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AI人材の不足は世界共通の課題。企業はどのようにAI人材を確保すればよいのか

2017年はAI元年、さらに2018年はAIの民主化元年とも呼ばれ、政府や企業はAI活用に本腰を入れ始めている。
そこで大きな問題となっているのが、AI人材の不足だ。AI人材には直接開発をするエンジニア以外にも、AIの活用を実際に進めていく人材も含まれる。
AI人材不足の現状と育成の取り組みを紹介する。


AI人材の不足は59万人におよぶ

経済産業省がまとめた平成28年版情報通信白書によると、2015年の日本のIT人材不足規模は約17万人、このまま行くと2030年には約59万人になると予測されている。
特に2017年がAI元年といわれたように、これからのテクノロジーはAI抜きにしては語れない。IT人材の不足の中でももっとも大きな課題となるのが、AI人材であることは間違いないだろう。

日経TECHの行ったアンケート結果からは、IT関連サービスを手がける企業の多くが、AI人材の不足に頭を悩まされているのがわかる。
不足している人数として、NTTデータは500人、富士通が1,500人、ヤフーでは2,000人と回答している。現時点でもAI技術の発達とそれをサービスに落とし込む側で、極度なアンバランスが生じていることが良くわかる。

世界規模で見るとこの人数はさらに拡大し、各国のAI関連サービスを提供する企業が欲するAI人材の数は80万人に上るという。
AI人材の育成といっても分野は多岐にわたり、また教育には時間がかかる。今後もAI人材の需要増大が続き、慢性的人材不足の長期化は避けられそうにもない。


今後求められるAI人材の種類

実はAI人材は、技術職とそれ以外の職業の2つに分けられる。
現時点でAI人材といえば、AIそのものを開発・研究を行う技術者と、AIに関わるデータ分析を行う技術者が主となっている。

前述したヤフーが求めているのはまさに大規模データ処理や分析などを専門とする、データサイエンスの人材だ。
ビッグデータ解析に力を入れるヤフーでは、AIによるデータ分析のできるAIエンジニアの確保が急務とされる。他の企業でもそれぞれが、自社サービスで発生する分析業務をこなせるAI技術者を求めている。

しかも、現時点では自社で育成する体制が整備されていないため、実務経験者の奪い合いが激化する一方だ。
しかし、今後、あらゆる分野のサービスにAIが活用されることで、AI人材の種類の多様化が進む。AIを利用した商品・サービスの提供においては、AIに精通した各職種のプロが必要とされる。

例えば商品の効果的な販売戦略を実施するためのAIマーケッターや、販売の実務にあたるAI営業などが考えられる。
AI導入を企業に提案するAIコンサルティング、組織や企業にAIの活用方法を示すAIプランナーなども求められるだろう。

AIに対する基本知識を有し、さらに現実社会で適切な活用を行うための、各分野のAIエキスパートの育成を進める必要がある。
AIがいかに優秀であっても、自発的に動いて勝手に適所にはまってくれるわけではない。AI導入が企業や社会の課題を解決し、効率的な事業展開に貢献するためには、AI人材というヒトの手を介してそこに送られる必要がある。

創る、選ぶ、運用するという各ポジションの数だけ、AI人材の種類が生まれる。


AI人材不足の時代を商機にする

日本はAI開発や研究分野では、世界からはるかに後れをとっている。AI研究に関する論文のトップ40に、日本企業の名前はない。
しかし本当の勝負は、AIの実践的な活用の段階にある。開発・研究分野での成果が目覚ましくなくても、AIをサービスに取り入れることができ、AIの力で事業を推進する上での課題を解消できればAI活用は成功したといえる。

AI技術者の確保が難しくてもそれを理由に立ち止まっていては、未来の市場競争において勝ち目はない。企業では工夫を凝らし、AI人材の確保に注力をしている。

例えば、LIXILでは大学との連携プロジェクトを通じて、研究室にはない自社の魅力をアピールするという地道な手法により、AIの専門知識をもった学生の獲得に成功している。
同社でも最初は中途採用に力を入れようとしたが、実際には応募数が少なく、採用条件も引き上げられるばかりだった。大手有名企業に到底太刀打ちできないと見たLIXILは、学生との共同プロジェクトやインターンシップを積極的に実施。
就職後の仕事について具体的なイメージを与えることで、入社を希望する学生が増えたという。

グーグルとアマゾンが開始したAI専門家の「貸し出し」も興味深い。
顧客に対してコンサルティングサービスの一環として機械学習の専門家たちを派遣したり、AI専用ラボを貸し出しして事実上の専門知識の共有を行ったりしている。こうしたAI技術者の「外注システム」が日本国内でも開始されれば、自社の人材育成が途上にある企業でも事業に着手しやすくなる。

逆に少数のAI技術者の早期育成を強化し、他社に対して「貸し出し」をしながらITシステムを売り込むという手法も考えられる。
世界的なAI化とそれに伴う人材不足は大きな課題ではあるが、足元から検討し直すことで商機が生まれる可能性もそれだけ大きくなる。


AI人材育成に向けた取り組み

STANDARDは、AI人材の研修や採用支援に取り組むベンチャー企業だ。文系、理系、学生、社会人を問わず、同社のAI人材育成プログラムを受講している。
代表取締役の石井大智氏は現役の早稲田大学創造理工学部経営システム工学科学生であり、以前からAIについて強い興味を抱くと同時に、AI人材育成の必要性を感じたという。

人材育成の実践はネットワークを活用した研修プログラムを用いる。1日6時間のサポートがあり、100時間の受講ができる。
現在は受講終了後の検定試験や資格試験を目指し、学生・社会人合わせて30人が受講中だという。

ダイキン工業ではAI分野の技術・事業開発を実践できる人材を育成するため、社内講座「ダイキン情報技術大学」を開講している。
プロジェクト実施にあたっては大阪大学と連携し、社内から選抜された受講者に対して9カ月間の育成プログラムを行う。
注目ポイントは参加社員の多彩さだ。20代から40代、部門は情報系技術者にとどまらず、機械系、電気系、化学系、空調事業、化学事業、コーポレート部門までと、企業活動に関わるあらゆる分野の社員がAI人材となるべく日々知識習得に励んでいる。

パーソルテクノロジースタッフでは富士通総研と提携し、「AI人材育成プログラム」を実施している。
選抜されたパーソルテクノロジースタッフの技術系社員が、富士通総研内で6カ月間の研修を受ける。研修内容は座学と実践学習に分かれ、理論からデータ解析ツールを学ぶ。研修後は富士通総研のプロジェクトに配属され、実際の業務に従事しながら知識に磨きをかけていく。


<参考・参照元>
総務省|平成28年版 情報通信白書|人工知能(AI)の普及に求められる人材と必要な能力
日本のAI人材育成、そんな“制度”で大丈夫か? (1/4) - ITmedia エンタープライズ
出遅れたニッポンAI、3タイプの人材確保を急げ | 日経 xTECH(クロステック)
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