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日本人がロボットやAIを自分の仕事を奪う脅威だと考えない理由とは?

2018年5月に開催されたアジア開発銀行の総会で麻生財務大臣が、日本の労働市場はロボットAIを脅威だと考えていないと発言した。
欧米先進国を中心にロボットやAIを脅威だとする見方が広がりつつあるが、日本ではロボットは人間を助ける存在となり、日本全体にとってもプラスになるという。


麻生財務大臣の発言・ロボットは脅威ではない

2018年5月、フィリピンのマニラで開催されたアジア開発銀行の年次総会で、日本の麻生太郎財務大臣が日本の労働市場はロボットやAIを脅威であるとは考えていないと発言し、話題となった。

“「西洋流の考え方では、『ロボットが私の仕事を奪う』となるでしょう。しかし、日本ではロボットは人間の仕事の負担を減らしてくる存在で、『鉄腕アトム』や『ドラえもん』のように、いつも人間を助けてくれる存在なのです」
引用元:Robots: Japan not scared of robots stealing jobs, deputy leader says

大のマンガ好きで知られる麻生財務大臣らしい発言だが、ロボットが人間の職を奪う脅威ではなく、人間を助けてくれる友達のような存在だと考える日本人は多いだろう。
この、ロボットに対する日本人の考え方がよほどユニークだったのか、アメリカのニュースメディアのCNBCは、紙面を大きく割いて詳細に報じている。


高齢化と労働力不足が固定化する日本

CNBCは一方で、日本人のロボットに対する考え方が総じてポジティブなのは、日本が抱える少子高齢化と労働力不足の問題が背後にあるとも指摘している。

日本では2017年65歳以上の高齢者が占める割合が全体の28%に達し、90歳以上の高齢者の人口が史上初めて200万人を突破した。少子高齢化に対応するため、往々にして移民受け入れの議論が行われるが、日本人は伝統的・文化的に移民を受け入れることに抵抗感がある。
移民を受け入れるのであれば、ロボットを普及させて労働力を補う方がいいと考える日本人は少なくない。

少し前に、Facebookに投稿された一枚のインフォグラフィックスを見た。西洋人が作成したと思われるそのインフォグラフィックスには、日本と欧米の少子高齢化と労働力不足に対する姿勢の違いが描かれていた。
欧米が移民を受け入れて労働力不足に対応しているのに対し、日本はロボットとAIを普及させて労働力不足に対応しているという内容である。

日本の未来を描いた部分では、高齢者がロボットスーツを着て自力で生活している姿も描かれていた。西洋の人々の間でも、日本はロボットと共に未来の危機に対応してゆくイメージが広がりつつあると思わされた。


鉄腕アトムが生んだ「ロボットは友達」の文化

ところで、日本人はなぜロボットに対してポジティブなのだろうか。
日本の「ロボットは友達である」という文化を育むきっかけになったものとして、手塚治虫が生んだ『鉄腕アトム』を挙げる人が少なくない。

今から半世紀以上昔の1952年に連載が始まった鉄腕アトムは17年の長きにわたって漫画雑誌に連載され、大人を含む多くの日本人に多大な影響を与えた。1963年には日本で初めてアニメーション化され、最高瞬間視聴率40.7%を獲得するなど、多くの日本人をテレビの前にくぎ付けにした。

交通事故で死亡した博士の息子のよみがえりとして開発された鉄腕アトムは、10万馬力の原子力エネルギーを有し、立ちはだかる数々の敵を次々に倒してゆく。
性格は明るく温厚で、あくまでも人間の良きパートナーとして行動する。鉄腕アトムの物語は、加熱した太陽の爆発を抑えるため、制御物質を搭載したロケットカプセルを抱えて太陽へ自ら突入するアトムの献身をもって終了する。

別れの言葉を残して太陽に突入するアトムの姿に、多くの少年少女が涙した。アトムの壮絶な最期に衝撃を受けた多くの子供達が、アトムを死なせないでくれとテレビ局に訴えてきたという。

人類を救うために自分を犠牲にする鉄腕アトムが、日本人のロボットに対する考え方に強烈な影響を及ぼした。
鉄腕アトムこそ、日本人のロボット観をポジティブに固定化した立役者であると言っていいだろう。


ロボットが新たな日本の文化へ

鉄腕アトム以後も、『がんばれ!! ロボコン』『ドラえもん』などの個性的なロボットキャラクターが誕生した。
いずれも基本的には人間を助けるロボットで、鉄腕アトムの伝統を継承していると言えるだろう。

ところで、筆者は2017年冬に初めてイタリアを訪れたが、ベネチア近郊の街で出会った30代の男性が、「俺は日本の鋼鉄ジーグが大好きなんだ。俺は少年時代、鋼鉄ジーグを観て育ったんだ」と、開口一番に切り出してきて面食らった。
聞いたところでは、イタリアでは公共放送で日本のアニメを古くから放送していて、中でも鋼鉄ジーグとマジンガーZが大人気なのだという。

日本固有のロボット文化は、確実に日本の新たな文化になりつつあるようだ。
東京にあるロボットレストランには連日外国人観光客が押し寄せ、ちょっとした観光スポットとなっている。また、ロボットが受付するロボットホテルも各地でオープンし、外国人観光客の人気を集めている。
鉄腕アトムから始まった日本のロボット文化は、現在も脈々と受け継がれている。そして、アニメや漫画などのコンテンツに加え、レストランやホテルなどのサービス業の領域にも波及してきている。
日本のロボット文化は今後もさらに昇華を続け、世界にプラスの影響を与え続けてゆく事は間違いないだろう。


<参考・参照元>
Robots: Japan not scared of robots stealing jobs, deputy leader says
1952年 『鉄腕アトム』連載開始

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