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社会スキル育成の最強ツールとなるか?教育向けSNS活用の利点とその現状

教育現場におけるICTの整備が急がれる今、教育向けSNSに注目が集まっている。
新たなコミュニケーションの場を提供するだけではなく、学生生活支援や受験生への広報など幅広い役割への期待が高まっている。ここでは教育向けSNSを活用するメリットや導入に際しての課題など、活用事例を交えながら解説していく。


教育向けSNSとは

教育向け(学校向け)SNSとは、facebookやTwitterといった一般的なサービスとは異なり、教師や職員がコミュニティを管理するネットワークサービスを指す。
部外者には解放されず、基本的にはパスワードの配布は生徒や保護者に対してのみ行われる。

モバイル機器の社会への普及に従って、ソーシャルネットワークサービスは若年層から高齢者層まで幅広く浸透している。
2016年には20代のSNS利用率は、約98%に達した。それぞれのコミュニティを通じ、交わされる情報は日々拡散し、マーケティングの分野でも欠かすことのできない戦略とされている。

教育向けSNSはこうした社会背景の元、生活のインフラとなりつつあるSNSの利便性を、教育現場に活かす目的で導入されている。
教育用SNSの中では、通常のSNSと同様に各々が自由に投稿できるが、生徒同士の発言を管理者はすべて把握できる。不特定多数が利用する一般的なサービスとは違い、コミュニティが制限されていることでセキュリティ管理が容易となるのだ。

教育向けSNSが先行する米国ではEdmodoが広く普及しており、国内向けには2015年にソニーとの提携で日本語版が提供されている。
日本企業が開発したクラス向けプライベートSNSのednityも、小中学校での活用が進んでいる。そのほかにも大手IT企業による教育用SNS市場への相次ぐ参入が活発化している。


教育向けSNSを導入するメリット

SNSを教育現場に導入するメリットは、SNSの持つ情報共有の機能とその即時性により連絡網の課題をすべてクリアできる点にある。
教師から全体・個別の生徒への発信ができ、親に対しての広報も同時に行える。

小学生にありがちな、大切なプリントがランドセルの奥でくしゃくしゃになっているというような事態も、SNSを通じて親に確認を促せば見逃すことが少なくなるだろう。
親から先生に対する質問をダイレクトに行えるほか、全体に対する質問として投げかけることも可能となる。多忙な親にとっては、こうしたやり取りが時間や場所に関係なく行えるのも、大きなメリットだ。

教育向けSNSサービスの多くは、メッセージ機能や同報機能だけではなく、課題の提出やミニテストなどといった機能が付加されている。
資料の閲覧などの指示もSNSを通じれば、ずっと楽に出せるようになる。生徒や親への連絡がSNSにより簡略化、時短化され、教師の業務軽減に大きく役立つだろう。

双方向の密なコミュニケーションの基点となり、人間力や社会力を養う場が提供される。SNSに慣れ親しんだ世代であれば、口下手な学生や普段は目立たない生徒などにとっても参加へのハードルがぐんと低くなるはずだ。
情報を共有することで一体感が高まり、意見の多様性を理解するきっかけともなるだろう。学校によっては学生ごとの目標設定や学修記録に利用したり、受験生に向けた広報に活用したりしているケースも見られる。


教育向けSNS活用事例

実際には教育向けSNSは、どのような活用効果を上げているのだろうか。
ある課題に対してSNSに投稿された意見をスクリーンに映して、議論を行うといった大学での授業の例がある。授業に必要な用語については、教育用SNSに付帯された機能で調べることができるのだ。

講義後の講師に対する質問も、SNSの中で行われている。教育向けSNSという使い方の枠を超え、高校生向け教育雑誌の編集に向けて、学生、高校生、雑誌編集者と意見共有を行ったケースもある。
また学生のインターンシップを受け入れている企業が、インターンシップの様子を大学や関係企業、学生と情報共有するのにもSNSが活用されている。

中学校の部活でSNSを活用している事例では、日々の活動内容を記録し、活動についての意見や感想を書き込むといった使い方がされている。
部員同士で活発な意見の交換が行われ、議論の流れがすべて記録されることで、決定事項に対してのあいまいさがなくなったという。さらに議論を深めるきっかけとなったり、振り返りの際には資料となったりするなどSNS活用の意義は大きい。

SNSのもつリアルタイム性とともに、経過の表示という特性が活かされる。

小学校でも国語や英語の授業にSNSを積極的に取り入れているケースが見られる。
短歌や随筆の授業では、作品を題材となった写真や資料とともに投稿し、感想をコメントとして投稿し合う方式をとった。

「つぶやき」に慣れている生徒たちは、自由に感想を述べ合ったり疑問を提示したりしながら、随筆の例では生徒1人あたり平均3コメントを上げる結果となった。通常の授業では個人の発言数を増やすことに限りがあるが、SNSの活用で各人の意見発表の場を増やすという効果が得られている。

教育向けSNSと聞くと連絡ツールのイメージが大きいが、現場の工夫次第では授業の形態を変えていく大きな可能性が感じられる。


教育向けSNSの課題とは?

韓国の小学校ではすでに8割の導入が進む教育向けSNSだが、日本ではまだいくつかの私立校の例を除き、試験的な段階にあるといえる。
教師、親を含めた現場の抵抗感は根強いようだ。

特に公立学校の公共性といった特質を考えると、教育向けとはいえ授業にSNSを活用するのはそう簡単ではない。導入に向けての課題となるのは、活用する意義の明確化だ。
現行の方法でも対応できていることが、新しいシステム導入の障害となるのはSNSに限ったことではない。メリットがデメリットを上回らなければ、教育向けSNSを運用するための説得力に欠ける。

教育向けSNS導入に際して必要となるのは安全に運用できる体制やルールづくり、教師の情報リテラシー向上、情報モラル、運用管理の指導、保護者からの賛同と周知の徹底、そして何よりも重要なのが生徒や学生に対するリスク管理だ。

教育向けSNSは利便性があり、効率的な学校運営や学習能力の向上にも期待が高い。
他方、間違った形での情報ツールの活用は、個人情報の漏えいや一般的なSNSの際の危険な利用のきっかけともなりかねない。運用・指導する側が危険と有用性の双方への理解を深め、本当に必要な機能のみにとどめた上で、教師による完全なコントロール下におけることが条件となる。

教育向けSNSの選定に際しては、対象学年ごとの不可欠な機能と削除すべき機能の見極めを徹底する必要がある。教育用SNSの研究の中では「コミュニティ」という概念が、年少児童には理解しづらいという点が指摘された。
こうした課題についても、各教育施設なりの指導法を模索していかなければSNSというツールを活用する意味が薄まってしまう恐れもある。

また、初期導入時の労力がかかるという点も大きな課題だ。
しかし、ここを丁寧にしなければ、運用上のリスクが肥大化する可能性が出てくる。教師に対する負担を考慮に入れ、操作の容易さ、管理のしやすさなどを要点としながら、導入に向けた検討を重ねていく姿勢が問われる。


<参考・参照元>
公立中学で学校SNS「Classting」を活用、導入や運用のポイントとは? | リセマム
中等教育における教育用SNSの活用が可能にする新たな学習方法および家庭との連携方法の実践と検証
ウェブ連絡帳『Kidsly』学校用SNS『CLASSTING』〜教育ITソリューションEXPOレポート[ソフト編] – ICT toolbox
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