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パーソナルデータを有効活用する情報銀行の未来を探る

日本政府は2020年までに30兆円の付加価値を生み出すという「未来投資戦略2017」を推進している。

この一環として、IoTAIビッグデータの活用はもとより、パーソナルデータの管理・蓄積・活用を進める情報銀行の運用も検討されている。
個人の情報を蓄積し有効活用していくという情報銀行、どのような仕組みなのか。情報社会の未来を探る。


情報銀行とはどんなものか

個人情報を含むデータの活用から新しいサービスや国民の利便性の向上を狙うのが情報銀行だ。
膨大な情報が溢れる現代社会。さまざまなことが情報により判断される。情報銀行では個人の同意のもとで本人のデータを預かり、そのデータを個人に変わり蓄積・管理・活用する。

そして、結果として得られた便益を個人に還元する。「日本再興戦略2016」において議論が展開されており、2017年には実証実験も開始された。

一例をあげてみよう。
例えば、通販サイトのAmazonで買い物をしたとする。次回ログインした際におすすめの商品が表示されるのではないだろうか。
これは、購入した人の情報を分析しニーズに合った商品をすすめるといった仕組みだ。現時点では、単独一社の情報に基づきおすすめ商品が表示される。

しかし、情報銀行の普及が進めば、個人の預託によりさまざまな情報が統合管理され、より、ニーズに沿ったおすすめ商品の分析が可能となる。
例えば、家を建てたという情報が情報銀行で共有されることにより、趣味嗜好にマッチした家具の購入や保険商品の提案がなされるといったことも可能だ。データが流通することにより、個人のさまざまな情報から読み取れるニーズを分析した最適な情報の提供が期待される。


パーソナルデータの活用

日々の生活のなかでネットショッピングをしたり街に買い物に出かけたりした際に、クレジットカードや電子マネーなど利用履歴はデータとして蓄積される。
また、スマートフォンの位置情報などは人々の動きを知るビッグデータとしても活用されている。これらは、すべて、個人のログともいえる。

こうした個人ログを有効利用するために立ち上げられたのが「データ流通環境整備検討会」だ。個人のログ情報を特定の事業者だけではなく別の事業者とも共有し活用しようとする試みだ。

個人の購買履歴・家族構成・健康状態・位置情報など集約されたデータを個人の許可のもと情報銀行に預託する。情報銀行では情報を管理し、個人のニーズにマッチした業者に提供する。

結果として、情報を預託した個人に便益が還元される。もちろん、個人のニーズにマッチしていない事業者には情報は提供されない。
情報銀行が普及すれば、個人の手を煩わすことなく、スムーズなデータの流通が可能だ。これは、個人・事業者双方にメリットを与える。


情報銀行の実証実験

インターネットとさまざまなものが繋がるIoT、タブレットやスマートフォンなどの普及により、パーソナルデータは日々、生成され続けている。
また、電子マネーや電子商取引、Fintechなどにより取り扱われるデータも膨大な量に上る。こうした情報を有効活用しようという考えのもと、さまざまな取り組みが行われている。

その一つが、富士通とイオンフィナンシャルサービスによる情報銀行の実証実験だ。
2017年8月から10月の2カ月にわたって行われた。被験者は富士通の社員。パーソナルデータを提供する。毎日10問の質問に答えていき、家族構成などの属性情報・趣味嗜好・体調や気分などを情報銀行に寄託した。

また、この情報を提供する企業も被験者が選ぶ。被験者が承諾したデータのみが企業にわたる仕組みだ。

今回、利用されたのはMetaArcというプラットフォームである。富士通はこの実証実験により、データ管理の安全性や運用性などを調査した。
また、預託された情報量に基づきFUJITUコインという仮想通貨を付与した。このコインはブロックチェーンで管理され、クーポンに変えることにより店舗でも利用可能だ。被験者のインセンティブを高めることを目的としている。

イオンフィナンシャルサービスでは、実際にパーソナルデータを利用する側として参加しその活用を検証した。
企業が如何にパーソナルデータを活用するべきか、サービスの提供を有効に進めていくためのノウハウの蓄積が目的だ。パーソナルデータの分析に基づき保険商品などの提案の可能性を模索すると同時に技術面・セキュリティ面の検証を行っている。

将来的には顧客のライフステージに合わせたサービスの提供などを考えている。


今後の課題

パーソナルデータには、当然知られたくない情報も含まれている。

個人情報保護法などにみられるように、今まで情報とは保護されるものだった。しかし、2017年施行の改正個人情報保護法では、本人の同意を得ることにより利用が可能とされている。また、情報提供者の記録を一定期間保存するなどトレーサビリティに関しても明記されている。

情報の有効活用を進めていくためには国民のコンセンサスは不可欠だ。そのためにも、安全かつ円滑にデータを活用する技術の確立が求められる。
また、こうした情報の有効利用を広く一般的に理解してもらうことも重要な課題となる。情報は秘密にするものといった考え方ではなく、オープンにすることで有効活用できるといった広報活動も必要なのだ。

技術面・事業面・制度面・安全面、そして、国民の理解など、まだ解決するべき課題は多くあるが、データ流通により個人の利便性を高めることが期待されるのはいうまでもない。

パーソナルデータを個人の預託に基づき管理する情報銀行。その安全かつ円滑な活用を目指して政府が本腰を入れている。その技術の確立が待たれる。


<参考・参照元>
パーソナルデータを活用した情報銀行の実証実験を開始 - イオンフィナンシャルグループ
情報銀行 - みずほ総合研究所
パーソナルデータを活用した情報銀行の実証実験を開始 : 富士通
情報銀行?MetaArcが生み出す新たな価値 - 日経 xTECH Special
総務省の「情報信託機能の社会実装に向けた調査研究」を受託 | DNP 大日本印刷株式会社

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