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人工知能(AI)がもたらす言葉のボーダーレス化の可能性とは

人工知能AI)の発展により、我々日本人を苦しめてきた言語の壁がなくなる可能性が出てきた。従来の人工知能との違いとは?また、ディープラーニングビッグデータにより飛躍的に進歩した機械翻訳がもたらす未来とは?
ここではAIの技術発展と、それに伴う翻訳技術について紹介しよう。


ディープラーニング?機械学習?今までの人工知能との違い

2016年3月、人工知能「アルファ碁(AlphaGo)」が、囲碁におけるトップ棋士のイ・セドル棋士との勝負に4勝1敗で勝利した。チェスや将棋に比べて、盤面がより広く対局のパターン数が多い囲碁においては、人工知能(AI)が人の能力を上回るまでには時間がかかると思われていたことから、アルファ碁の勝利は人工知能(AI)が格段に進歩しつつあることを世に示すこととなった。

アルファ碁は、対局を繰り返すたび囲碁のパターンを学習し、データベース化していく。さらに、そのデータから最善の手を探し出し、同時にデータベース化も続ける。対局を積み重ねることにより、パターンを覚えどんな対局にも対応できるようになるという。従来の機械学習では、人間が特徴の設計をしなければいけなかったものに対し、「ディープラーニング」では自動で特徴を取得して学習する。このディープラーニングがAIブームの火付け役となった。


ディープラーニングにより飛躍的に進歩した機械翻訳とは?

訪日外国人の急増や2020年に行われる東京オリンピックに向け、現在日本でも機械翻訳を利用した外国人向けのサービスが次々と登場している。
従来の機械翻訳はルールベースで、過去の膨大な翻訳データベースを活用し、単語の意味を元言語の語順にマッチングさせることで翻訳していた。しかし、それでは文章全体の文脈を捉えられず、不自然な翻訳となっていた。特にゼロ代名詞と言われる日本語からの翻訳は文全体の文脈を読むことが必要となる。

ところが、昨今ニューラル機械翻訳(Google Neural Machine Translation system =「GNMT」)という脳神経系をモデルにした情報処理システムが導入された。GNMTにより、文章全体をひとつの翻訳単位として捉えるようになり、より人間らしい翻訳が可能になった。

このAI技術を導入したマイクロソフトは、4月7日に新バージョンのMicrosoft Translatorに日本語を追加したことを発表。これにより、異なる言語を話す複数人の人たちとリアルタイムで意思疎通ができるようになった。Microsoft Translatorの音声翻訳では、まず音声をマイクロソフトの世界最高レベルの音声認識ニューラルネットワークシステムに送る。そこで「えーっと」などつなぎ言葉が削除され、True Textにより、完全な文章に必要な文頭や特定名詞の大文字化、句読点の追加が行なわれる。さらに、2番目のAI機能に送られ、流暢で人間らしい翻訳が行われる。最後のステップで、テキスト読み上げ機能がこのテキストを音声に変換して読み上げる。今後このシステムがマイクロソフトのほぼすべての製品に適応する。

我々ユーザーは今後、Outlookのアドインでメールを翻訳したり、自分の言語でウェブサイトを見たり、またMicrosoft Translator PowerPoint アドインで、リアルタイムでプレゼンテーションに字幕をつけたりすることもできる。さらに、Skype翻訳では、別の言語間でリアルタイム翻訳を利用した通話も可能になる。


続々登場!リアルタイム翻訳とは?

成田空港会社は2016年12月からパナソニックが開発をすすめるメガホン型翻訳機を試験配備している。その名も「メガホンヤク」。メガホンヤクに向かって話した言葉は、メガホン上部の液晶画面に文字が表示され、1〜2秒後にはサーバーを経由した音声翻訳システムが英語、中国語、韓国語に翻訳し音声が流れる。

東芝が提供するクラウドAIサービス「RECAIUS音声トランスレータ/同時通訳」は、一般的な翻訳サービスでは翻訳が難しい施設の名前やサービス名などを事前に辞書に登録しておくことで、訪日外国人のお客様をよりスムーズに案内をすることができる。同サービスは2016年1月末から3月中旬まで、博多駅構内のみどりの窓口に、タブレットを設置し、外国人観光客への案内を的確にできるか検証した。

このようにすでに現場での検証はスタートしており、近い将来いろいろな場面でサービスを見かけることができるだろう。


発展した機械翻訳により、通訳者はいらなくなる?

AIが発展することにより、将来的に消えてしまう職業についてネットなどで議論されているが、米マイクロソフトのオリヴィエ・フォンタナ氏(AIリサーチグループディレクター 機械翻訳プロダクト戦略担当)は、下記のように語る。

“「人間を置き換えるということではなくて、今まで実現できなかった、翻訳の新しいユースケースを開拓することに注目しています。例えばヨーロッパに旅行に行く際、わざわざ通訳を率いたりしますか? そんな時に、我々のリアルタイム翻訳のツールを使えば、現地の言葉を知らないと体験できなかった新しい料理を食べられたり、新しい場所に1人で行けるようになります」(オリヴィエ氏)

オリヴィエ氏によると、機械翻訳は、人の通訳の情緒豊かな表現で翻訳する能力を置き換えるものではありません。かといって、人間の通訳のアシストにも留まらないといいます。

「人間には、いろいろな表現や文脈を理解して、プロフェッショナルな言い回しで翻訳する利点が。機械にはスピード、そして複数の翻訳を同時にこなせる利点がある」”
引用元:人を超えた機械翻訳は、通訳の仕事を奪うのかーーMicrosoft翻訳のオリヴィエ氏に聞く

人と機械翻訳、それぞれ長所を活かして共存することが重要となるだろう。


言葉のボーダーレス化。AIと人によるおもてなし

リアルタイム翻訳が可能になったことで、日本語が話せない外国人も気軽に日本を訪れるようになるだろう。言葉が通じないためうまく伝えられなかった情報を、技術の進歩によってより正確に、的確に伝えられるようになる。AIの進歩で言葉によるおもてなしができる時代になったのだ。

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