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デバイス増加による負荷拡大への切り札?エッジコンピューティング活用事例

すべてのモノがインターネットに接続されるIoT化。膨大な数のデバイスからのデータ処理による速度低下やエネルギーの過重負荷が避けられない。
解決策として注目されているのが、エッジコンピューティングだ。
ここでは、改めてエッジコンピューティングを活用するメリットとその課題を探っていく。


エッジコンピューティングが注目される背景

現代はあらゆるものがIoT化に向かいつつある時代だ。今の日本では回線に接続されているものが1つもない、という場所を探す方が難しい。
その気になればテレビはもちろん、電子レンジから冷蔵庫、照明器具、エアコン、ロボット掃除機などの家電すべてを、スマートフォンひとつで遠隔操作することも可能だ。

電子機器がまだ社会の一部のものであった時代、パソコンはスタンドアローンかせいぜい敷地内で接続されている程度でしかなかった。
要求されるタスク量に従い、処理能力は向上したが、一個一個の端末がこなす仕事には限りがある。

インターネットへの接続とクラウドの出現により、各端末のポテンシャルはさほど重視されなくなった。モバイル端末を始めとする個人利用の機器類も、次々とネット接続ができるようになり、利便性が飛躍的に向上した。

IoTでは各端末とクラウド上にあるセンターの間を、膨大な量の情報が行き来している。
モノから発信されたデータは、インターネットを通じてクラウドに集約、解析されてビッグデータとなり、各端末へと戻される。現時点でも天文学的な数値に上るデータが日々、フィードバックされているのだ。

Cisco社は、インターネットに接続されるデバイスの数は2015年の163億から2020年には263億に増加すると予測している。接続されるモノが多くなればなるほど、通信の速度は低下し、クラウドコンピューティングの処理能力も落ちる。

エッジコンピューティングはこれまでクラウドに集約されていたデータ処理を、「ネットワークの端」でそれぞれ処理することで負荷を分散するという手法だ。
デバイスのネットワーク依存が増加する一方の現状にあって、現実的な課題解決策として期待されている。


エッジコンピューティングを利用するメリット

エッジコンピューティングを利用する企業側の大きなメリットとしては、次の3つが挙げられる。

  • ・通信コストの削減
  • ・処理速度の低下回避
  • ・情報漏えい防止

エッジコンピューティングでは、各IoTデバイスからのデータが端末よりで処理される。
厳選されたデータのみの通信で済ませられるため、これまでのようにすべてのデータをクラウド側で受け取る必要がなくなる。絞り込んだ通信ができれば、その分コストが安くなる。

エッジシステムを導入した企業で、エッジ処理していないときの10分の1まで通信コストを下げられたという例も聞かれる。
また、解析処理を行うのにクラウドまで送る必要がなくなることで、応答の遅延がさけられる。これは特に、遠隔制御されるデバイスについては重要なポイントとなる。
自動運転システムや産業用ロボットなどは、わずかな処理速度の低下も許されない。エッジコンピューティングの活用により、精度の高い動作が保証される。

企業のセキュリティポリシーにより、データをクラウドに送ることが許可されない場合にも、エッジコンピューティングであれば問題はない。
情報漏えい防止の観点からも、エッジコンピューティングの活用は有効といえるだろう。


エッジコンピューティング活用事例

小売店舗での購買行動データ取得
店内カメラから来店客の動きを追跡し、購買までの過程、何も買わなかった客の分析を行う。
エッジコンピュータではカメラ映像を処理し、特定の人物にフォーカスをして追跡ができる。人物の座標データのみが記録されるため、個人特定の心配はない。作成された各カメラの座標データをクラウド上に集約し、座標データの連結を行う。

これにより、“店舗内の人物の滞留状況を表すヒートマップ” “時間帯別店舗内通路の通過人数” “店舗内の棚前通過時間の割合を表すコンバージョン“といったマーケティング分析の材料が取得できる。
性別や年齢層を自動的に推定するシステムをエッジコンピュータに搭載し、来店客の属性データをクラウドに送ることも可能だ。

クラウド直結不可能なデータの可視化
カメラや温度センサーなど、通信ネットワークに直結しづらい機器から収集した蓄積データは、エッジ端末に集積することでクラウド連携が可能となる。
有線や無線など、複数のインターフェイスに対応したエッジゲートウェイを選択すれば、これまで可視化しにくかった単独データをクラウド上で解析できるようになる。

監視カメラの画像や機械の稼働データなど、クラウドで管理できれば遠隔地からでもリアルタイムでの状況把握が可能だ。
異常の発見、品質管理、施錠管理など、さまざまな場面に、エッジコンピューティングが活用できる。

作業員の状態管理
作業現場にエッジコンピューティングを導入することで、ウェアラブルデバイスを装着したスタッフの状態管理が容易になる。
スマートウォッチに内蔵された生体センサーにより、リアルタイムで作業員の状態が把握される。

エッジコンピュータを通じ、グラフ化されたデータをクラウドに送り出す。異常の発生時に、責任者のモバイル端末にアラーム表示させる機能も搭載可能だ。
温度や湿度などの環境データと複合的に活用すれば、作業効率向上のための研究資料となるだろう。

空港内の遠隔監視
空港内に高精細カメラと通信端末を設置し、隣接するビルに置かれた映像管理ソフトウェア搭載のクラウド基盤に映像を送信している。
遠隔監視を行いながら、クラウド基盤で負荷を減らす処理を行い、仮想ネットワークで接続したデータセンターに映像を蓄積するしくみだ。2017年6月から2018年3月までは実証実験の段階だが、2020年の東京オリンピックに向けた空港警備体制の強化に大きな役割を果たしていくことになりそうだ。


エッジコンピューティングの課題と展望

多くのメリットが認められるエッジコンピューティングだが、正しい理解のもとに運用しなければその長所は活かされない。
クラウド導入が進まないうちに、エッジコンピューティングの外枠だけを取り入れようとすれば、ローカルで処理を行うというだけの前時代的なシステムになりかねないだろう。

エッジ側の処理能力が低ければ、単にデータをまとめてクラウドに送るだけのものとなってしまう。
エッジコンピューティングのもっとも大きな課題は、設備や管理コストだ。クラウドに集中している設備を、デバイスの近くに分散させようとすればそれだけ機器コストが必要となる。

通信大手のNTTドコモは2020年の新通信システム実用化の一端として、エッジコンピューティングの実装を図っているが、そこで発生するコストとビジネスの収益性の関係については慎重に検討している。
他の通信関連企業も続々とエッジコンピューティング事業に乗り出しているが、ビジネスモデルの確立にはまだしばらく時間がかかりそうだ。

クラウドが実用化されてから約10年、優れたエッジプラットフォームの提供とクラウドとの相互連携がエッジコンピューティング普及の大きなカギとなる。


<参考・参照元>
IoT時代を拓くエッジコンピューティングの研究開発
エッジコンピューティング|これからは、コレ!|ITソリューション&サービスならコベルコシステム
シスコ、「Visual Networking Index」の予測を発表
エッジコンピューティング、近くで処理する利点は3つ | 日経 xTECH(クロステック)
“エッジコンピューティング元年”に立ちはだかる壁
現実解としてのエッジコンピューティング - CNET Japan

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