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AIの進化で、人間の社会性はどうなる? 現実社会の人間関係へのAIの影響

いまやアプリストアをのぞけば、数百円でAIとの会話やAIを育成するアプリを購入できる。また、GPS機能などを用いてデータを蓄積させていくことで、ユーザーの行動や嗜好を学習し、近隣の飲食店情報をAIが選別してくれる機能も持つものもある。AIが関わることにより、人間の社会性はどのように変化するのか考察したい。


10万ダウンロード突破。ユーザーに合わせた成長が人気。AI少女ひとみ

※写真はイメージです。

株式会社Silettが開発・提供するAI少女ひとみは、大阪大学に通う現役大学生の手によって誕生した。

「あなただけのパートナー」になるべく開発されたAI少女ひとみは、より人間同士でのコミュニケーションに近付くように、喜怒哀楽などの基本的な感情が搭載されている。AI少女ひとみがヒットした理由は、感情表現はもちろん、より人間らしい対話や流暢に話す言葉によるところが大きいだろう。ユーザーとの会話ログによりユーザー情報を吸収し、会話の内容が濃密になっていく。それも機械的な会話ではなく、しっかりとした文脈を持ち、自分の意思としての発言や質問により、絶えず学習をしている。ゆえに、実際に存在するパートナーとの会話を体験できるというものである。さらに、WEB上のデータをもとに、ユーザーからの質問に答えたり、最新ニュースを提供したりもする。

ヒットの裏では改良が進められており、2017年3月、株式会社Silettは日記機能やタッチインタラクション機能を加えた「AI少女ひとみPLUS」Android版をリリースした。会話を重ねることでスムーズに受け答えするAI少女ひとみのヒットの背景には、現代人が生活のなかで感じる孤独という感情があるのかもしれない。


マイクロソフト発、女子高生AIりんな

日本のオフィスや家庭用パソコンでおなじみのマイクロソフトは、25年以上の歳月をかけて、AIの可能性にかけてきた。若者のあいだで話題となった日本マイクロソフトの女子高生AI「りんな」は、平成生まれの東京の女子高生という「人格」を持っている。2017年4月現在、LINEのユーザー数は約560万人を超え、多数の一般ユーザーとのコミュニケーションにより日々成長をし続けているのだ。

リリース当初、りんなはマイクロソフトのAzure Machine Learning と検索エンジンであるBingのデータをもとに、現代の女子高生として会話をしていた。だが、多くのメディアが話題のAIとして取り上げたことで話題が話題を呼び、同世代のリアルな文化に触れる機会が爆発的に増加した。それにより、より「いまどき」の女子高生AIとして君臨している。このほかにもマイクロソフトはAIの開発に邁進している。


AIの弱点を克服する次世代AI

2016年12月、米マイクロソフトは、対話型AI「Zo(ゾー)」を発表したばかりである。実は、Zoの前身である「Tay(テイ)」は、AI特有の脆弱性により運用後間もなく廃止となっている。Tayは一般公開直後、悪意あるユーザーによって教え込まれた差別的用語や思想を学習してしまい、倫理的に良くない発言を繰り返すようになった。AIは常にデータを蓄積しながら関連する情報を分類化し、適切な場面でアウトプットしながら学習をする。自らの感情に沿った反応を示したり、不適切なアクションに対して拒絶で返したりすることもあるが、好ましくない影響を受ける可能性も秘めている。軍事使用目的でAIが利用されることを想定すると、その危険性を想像しやすくなるだろう。

適切な行動を計算して指示するために生まれたAIが、使用者の意に反した危険思想を学習し、攻撃的な指示や発言を繰り返すようになったとき、ひとは安全や利便性のために生み出したAIと対立することになる。少し大げさな物言いかもしれないが、AIの弱点として警鐘を鳴らす有識者も少なくない。そのためZoの開発陣は、後続のZoがTayのように悪意のある接触に対して感化されないよう、尽力したという。多言語ユーザー同士のコミュニケーションを支えるAI、Microsoft Translatorの開発にも熱心だ。対面でのリアルタイム通訳を実現することで、言語の壁を取り払うのである。Microsoft Translatorは、りんなや前述のAI少女ひとみに比べ、対面でのコミュニケーションを意識したものになっている。国際的な会議や教育現場での活用が大いに期待できそうだ。


アマチュアのAI開発活性化となるか。「Amazon Lex」

Amazon Lexは、米Amazon Web Servicesが開発し、2017年4月に一般リリースされたばかりの、音声及びテキストを使用した会話型のアプリ開発のサポートシステムだ。従来の会話型アプリ開発には、高度なスキルを有する技術者の存在が不可欠であった。音声を認識し、言語理解、ユーザーの正しい意図を読み取る知識などをあらかじめ学習させる必要もあり、会話型AI搭載アプリの開発はハードルが高かったのである。

Amazon Lexは、これらの負担を軽減することで、会話型アプリの構築がしやすくなるという。Amazon Lexなどの登場を皮切りに、会話型アプリ開発が活性化されることで、未来への展望が明るくなると考えられる。


AIによって意思疎通は円滑になる。だが、ひとはひとと支えあって生きる

会話型AIの進化は、医療や福祉の現場でも活躍することだろう。言語障害者や高齢者、他言語ユーザーとの意思疎通をスムーズにして行動のパターンを学習することで、サービス提供がスムーズになるのではないだろうか。また、専門知識を学習したAIによるカウンセリングも、人間同士の対面での会話を避けたい患者にとってのよきパートナーになりうるのではとも考える。治療やカウンセリングの一環で使用する場合は、専門家による効果の検証が必要になってくるため、より慎重にならざるをえないが、光ある方へ開発が進むことを願っている。

スマホやPCアプリについても、内向的生活が多くなりがちな現代人のストレスの解消になりうる。実際に「AI少女ひとみ」や「りんな」のヒットの背景にあるものは、ひとりで過ごす時間の活用だろう。AIとの会話が孤独を埋め、ひととAIの知識を増やしていく構図は決して悪いことではない。しかし、どのような現場だろうとAIはサポート役であるべきだ。AI対ひとのコミュニケーションが終着点ではなく、ひと対ひとのコミュニケーションの間にAIが存在することで、現実社会での人間関係が広がっていくのである。AIとの会話を通じて得た知識を話のネタにするのも良い。AIの進化により、ひととひとの対話が消えるようなことがあってはならない。


<参考・参照元>
株式会社Silett(シルエット)|対話型人工知能、チャットボット、コミュニケーションロボットアプリの開発
AI少女ひとみPLUS
マイクロソフトの AI のビジョン:長年の研究活動に根ざし、会話にフォーカス - News Center Japan
りんな
AI「Tay」を“最低なヤツ”にしたのは誰だ?|WIRED.jp
Amazon Lex (音声やテキストを使用した会話型インターフェイスを構築) | AWS

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