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なぜ、今世界中で建設3Dプリンターの普及が進んでいるのか?

世界中で建設3Dプリンターの普及が進んでいる。
これまでにアメリカ、中国、フランスなどの国で建設3Dプリンターを使った住宅やオフィスビルなどの建設が確認されている。

建設3Dプリンターの普及が進む理由は何か、その導入で得られるメリットは何か。建設3Dプリンターについて知っておきたい基本的な事をまとめた。


世界中で普及が進む建設3Dプリンター

世界中で建設3Dプリンターの普及が進んでいる。筆者が確認したところでは、これまでにアメリカ、中国、フランス、スペイン、ロシア、UAE、デンマークなどで建設3Dプリンターが導入されている。
日本でも、某大手ゼネコンが試験用建設3Dプリンターを開発したというニュースが2017年10月報道された。

中でも中国とUAEは積極的に建設3Dプリンターを導入している。中国では、民間の建設会社が平屋建てのコンクリート住宅を建設3Dプリンターで建設している。
また、世界で初めて複数階の集合住宅を3Dプリンターでの建設も行った。UAEのドバイでも、2016年に世界で初めて3Dプリンターで床面積250平方メートルのオフィスビルディングを建設、ドバイの観光名所になっている。

建設3Dプリンターは、大学や研究機関での試験レベルのフェーズから、実際に利用可能な建物を建設するフェーズへと移行し始めている。


フランスでは世界で初めて人が入居

フランスでは、世界で初めて人が3Dプリント住宅へ入居する。
フランス西部の街ナントに建設された3Dプリント住宅は、ナント大学の研究チームが開発した建設3Dプリンター「バティプリント3D」を使って建設されたもので、床面積98平方メートル、5ベッドルームの大きさだという。
予定では、選ばれた地元住民の家族が2018年6月から入居するという。地元の自治体では、今回の入居をテストケースとし、住宅供給の経済性などが検証されるという。

3Dプリント住宅の内部には各種のセンサーが設置され、温度管理などを自動的に行う。
ナント大学の研究チームは、建設3Dプリンターで住宅を建設する事で、従来の手法で建設された住宅よりもエネルギー効率を高める事ができるという。なお、着工からわずか18日で建設された3Dプリント住宅は、ポリマー素材をベースに、コンクリートを積層造形して建設された。

ナント市では、今後新たに複数の3Dプリント住宅と、床面積350平方メートルの大きさの市役所受付センターを、建設3Dプリンターで建設する予定だという。


コストと工期の削減が最大のメリット

ここに来て世界中で建設3Dプリンターが本格的に普及を始めている理由だが、建設3Dプリンターの性能が向上した事で、建設コストと工期が従来よりも大きく削減された事が挙げられるだろう。
上にUAEでオフィスビルが建設3Dプリンターで建設された事を紹介したが、建設3Dプリンターを利用する事で、従来の建設方式でかかるコストよりも50%も安く建設できたという。

また工期だが、中国の建設3Dプリンター活用のケースでも、平屋建ての3Dプリント住宅の建設に、わずか1日しかかからなかったという。
ロシアで建設された平屋建ての3Dプリント住宅も、プリントにかかった時間はたったの24時間だったという。建設の世界では人件費が全体のコストに占める割合が大きいが、建設作業員を建設現場から解放する事で建設コストは大きく下がる。
建設3Dプリンターの導入コストとオペレーションコストが、建設3Dプリンターを導入する事で削減できる人件費の額を下回る状況が生まれた事で、世界の建設現場で建設3Dプリンターを導入する機運が一気に高まったのだろう。


危険な労働環境から人間を解放へ

ところで、筆者は5年前の2013年5月、建設3Dプリンターの世界的権威である南カリフォルニア大学のベーローク・コシュネヴィス教授を訪ね、インタビューした事がある。
アディティブ・マニュファクチャリングの研究者であったコシュネヴィス教授は、デスクトップ3Dプリンターを使ってある実験をしていた時に大型の建設3Dプリンターを開発する事を思い付き、大学で実際に開発プロジェクトを立ち上げたという。

コンツアー・クラフティングと名付けられたプロジェクトはキャタピラー社などの協力を得て2008年に立ち上げられ、これまでにNASAとの共同プロジェクトなどを展開している。
インタビュー冒頭、なぜコンツアー・クラフティングのプロジェクトを立ち上げたのかという筆者の質問に、コシュネヴィス教授は次のように答えた。

「建設業とは、実は非常に危険な仕事なのです。炭鉱業や農業よりもはるかに危険な仕事なのです。例えば、アメリカでは年間に建設業に関わる1万人が作業中の事故で死亡し、40万人が怪我をしています。これは、施主にのみならず、社会全体に対するコストとして跳ね返ってきます。」

「さらに、現在の建設工法は無駄が多く、材料を無駄にし、多くの排出物を生み出します。また、工法も複雑で、管理も非常に大変です。建設コストは膨れ上がり、予算は常に超過しがちになります。これらの問題を解決するため、つまり、人間を危険な建設作業から解放し、建設コストを削減するために、我々がコンツアー・クラフティングと呼ぶコンセプトを思いついたのです。」

そうコシュネヴィス教授が語ってから5年が過ぎた今、教授が夢見ていた世界が実現しつつある。
未来を予測する最も確実な方法は、未来を作ってしまう事だと誰かが言っていたが、それはどうやら本当だったようだ。


<参考・参照元>
スペインのスタートアップ企業が3Dプリント住宅を12時間で建設 | 世界の3Dプリンターニュース「セカプリ」
カリフォルニアの非営利団体が低コスト建設3Dプリンターを開発 | 世界の3Dプリンターニュース「セカプリ」
3D-printed public housing unveiled in France | Reuters
3Dプリンターが建設業界の未来を変える!?|サスマガ

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