシャーレス店舗が普及すると、現在のアメリカでキャッシャーの仕事をしている300万人以上の人が失職する可能性があると言われている。
日本でもスーパーマーケットを中心にキャッシャーレス化が進みつつあるが、特に食品・生鮮食料品店のキャッシャーレス化は、先進国における共通のトレンドとなりつつあるようだ。
そうした中、中国の大手IT企業のバイドゥが、スーパーマーケットの仕入れのための需要予測を行うAIを開発しているというニュースが報じられた。

バイドゥが開発中のスーパーマーケット用AIとは、一体どのようなものなのだろうか。


バイドゥが開発中のスーパーマーケット用AI

改めて言うまでもないが、スーパーマーケットやコンビニには店長がいる。
店長の主な仕事は、客のニーズを満たす品物を揃え、在庫を適切に管理する事である。例えばコンビニの売上の多くは仕入れに依っていて、店長は毎日の天候、時節のトレンド、地域のイベントといった各種の条件を勘案し、仕入れを行う。

優れた店長、俗に「スーパー店長」と呼ばれるらしいが、になると、例えば地域の小学校の運動会に合わせて弁当やおにぎりなどの仕入れを調整して売上を増やす。夏の暑い日などにはアイスや清涼飲料水などを拡充して客のニーズを満たす。そのようにして売上を最大化するのが店長の役割だ。

バイドゥが開発中のスーパーマーケット用AIとは、そうした店長が行っている需要予測を行うAIだ。
バイドゥのスーパーマーケット用AIは、客の購買履歴、売れ筋情報、地域のイベント情報などの70もの要素を分析し、需要予測を行う。
特に弁当やサンドウィッチなどの需要を予測し、ロスを最小限に抑える。バイドゥが中国国内の10のコンビニエンスストアで実験を行ったところ、利益が平均で20%増加し、ロスが30%削減されたという。


“人間の店長” VS “AI店長”

これまでは人間の店長の経験や勘に頼ってきた需要予測をAIにやらせるという取組みだが、はたしてどちらにやらせる方がいいのだろうか。
筆者が知るある大手リテールチェーンでもAIを使った購買レコメンデーションの実験を行っているが、直近の実験では人間対AIの成績は互角だったという。AIはマシンラーニングで精度をどんどん上げるので、データが蓄積する今後は間違いなくAIのパフォーマンスが人間のそれを上回ると予想されている。

バイドゥの担当者もAIの能力を十分に認めていて、2018年内に中国・武漢市内のコンビニエンスストア約200店にAIを導入するとコメントしている。
「AIはデータの蓄積が増えるほど、精度が上がります」としている。
確かに、データ蓄積と分析、学習においては、人間よりもAIに分があるとせざるを得ないだろう。


果たしてAIは店長に就任するのか?

コンビニエンスストアやスーパーマーケットにおける需要予測は、ある種天気予報のプロセスと似ている。
天気予報も、過去の膨大な気象情報を集積し、それを基にシミュレーションを行い、予報のためのデータを出力する。データの収集と分析にはスーパーコンピューターが使われ、膨大なコンピューティングリソースが消費される。
以前は人間の経験と勘に頼っていた天気予報は、今ではスーパーコンピューターの助けなくしては成立しなくなっている。

筆者の予想では、天気予報の世界でスーパーコンピューターが普通に使われるようになったように、リテールの世界においてもAIが普通に使われるようになると思う。
過去の購買履歴や売れ筋情報、天候パターンやイベント情報といった各種の膨大な情報を集積し、AIがマシンラーニングをしながら需要予測を行う。人間の経験や勘に頼るのではなく、天気予報のように需要予測を行う。そうした時代がまもなくやって来ると思う。

そのような状況が訪れた場合、人間の店長は職を失ってしまうのだろうか。
筆者の答えはノーだ。スーパーコンピューターを使うのが当たり前となった天気予報の世界でも、最終的な判断は人間の気象予報士が行っている。
リテールの世界でも、それと似たような状態になると予想する。最終的な意思決定とリスクテイクをするのはあくまでも人間だ。AIに人格や人権が付与でもされない限り、それは不変だと思う。
これからの時代は、AIを上手に使いこなし、果敢にリスクテイクして売上を伸ばす店長が「スーパー店長」と呼ばれることになるだろう。


<参考・参照元>
After cashiers, supermarket managers may be next to lose jobs as AI predicts what to stock | South China Morning Post
Amazon GO1号店がついにシアトルにオープン!レジがないAIコンビニの全貌とは
天気予報 スパコン|天気予報とIT技術|クローズアップ|HH News & Reports|ハミングヘッズ

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