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睡眠障害をわずか5分で診断 EnsoDataのAI睡眠障害診断ソフトとは?

アメリカで無呼吸症候群に苦しむ人が増えている。無呼吸症候群の診断は、これまでは患者に装着したセンサーからデータを入手し、医師が過去の症例などを参考に下してきていた。それまで数時間かかっていた診断を、AIを使ってわずか5分で行うソフトウェアをスタートアップ企業のEnsoDataが開発している。概要をお伝えする。


無呼吸症候群、アメリカでの患者数は3,000万人弱におよぶ

アメリカ睡眠医学アカデミーの調査によると、アメリカには無呼吸症候群に苦しむ人が2,940万人も存在しているという。無呼吸症候群は進行性の病気で、放っておくと重篤化し、最悪のケースでは死に至る事もあるという。

一方で、無呼吸症候群の診断は難しく、専門の医師が十分な時間をかけて患者をモニタリングし、診断する必要があるという。一般的には専門のガイドラインに沿って患者の状態を観察し、睡眠ポリグラフ検査などを行って診断を下す。非常に労働集約的で、時間を要するプロセスだ。

ウィスコンシン州マディソンに拠点を置くスタートアップ企業のEnsoDataが開発したソフトウェアEnsoSleepは、医師に代わってAIが無呼吸症候群などの睡眠障害を診断するものだ。マシンラーニングアルゴリズムを使い、迅速かつ正確に睡眠障害の診断を下す事が可能だ。


患者に取り付けたセンサーでデータを取得

EnsoSleepは患者に取り付けた各種のセンサーで脳波、脈、血液中の酸素濃度、呼吸パターンなどのデータを取得する。取得されたデータをEnsoDataがこれまでに取得した過去の患者データと比較し、睡眠障害の有無を判定する。EnsoDataは全米各地にある提携クリニックをクラウドでネットワーク化し、それぞれのクリニックから患者のデータを蓄積している。データが増えるほど診断の精度が上がってゆく仕組みだ。なお、患者からデータ取得後、診断にかかる時間はわずか5分程度だという。これまで数時間かかっていた診断時間を大幅に削減できる。

アメリカの睡眠障害専門クリニックが置かれている現状について、EnsoDataのクリス・フェルナンデスCEOは、「多くの睡眠障害専門クリニックは現在、連日行われる患者のモニタリング、専門医の不足、医療保険会社からの診療報酬額引き下げのプレッシャーに悩んでいます。EnsoSleepは睡眠障害専門クリニックのそうした問題を解決し、他の睡眠障害専門クリニックからの差別化を実現させます」とコメントしている。

なお、EnsoDataによると、EnsoSleepを導入することで、一般的な睡眠障害専門クリニックが毎月行っているデータアナリシスの時間を最大100時間程度削減できるとしている。EnsoSleepを使っているというフロリダの睡眠障害専門クリニックも、EnsoSleepを導入した事で医師の通常勤務時間の25%を削減し、日々の生産性を大きく高めたと評価している。


睡眠障害以外の疾病にも対応へ

2017年4月にアメリカ食品医薬品局からの承認を受けて以来、現在までにカリフォルニア州、テキサス州、ニューヨーク州、フロリダ州などの50の睡眠障害専門クリニックがEnsoSleepを使っている。EnsoDataではEnsoSleepのユーザーをさらに増やし、取得するデータ量を拡大してEnsoSleepを進化させたいとしている。

また、EnsoDataでは睡眠障害で培った患者モニタリングの仕組みを、睡眠障害以外の疾病にも利用することも検討している。具体的には、ERなどの救急医療や、手術後の患者モニタリングの現場などだ。いずれも長時間に渡って患者を観察する必要がある点で共通している。

フェルナンデスCEOは次のように語る。

「我々のコアテクノロジーは医療のさまざまな現場で応用可能です。特に患者を長時間モニタリングする必要がある現場や、膨大なデータの分析が必要な現場です。多くの医療現場では、各種の作業はいまだに人間の手で行われています。テクノロジーを使って人間をそのような医療現場から解放する事で、医療従事者が患者さんと接する時間を増やし、さらには医療全体のコストを下げる事も可能になります。また、なによりもより多くの人へ医療へのアクセスを提供する事が可能になります」


200万ドルのシードファイナンスも

EnsoDataはこれまでに複数のベンチャーキャピタルから総額で200万ドル約2億1千万円)の資金をシードファイナンスで集めている。アクセラレーターのYコンビネーターの卒業生でもあるEnsoDataのビジネスは、シードのフェイズから評価されていることは間違いない。

EnsoDataに投資したベンチャーキャピタルの担当者も、EnsoDataのビジネスについて「多くの医師達が医療におけるAIブームを目撃してきましたが、EnsoDataは医療におけるAI活用の明確で現実的な実例です。EnsoDataのテクノロジーが他の医療分野でも活用され、医師達を労働集約な現場から解放することを期待しています」とコメントし、同社のビジネスモデルを高く評価している。

EnsoDataのビジネスモデルはAI、ウェアラブルデバイス、IoTクラウドコンピューティングなどの新技術をフル活用して実現したもので、まるで時代の申し子のようなヘルスケアテックだ。同社のビジネスは今後、アメリカのみならず日本を含む海外にも広がること。

実際のところ、フェルナンデスCEOは、EnsoDataは現在、アメリカと同等の医療基準を持つ他国への進出を検討していると明言している。筆者が想像するにカナダだと思われるが、医療機器承認が取れた段階でサービスを開始するものと思われる。の今後に、大いに注目したい。

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