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バビロン・ヘルス、AIによる診断サービスを開始 AIドクターと医師に期待するそれぞれの役割とは

イギリスの医療系スタートアップ企業のバビロン・ヘルスが複数のベンチャーキャピタルなどから6,000万ドルの資金調達に成功、関係者の話題を集めた。調達した資金は、AIによる診断サービスの開発にも投じられ、年内にもサービスを開始するとしている。バビロン・ヘルスのビジネスモデルと、今後の展開を解説する。


バビロン・ヘルスという会社

バビロン・ヘルス(Babylon Health)は医師アリ・パーサ氏が2013年に設立した、ロンドンに拠点を置くヘルステック・スタートアップ企業だ。同社は「地球上のすべての人にアクセス可能で手頃な医療サービスを提供する」ことをミッションに、モバイルベースのオンライン医療サービスを提供している。

バビロン・ヘルスのサービスの基本は医師によるコンサルティングだ。医師の診察が必要なユーザーはモバイルのアプリから予約し、診察を受ける。診察は予約から最大2時間以内に行われる。診察はモバイルの動画通話を通じて行われ、処方箋も発行される。処方箋は自宅へ配送することも可能だ(薬の料金は薬局へ支払う)。

料金は月額サブスクリプションか、コンサルティングごとに支払うかをチョイスできる。なお、コンサルティングは年中無休で、24時間いつでも好きなときに受けられる。

通常の診断に加え、アクティビティ・トラッカーを使ったモニタリングも利用可能だ。日常の摂取カロリーや脈拍数などのデータをストックし、医師がヘルスプランを作成してくれる。また、糖尿病、コレストロール、高血圧症などの検査キットの取寄せもできる。バビロン・ヘルスのサービスは、遠隔医療に求められている多くのシステムを、モバイルを使って一気に実現させたといえる。


時価総額は2億ドルと評価

そのバビロン・ヘルスだが、これまでに数回の大型の資金調達を成功させている。
最初のラウンドでは2,500万ドル(約26億2,500万円)をスウェーデンの投資ファンドから集め、最近も別のラウンドで6,000万ドル(約63億円)の資金を集めている。フィナンシャルタイムズは、バビロン・ヘルスの時価総額を2億ドル(約210億円)と見積もっており、今後のさらなる投資の可能性に言及している。

なお、バビロン・ヘルスにはGoogleが5億ドル(約525億円)で買収したAI開発スタートアップ企業のディープマインドの創業者デニス・ハサビス氏とマスタファ・スレーマン氏も出資している。バビロン・ヘルスは投資家達が関心を寄せるのみならず、シリコンバレーのハイテクスタートアップコミュニティからも高い関心を集めている。


AIによる診断サービスも開始

ところで、バビロン・ヘルスは最近、AIによる診断サービスも開始している。コンサルティングを希望するユーザーを対象にAIが音声で対話をしながら診断を下す仕組みだが、導入により人間の医師の労働コストを最大で80%削減する事が可能になるという。

「人間の医師を平凡なルーチンワークから解放する事で、AIができない仕事に集中してもらう事が可能になります。人間の医師とAIは競合するのではなく、協業するのです」と、バビロン・ヘルスの創業者パーシー氏はコメントしている。

バビロン・ヘルスのAIは、イギリスの健康保険サービス(日本の国民健康保険に相当)が設けている電話医療相談ホットラインのチャットボットにも使われている。電話をかけて来た患者に医療上のアドバイスを与えたり、診療を受ける医療施設を教えたりする仕組みだが、チャットボットが人間に代わって対応しているという。バビロン・ヘルスのAIチャットボットは、これまでに25万人以上の人にアドバイスを与えてきたそうだ。


AIによる完全診断も視野に

公式アナウンスメントにおいて同社は、「最先端の人工知能と医療技術を組み合わせることにより、世界レベルで良質な医療の提供が可能になっています。我々の研究チームは、ごく近いうちに人工知能が人間の医師よりも正確な診断を下せるようになると予想しています。人工知能は、人間の医師達をよりアクセスしやすくするためのツールなのです」とコメントしている。

バビロン・ヘルスは現在、100名以上の医師を雇用し、ユーザーのコンサルティングに当たらせているという。初期の段階の診断をAIにさせて、結果を人間の医師と共有するようになれば、人間の医師の負担は大きく軽減される。何よりも1人の医師が対応できる患者の数が今以上に増える。バビロン・ヘルスのビジネスモデルにおいては、人間の医師とAIがコラボレートすることでWin Winの関係が構築できる。

最終的には、風邪などの軽い病気の診断はAIが完全に行うようになるだろう。人間の医師は、判断を誤ると命の危険が生じるような難しい病気や怪我の対応へシフトしてゆくと考えられる。バビロン・ヘルスは、既にAIベースのトリアージのサービスも提供しているが、それの拡大発展版のようなものの利用が始まるのは間違いないだろう。

バビロン・ヘルスは、近い未来に医療の世界において実現するであろう事象を、先行して実現しているともいえる。AIと人間が協働してより良い医療を実現するという夢が、モバイルを通じて実現している。そしてこの新しい世界は、いずれは国境を超えて世界中に広がってゆくことも間違いない。


<参考・参照元>
Babylon Health raises further $60M to continue building out AI doctor app – TechCrunch
Babylon Health has raised £50 million for AI diagnosis tool
Babylon, The U.K. Digital Doctor App, Scores $25M To Develop AI-Driven Health Advice – TechCrunch

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