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認知症の予防はAI・ロボットが担う 医療現場で進む最新技術の活用

認知症予防の手段として、ロボットを用いた方法が検討されている。

独立行政法人産業技術総合研究所(以下、産総研)が開発した「パロ」をはじめ、実証実験では良好な結果を得られている「ロボット・セラピー」と呼ばれる手法が、介護現場などで当たり前のように普及する、そんな未来が訪れるかもしれない。



導入が進む介護ロボット・パロ

介護の分野で活用が進むロボット。その中でも産総研が開発したパロの普及が進んでいる。

パロは、アザラシ型ロボットとして開発され、アメリカの「神経学的セラピー用医療機器」から承認を受けた初めての医療ロボットだ。
アニマル・セラピーを参考にしており、認知症や発達障害、PTSDなどの患者さんを対象に30カ国・地域以上で約5,000体が利用されている。

パロの実績は、この台数だけにとどまらない。実際、パロと触れ合うことで気分が向上して、うつや痛み、孤独感などの負の感情が改善されることが示されている。また、認知症患者の場合、徘徊や暴力を抑えるといった結果が治験から得られている。
パロの存在は、患者だけではなく、介護者の負担も大きく軽減できる。介護ロボットの存在は、薬物を使わない「非薬物療法」として、これまでにない全く新しいサービスとして世界中から注目を集めている。

パロが今後特に活躍が期待されているのは、認知症患者に対するものではないだろうか。
人口の約27%が65歳以上の超高齢化社会において、認知症を患う人の数も増えつつある。
一方で、介護職に就労する人の数は、若者の人口減少や厳しい労働環境を背景に伸び悩むことが予想される。

そうなると、認知症患者を介護する役目を担うのは家族となるが、その負担は非常に大きい。徘徊などのリスクを考えると目を離すことができない。
認知症患者の介護にかかわる問題は、一家族だけでなく、社会的課題として取り組む必要があるといえる。


実証実験でわかったパロの導入効果とは

パロのような介護ロボットが、介護の現場における介護者にかかる負担を少しでも軽減してくれるのであれば非常に大きい。
実際、パロを使った実証実験は日本の地方自治体でも行われ、良好な結果を得られているという。

例えば、富山県南砺(なんと)市では、公益財団法人テクノエイド協会から支援を受け、同市の「地域包括医療ケア」のスキームで認知症患者の在宅介護におけるパロの活用に関する実証実験を行った。
その結果、被験者11人のうち7人に問題行動改善の傾向がみられ、家族の介護負担も軽減したという。また、岡山市でもパロの実証実験を行っており、同様の結果が得られたという。

一方で、パロの活用にはまだまだ課題もある。
神奈川県では、2010年度から介護ロボットの普及を進める一環として、パロを用いた実証実験を複数の高齢者向け施設で行なっている。結果は、認知症患者の行動改善や会話の増加などの効果がみられたものの、パロを活用する介護者のスキルの違いにより、その効果に違いがみられるという。
今後はロボットセラピストの育成も介護業界で課題になるかもしれない。

また、パロの活用が期待されるのは介護分野だけではない。
災害などの被災者支援でも効果を発揮すると言われている。2011年の東日本大震災や2016年の熊本地震の際に設置された避難所でパロを活用したところ、不安やストレスを抱えていた被災者たちが笑顔になり、人と人をつなげるきっかけにもなったといわれている。
思わぬ形でパロの活用範囲は広がりつつある。


トヨタが認知症予防ロボを販売する狙いとは

ロボットを用いて人々のコミュニケーションを活発化しようという動きは民間でもある。
ソフトウェア企業の富士ソフト株式会社では、介護予防ロボット・パルロを提供している。パルロと一緒に会話をしたり、クイズやゲームを楽しんだり、簡単なダンスをすることで、高齢者が孤独を感じたり、寝たきりになるのを防ぐ効果が期待できる。

また、自動車メーカー最大手のトヨタも認知症予防の対話ロボットの提供を開始しようとしている。
トヨタのAI研究子会社・トヨタ・リサーチ・インスティチュートでは「ポコビィ」と呼ばれる認知症予防ロボットを開発しており、2020年を目途に展開することが報じられた。研究開発の知見を介護・医療の分野にも活用しようという形だ。


介護×ロボットで日本の社会問題を解決する

このように、民間企業から認知症予防という課題を解決しようという取り組みが生まれている。認知症の予防、認知症患者の介護の問題は、一家族ではとても対応し切れない。
社会としてどう向き合うか、超高齢化社会を迎える日本で問われることになるだろう。

そのためにも、パロのようなロボットの活用は今後さらに進められることが期待される。
導入費用についても、自治体などで補助制度を設けるなど、前向きな対応を考えても良いかもしれない。
また、今後の社会では、ロボット・セラピーの専門家などの育成も求められるだろう。

これまでもロボットは、人間の生活を様々な場面で助けてくれていた。近い将来、ロボットがもっと深く社会問題へと切り込んで、解決してくれる日が訪れるかもしれない。


<参考・参照元>
総合学術電子ジャーナルサイト「J-STAGE」メンタルコミットロボット「パロ」の開発と普及:認知症等の非薬物療法のイノベーション
介護予防ロボット最前線!!PALRO(パルロ) 富士ソフト
認知症の介護に役立つロボットの能力に注目! | 医療・健康Tips | 毎日新聞「医療プレミア」
トヨタが認知症予防の対話ロボ 米子会社のAI採用し20年めどに投入 | ロボット ニュース | 日刊工業新聞 電子版
クルマだけでなく、ロボットでヒトの未来を支えるトヨタ - iREX 2017 | マイナビニュース

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