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プログラミング中にAIがバグを発見? ユービーアイソフトのユニークな取り組み

ゲームソフトメーカーのユービーアイソフトが、AIを使ってゲームプログラミングをする際のバグを発見するという面白い取り組みを始めている。過去10年間に蓄積したコードのライブラリをAIにマシンラーニングさせ、バグ発生のパターンを事前に検知するというものだ。AIはゲーム制作の現場をどう変えるのか、検証する。


開発者向けカンファレンスで紹介されたAI

フランスの大手ゲームメーカーのユービーアイソフトが、先日カナダのモントリオールで開催された開発者向けカンファレンスで、あるユニークなシステムを発表した。同社はコミット・アシスタントと名付けられたAIを使い、開発者がコーディングを行う際にバグを発見する仕組みを開発したという。それにより、開発にかかる時間を大幅に削減し、実際のバグの数も削減することが可能になったという。

ユービーアイソフトの研究チームがモントリオールのマギル大学およびコンコーディア大学と共同で開発したというコミット・アシスタントは、ユービーアイソフトが過去10年間で蓄積したゲームプログラムのライブラリを対象にマシンラーニングを行い、バグ発生のパターンとバグフィックスの履歴を参照し、プログラマーが似たようなパターンのミスを犯すのを未然に探知するという。

ユービーアイソフトによると、バグ10個のうち6個を正しく探知し、フォールス・アラーム・レートはわずか30%だったという。全体的には、プログラマーの負担を20%削減できたという。「過去にバグを生じたすべてのコードと比較し、同様のパターンを発見します。プログラマーにとってのスーパーAIと言えるでしょう」と、ユービーアイソフトの担当者は説明する。


バグフィックスに膨大なリソースが使われる

ユービーアイソフトによると、ゲームの開発フェーズにゲーム制作費用の70%が投じられるという。とくにプログラマーの多くの時間と労力がバグフィックスに使われていて、プログラマーに大きな負担を強いているという。コミット・アシスタントが開発チームに加わり、プログラマーがバグを生みそうなコーディングをするパターンを見せたら直ちに探知してアドバイスを与える。バグ発生を本当に未然に防げれば、プログラマーの負担は大きく減り、開発コストと時間も削減する事が可能になるだろう。

AIが開発チームに加わることが、逆にプログラマーにとって負担になる可能性もあるだろうが、少なくともプログラマーが使える新たなツールのひとつにはなるはずだ。プログラミングをするのはあくまでもプログラマーであり、AIという新しいツールを、プログラマーがいかに上手に使いこなせるかが成果を上げるポイントになる。


他の領域での応用も

ユービーアイソフトによると、コミット・アシスタントの仕組みそのものはオープンだという。コミット・アシスタントの開発プロジェクトはコンコーディア大学とマギル大学との共同研究であり、論文なども公に公開されている。よって、ユービーアイソフトのライブラリと同様のビッグデータを持つ組織であれば、コミット・アシスタントの技術を応用することは可能だ。

ゲームソフト以外にも、各種のソフトウェアの開発現場などでも使われる可能性はあるだろう。


コミット・アシスタントはゲーム制作現場をどう変えるか?

ユービーアイソフトによると、コミット・アシスタントはあくまでも生まれたばかりであり、社内のプログラマーに利用を強制するものではないとしている。いずれにせよ、コミット・アシスタントを導入することでプログラマーの生産性が上がり、ゲームの制作コストが下がるのであれば、いずれは導入されるはずそうなった場合、コミット・アシスタントはゲームの制作現場をどう変えるであろうか?

まず考えられるのは、コミット・アシスタントの導入によりプログラマーの負担が減ることで、プログラマーが他の仕事にシフトする事が可能になる。金融の世界でも現在AIの導入が進み、アセット・マネジャーのルーチンワークをリプレースし始めている。ルーチンワークから解放されたアセット・マネジャーがよりクリエイティブなポートフォリオの設計や、重要な顧客とのミーティングなどに時間を使うようになっているという。

ゲーム制作の現場でも、ルーチンワークから解放されたプログラマーが、新しいゲームのアイデアを考えたり、実際のユーザーとのミーティングに時間を費やしたりと、よりクリエイティブな仕事に時間を費やすことが可能になるだろう。


コミット・アシスタントの存在がユービーアイソフトの差別化につながる?

コミット・アシスタントが制作現場に普及してゲームの制作サイクルの縮小や制作コストの低下が実現すれば、他社と大きく差別化できる。コストを浮かし、他の積極的な分野へ投資することで、差別化がさらに進む善循環が発生する可能性すらある。
当然ながら、そのような状態が実現するには一定の時間はかかるだろう。しかし、その可能性は十分ありそうだということを、強く感じたのもまた事実である。


<参考・参照元>
Ubisoft is using AI to catch bugs in games before devs make them 
How Ubisoft Uses AI & Machine Learning to Build Games

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