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AIが酪農経営を効率化?AIカメラを使った酪農農家用乳牛管理システムとは?

アメリカの大手農業法人のカーギルがアイルランドのCainthusと共同でAIカメラを使った酪農農家用乳牛管理システムを開発し、話題となっている。
乳牛一頭ずつの顔を認識し、健康状態などをチェックしながら最適な餌や水の量を算出し、病気を通報する仕組みは本当に酪農農家の経営を効率化するのか?
カーギルとCainthusの取組を紹介する。


カーギルとCainthusが開発した酪農農家用乳牛管理システム

アメリカの大手農業法人のカーギルが、アイルランドのベンチャー企業Cainthusと共同で酪農農家用乳牛管理システムを開発した。
カーギルの発表によると、同システムはCainthusが開発した顔認識AIカメラをベースにしたもので、乳業一頭ずつを認識、餌や水などの摂取状況や体温などを管理する。Cainthusによると、同システムはそれぞれの乳牛の顔イメージをわずか数秒で記憶し、一頭ごとの動きを監視できるという。

それぞれの乳牛の行動パターンも認識でき、病気や怪我などが疑われるとパソコンやスマホにアラートが送信される。
これまでの酪農では、乳牛に与える餌や水の量を酪農家の経験や勘に頼って計算してきた。
牛乳の搾乳状態や全体の餌や水の消費量などを数カ月単位で計測し、気温や天候などを加味して全体量を算出してきた。Cainthusのシステムは、AIのアルゴリズムを使って個別の牛の摂取量を分析し、適切な餌と水の量をリアルタイムで計算する。

それにより、乳牛の健康状態を維持して病死などを防ぎ、経営の効率化とコスト削減を同時に実現できるとしている。
ところで、Cainthusによると、牛の顔も人間の顔と同様、それぞれユニークなのだそうだ。


人間がいない方が乳牛は幸せ?

「牛とロボットは、もともと相性が良いのです」とCainthusの共同創業者デービッド・ハント氏は説明する。
基本的に牛は人間が自分の周りにいない事を好む。なぜなら、牛は人間を「自分の敵」だと認識しているからだ。よって人間の代わりにAIカメラを使って牛を監視する方が、牛の健康維持上プラスになるという。

また、牛は時折“跛行(はこう)”と呼ばれる歩行困難が生じる病気にかかる。跛行にかかると牛は餌や水をとらなくなり、どんどん痩せてゆく。痩せると乳の出が悪くなり、酪農農家の経営に悪影響が出る。
しかし、AIカメラで牛を常時監視していれば、跛行の初期段階をリアルタイムで検知できる。早めに処置を施せば症状の悪化が防げるのだ。

「(大規模な農場のように)特に多くの牛を飼っているケースでは、跛行にかかった牛を見分けるのが困難です。牛が跛行にかかると1頭あたり年間241ドルの損失が発生します。我々のシステムは月にわずか1頭あたり10ドルで利用できます」


喧嘩をしがちな牛には栄養強化を

AIカメラはまた、喧嘩をしがちな牛をモニタリングし、栄養を強化した餌を与えるようアドバイスも行う。

「牛同士は我々の想像以上に頻繁に喧嘩をします。そして喧嘩の他の牛への影響は大きいのです」とハント氏。
「(牛同士の喧嘩が始まると)牛たちは餌を食べるのをやめて喧嘩を見るために移動し始めます。(そうなると牛乳の生産に影響が出るため)よって喧嘩をしがちな牛には栄養を強化した餌を与えて気を静めるようアドバイスします。それにより喧嘩を防止し、牛乳の生産量を上げる事ができます」

人間が牛の1頭1頭を四六時中監視することはできない。だが、AIカメラを使えば1頭1頭を常に監視する事ができる。複雑な牛の行動パターンを認識し、「人間のスケジュールに牛のスケジュールを合わせるではなく、牛のスケジュールに人間のスケジュールを合わせる」ことで、牛乳の生産性を上げる事が可能となるのだ。
特に大規模な酪農農家の場合、Cainthusのシステムを導入することで大きなメリットが得られる。


いずれは豚、鶏、魚などにも拡大へ

カーギルとCainthusは、今回リリースしたシステムを当面は乳牛にフォーカスさせるものの、いずれは豚、鶏、七面鳥、魚などへも拡大してゆきたいとしている。
魚の顔認識など技術的に相当ハードルが高そうだが、両社では可能だと判断しているのだろう。また、両社が開発したシステムはAgtechと呼ばれる農業における新ビジネスだが、Agtechにおける今後の展開を垣間見させるものでもある。

まず、Agtechの多くは今後、省力化を目的のひとつとするだろう。カーギルは自身のホームページで「農業人材不足の解決」を謳っており、今回のシステム開発もその解決を目指したものとなっている。

AIカメラと連動した各種のロボットが、人間に代わって家畜に餌や水をやったりする時代が来るのもそれほど先の話でもないかも知れない。
ハント氏も、「私にとって最高の酪農とは人間が関与しない酪農です。それを実現させる唯一の方法はロボットを使う事です」とコメントし、ロボットがいずれは人間をリプレースすることを暗示している。

ハント氏はさらに、AIカメラやロボットの価格が下がり、農業での普及が進むとも予想している。筆者が知るある日本のベンチャー企業もAIカメラを開発しているが、その会社の経営者も、中国製のスマートフォンでも使用されている汎用的なカメラやセンサーでも十分な性能を有していて、AIカメラの部品として使ってもまったく問題ないと話していた。
カーギルとCainthusが開発したシステムが、今後どう普及・成長してゆくのか見ものだ。大きな期待とともに注目してゆきたい。


<参考・参照元>
Got A.I.? Facial Recognition Now Works on Cows For Better Milk | Digital Trends
Cargill brings facial recognition capability to farmers through strategic equity investment in
Cargill invests in facial recognition — for cows, pigs too - StarTribune.com
Forget the plow: Robots and facial recognition for cows will be essential tools on the digital farm - TechRepublic

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